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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
『深淵咬魚にハッピーエンドの福音を』

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あなたのための予言者


 スーちゃんの手によって進化が選ばれ、彼女を抱きしめていたビィナの手が離れる。光に包まれたパートナーから一歩、一歩と離れて彼女は私の隣まで来て、その手をぎゅっと握った。


 同時に、ちょろちょろとポケットの中から移動したリャッキーや、サングラスをしっかりかけ直してキメ顔をするアジオ君にくすりと笑う。


 アカツキは私の肩に降りてきて特等席での進化シーン見学となったし、他のみんなも同様にビィナを囲むようにして進化の瞬間を見守っている。


 やがて、ビィナは光の中で劇的な変化を遂げる。

 身長が少し高くなり、元から長めだった毛並みが一気に伸びる。髪の毛のように伸びた毛が三つ編みになり、あまりの長さに驚く。そんな長い長い三つ編みは首元から下をすっぽりと覆うように巻き付いていき、ある種のドレスのように足元まで隠してしまう。

 そして、尻尾が三叉に分かれて、さらにそれぞれが手のように5本に分かれ、人魚の手のごとく水掻きが発生した。


 そのままぴょんと跳ねて三本の尻尾だけで体を支える姿は、まるで頭からそのまま三本の足が生えているかのような印象を与える。


 光が晴れる頃には、尻尾だけで立ったビィナがカメラに向かって手を振っていた。


 海で進化して、三本足の病気快癒の祈願にもなる存在。それは。


「えと、アマビエ……でしたっけ」

「ちがうよお姉ちゃん」

「え?」


 スーちゃんからの否定の言葉で目を丸くする。

 確か快癒祈願のために映し絵が作られる妖怪……で今のビィナと似た特徴のものがいたのでそれかと思ったのだが、どうやら違ったらしい。


「ビィナ、『アマビコ』だって」


 彼女の視線が空中を彷徨う。さっそくステータス確認をして種族名も知ったらしい。私のほうでも空中に手を彷徨わせて『アマビコ』を検索する。


 すると、アマビエと似ている妖怪であることが分かった。このアマビコも疫病の予言をして、自分の絵を用意すれば回避できるよと言ってくるタイプの存在らしい。海から現れるのは一緒だが、アマビエと決定的に違うのは猿型だと指定されているところだろうか。それを知るとなるほど、ビィナにピッタリかもしれないと感じる。


 アマビエもアマビコも疫病回避のために自分を広めろと言ってくる妖怪なわけだが、ある時代から『快癒祈願』的な意味合いで使われることが多くなったらしい。そのイメージもついているから、神獣郷でもポジティブな意味合いでの聖獣となっているのかもしれない。


 少なくとも、ここまでの符号が合致する存在はアマビコ以外に今のビィナにはないだろう。


「配信で今現在もいろんな人が見ているわけですし、『映し絵』の数も申し分ないほどあるでしょうね。なるほど、つまり」


 進化してすぐ、毛でできているとはとても思えないほど美しいケープを身につけたビィナが、そのケープの中に閉じ込めるようにしてスーちゃんを抱きしめている。


 ポンポンと背中を撫でる手つきはひどく優しい。

 つまりビィナは。


「スーちゃんのための、快癒を祈る予言者になりたかったんですね。隣に立ちながら、背中を押すために」


 一途な獣は、こくりと頷いた。

 そして、にっこりと笑ってみせた。本当のアマビコのような権能はないかもしれない。けれど、自分の友達を思って、快癒を願う心は本物なのだと胸を張るように。


 聖獣達も、神獣達も、みなゲームの中の虚像のはずであるのに、本当に心を持ったかのように振る舞う姿に嘘はない。きっと心はある。私達が信じるのであれば。


 だって、それが信仰ってものだからね。


 ないと思えばないし、あると思えばあるのだ。それでいい。


 まさに、ビィナは今このときをもってしてスーちゃんのためだけの予言者となったのだ。


というわけで、正解は「アマビコ」でした。

次回、いただいたコメントの使用+話を進めていく予定です。


お知らせ

神獣郷のコミカライズ23話前半が更新されました!

いよいよライジュウ戦でのオボロの進化シーンです。

コミックポルカの公式サイトあるいはピッコマなどでぜひご覧くださいませ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 権脳とは一体どんな脳なんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?
[一言] 後書きについての誤字報告です。  というわけで、正解は「アムビコ」でした。 とありますが、本文では「アマビコ」と表記されています。 どちらが正式な表記なのかは分かりませんが、修正よろしく…
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