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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
『秩序の獣は月見て吠える』

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アルバイトはじめました⭐︎(始動編)


「いらっしゃいませ! リリィのコテージ・フルールへようこそ〜!」

「いらっしゃいませ、僕らのお客様。コテージ・フルールでどうぞゆっくりしていってください」


 カランカランと店の扉が開く。


 私は明るく全力でかわいこぶりっこをしながら手を広げ、ユウマは胸に手を当ててまるで執事みたいに挨拶をすれば、店に入ってきたお客さんは目を丸くして、それからキラキラと目を輝かせた。


 全力でファンサをする。それが、二人で相談をして決めた挨拶のスタンスだ。


 私はキラキラふわふわ路線で、ユウマはクールビューティ路線。女装で可愛らしい格好をしている彼が「僕らのお客様」って甘い声で言うのはギャップで良いのでは!? と私が萌えのために暴走して押し切った挨拶文句でもある。

 やれやれムーブをしながら、なんだかんだ応えてくれるユウマにすっごく適当に「最高〜愛してる〜」って棒読みで言ったら「はいはい」ってこっちも適当に返される。そういう感じの私たちである。リリィに付き合ってるんですか? とかすごく不名誉な勘違いをされそうになったけど、そこは二人で全力否定しておいた。さすがにそれはない! 私達の組み合わせが好きな人もたまにファンでいるから……ファンサの一環みたいなものだ。


「アカツキ〜、注文票よろしくお願いします!」

「カァ!」

「シズクはミネラルウォーターのご注文ですよ〜」

「シャア!」


 取った注文票をアカツキに渡してバックヤードまで飛行してもらい、シズクには別料金を払うことで実演でミネラルウォーターをスキルで生成するサービスを行ってもらっている。


 目の前でシズクが水の球をスキルで生み出して、水瓶のような形にしたその水の塊からコップに必要なだけ注ぐという演出のサービスだ。元手ゼロの水を注ぐだけなのにこれがまたNPCにも人気で飛ぶように売れていくので私は笑いが止まらない。


 シズクちゃんったら、自分ができることがなにかないかを悩んでたからね。こうしてスキルを有効活用することで自分が稼いでると実感しているのか、すごく気合が入っている。なんなら、注ぐときの水の形をリクエストに応えていろんな形に操作してあげていたりもする。はしゃいでるのが分かってすごく微笑ましいね。


「えっと、ありがとう! 撫でさせてもらってもいい?」

「ぴゅるるるぅ〜」

「きゅーあ!」


 そして、あっちでは商品を運ぶ店員さんをやっているザクロとプラちゃんが、お客さんに撫でられて喜んでいる。許可を取ろうとしてくれる人にはサービスしていいよって言ってあるので、あの二匹も快く撫でさせてあげている。


 なお、私のパートナー達も全員お揃いのピンクと白のふわふわリボンを体のどこかに身につけている。スタッフ腕章代わりのようなもので、お客さんの連れた聖獣達ともちゃんと見分けがつくようになっている。


「あうん、許可のないお触りは禁止だからおしおきしてきて」

「こーん!」


 ユウマの指示があって、リリィの手を勝手に握ろうとしたNPCの背後にあうんちゃんが影移動して全力膝かっくんをキメる。突然バランスを崩したお客さんはそのまま前屈みに倒れそうになり、床から現れた液体狼ことガルムのアビスにひと飲みされて店の外に摘み出されて行った。


 床から滲み出てきた真っ黒な液体の狼が巨大な口を開けてお客さんを丸呑みし、ニヤリと笑う姿はなかなかのホラーだ。黒い液体でできているから飲食店にはどうか? と思うだろうが、ゼリーのような、寒天のような低反発の触感で決して汚れがその場に残ったりはしないため、意外と問題ないのだ。


 それに、リリィの迷惑になるお客さんを強制退場させるのにはちょうど良い怖さだろうし。


「ありがとう、アビス」

「てぃきりりぃー」


 また、店内には彼の一番のパートナーであるパトリシアもミニチュアポニーサイズに縮小して店員をしている。背中に商品を乗せてもらって、器用にお客さんの元まで運ぶのだ。


 彼のパートナーはあと一匹、リボンをつけることを拒否したアメミットのカルマを除いてキュウキのタイガーが四匹目として参加し、虎形態で店の隅っこで眠っている。NPCの子供たちにわちゃわちゃと遊ばれて埋もれているが、どうやらお子さんが走り回ったりしないように面倒を見る役をしてくれているようだ。


 さて、そんな感じで店が回り始めて少し経った頃。

 カランカランと扉が開いて反射的に挨拶をすると、聞き覚えのある声で元気よく挨拶を返されて二度見した。


「にゃっほーい! 仕事爆速で終わらせて来たにゃ〜!」

「ルナテミスさんとはそこで偶然会ったんですよ。ケイカさん、とっても素敵でお似合いです!」


 事前に連絡していたルナテミスさんと、ストッキンさんのご到着である。まさか二人同時に来るとは思っていなかったけれど。


「いらっしゃいませ!」

「いらっしゃいー」


 相手が知り合いだからといってユウマの挨拶が適当になる。

 しかし、それにめざとく気づいたらしいルナテミスさんが目を輝かせた。


「あれ〜? ユウマ君の挨拶は『僕らのお客様』……だって噂だけど、ミー達には言ってくれないの〜?」


 キメ顔で『僕らのお客様』というセリフを声真似しながら言い放った彼女に、ユウマはものすごく苦い顔をして口をもごもごさせていた。そこそこ仲の良いゲーム内の友達にこそ、見せるのはちょっと恥ずかしいよね。分かるよ。


「……僕らのお客様、ようこそコテージ・フルールへ。ごゆっくり」

「にゃっはははは〜!! PKKで有名なユウマがこれしてるのマジで笑えるにゃん!! ねー、ねー、ユウマちゃん! ミーとお写真撮ってよ! PK鯖の掲示板に貼るから!」

「邪悪の権化かよ……」


 ルナテミスさんにユウマが遊ばれている間に、私はストッキンさんの対応だ。彼はいつも通りネズミのレッグだけ連れているらしい。アリスちゃんは多分お店の留守番だろう。


 ストッキンさんは、私を上から下までじっっっくりと見てからにへらと笑った。鳥肌立った。シンプルに怖い。


「お似合いですね……」

「そ、そうですかー? こんなに可愛らしい衣装だとちょっと私が着こなせないというかなんというか……」


 可愛い衣装はリリィだからこそ似合うのだ。そういう意味であったのだけれど、なにやらスイッチが入ってしまったらしい。ストッキンさんがくわっと目を見開いて私の肩を掴んだ。


「とんでもない!」

「ぴえっ」


 アビスはユウマとルナテミスさんのほうに対応しているため、今のストッキンさんを瞬間的に止められる人はいなかった。


「普段は紅白の衣装を着ているのですから、桃色と白の組み合わせが合わないなんてことはありません。ふわっとした印象のエプロンドレスに結い上げた長い緋色の髪が映えておりますし、縞靴下がきゅっと足を引き締めて素晴らしいシルエットに仕上げていますよ。やはりアリスモチーフのエプロンドレスというものはどんな女性も可愛らしく素敵に仕上げる魔法のドレスとなり得るのだと確信しました! それに、今回だけの衣装だなんてもったいない! 各NPCの店の制服を着て見ることのできるコスプレ専用店などもございますが、やはりNPCご本人から提供される本物の衣装ほど素晴らしいものはなく……ぶふぉぁ!?」


 肩を掴まれた私が恐怖でプルプルしていると、アカツキに掴まれて飛行してきたシズクが「私の友達になにしとんじゃコラァ!」と言いたげな様子でストッキンさんに特大の水球をぶっかけた。


「失礼、取り乱しました……」

「は、はあ……」


 物理的に頭を冷やされた彼は、どこからか取り出した布をレッグに渡されて顔を拭く。


「本当にすみません。ぜひ撮影のほうもお願いしたいのですが……ん?」


 わりと本気で怖かったのでアカツキとシズクには大助かりである。それから、さっきの今で撮影をお願いしてこようとした彼が振り向く。あとからのしのしとやってきたザクロがストッキンさんの肩をポンと叩いていたのだ。振り向いた先に睨みつけてきているザクロちゃんの顔を見てしまったストッキンさんはひゅっと息を吸って平謝りしながら撮影をなおもお願いしてこようとしていたけれど、彼の体に植物のツタがぐるぐるに巻かれて問答無用で連れて行かれる。しばらく反省しなさいという意味でか、ユウマのタイガー君のところへ連れて行かれているようだ。


「怖かったのでストッキンさんの対応はあとにまわしまーす。いいですか? 他のお客さんも許可のない過剰な接触とかはしませんように〜! でないと、撮影に応じませんからね! いいですね!」


 周囲から元気の良い返事があがった。

 さて、こうして一悶着はあったものの、無事アルバイトは始まった。NPCをかなりの数さばいていったが、そろそろわざと遅めに書いたアルバイト開始告知の時間になる。つまり、プレイヤーも参戦してくる頃合いである。


「ユウマ〜、遊んでないで仕事しますよ」

「遊んでないから!」


 ルナテミスさんにくっつかれて写真を撮られたり、エプロンドレスのポケットやらリボンの間やらにお金をねじ込まれて顔を真っ赤にしながら怒る彼に、あら〜可哀想〜と笑いつつ、プレイヤーのお客さんに備える。さっきみたいなトラブルがあったらいけないからね。みんなにもきっちり働いて監視もしていてもらわないと。


「あの〜」


 ほら、さっそく第一号さんが来た。


「いらっしゃいませ、リリィのコテージ・フルールへ!」

「い、いらっしゃいませ……僕らのお客様」


 本番はこれからである。

企画コメントの締切は本日までです!たくさんのご参加ありがとうございます!!


次回からいよいよ、応募をもらったかたがたに登場してもらうつもりです。

ところで、上限金額決めていなかった私が悪いのですが、みなさん「金銭感覚ぶっ壊れの皆様〜♡」って感じで大変おもしろかったですね。

面白いので、低めの金額を提示したかたから順に登場していただいて、ぶっ壊れ金額の皆様はケイカを困惑させて上限を決めさせる流れとしてネタを使わせてもらおうかなと思います。上限決められても投げ続けそうなかたばかりなので、ギャグ回不可避ですね。


次回!「ドキッ♡恐怖の上限なし・赤スパ祭り」


……かも?


余談ですが、本日8月24日はケイカちゃんのお誕生日となります。

ケイカちゃん誕生日おめでとう!!


Twitter改めてX?のほうで「#藤白ケイカ誕生祭2023」のタグにてお祝いのコメントをしていただけましたら、作者向けの言葉なら作者アカウントで、ケイカちゃん宛の言葉ならケイカちゃんアカウントでお返事をさせていただきます。


今後とも神獣郷をよろしくね!!


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[一言] ①女 夏イベント企画参加あり?(156) ②九尾の狐 ③黒の目隠し眼帯と黒のそれなりに大きい結晶が黒の鎖で繋がった黒の首枷と黒の手枷と黒の足枷と黒の腕枷(肘の少し上辺り)と黒の太腿枷と…
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