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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
『深淵咬魚にハッピーエンドの福音を』

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ミッション:石像を探せ

 二日後。

 再び私はスーちゃんとともに沈黙の海城入口へと降り立っていた。


「じゃあ、スーちゃん。どの順番から行けばいいかは分かるかな?」

「えと……」


 考え込む彼女に、少し意地悪だったかなと反省しつつも静かに観察する。

 あまり早く答えを提示してしまうと、自分で考えようとしている子供の『挑戦』に水を差してしまうことになるからだ。こういうとき、問題を出された子は自分で頑張って解こうとするものだ。分からないだろうと決めつけて答えを言ってしまうと、その無意識の侮りが伝わってしまうことがある。


 案外小さな子は自分で答えを見つけられるものだ。だから、静かに観察する。もちろん、長くかかるようならヒントを出したりはするけれど……ミズチ戦を自力でどうにかできたスーちゃんならば、きっと大丈夫なはず。だって、この子ったら賢いんだもの。


 アカツキ、ジンがザクロの肩に乗る形で鈴なりとなって私達を見下ろしている。シャークくんだって床から顔を出してじっと彼女を見つめているし、スーちゃんのパートナー達もあーだこーだペンペンキキーキュキュイと話し合っている。小動物達がお話ししている姿がぐうかわ。


「はい! ととのいました!」

「おっと、その言葉はどこで覚えて……まあいいや。はい、どうぞスーちゃん!」

「おっきなウツボさんを助けるためには、まずお話を聞いてもらえる状態にしないといけませんっ!」

「うんうん」

「メーサちゃんを助けるのはそもそも最後! お話的に!」

「うんうん、メタ推理も大事だね」

「おっきなウツボさんに話を聞いてもらうには、仲良しさんに説得してもらうのが一番だから、石像になっちゃったミコさんを探すのが一番先! ……だと思うけど……ど、どうかな?」


 ここで一度黙ってスーちゃんを見つめる。

 ちょっと不安になったらしいスーちゃんが、ごくりと音を立てるように息をのみ込むような仕草をした。同じくペンギンのアジオ君やリスのリャッキー。そしてお猿のビィナが息をのむ。


 ためてためてためて……さながらクイズ番組の正解不正解を告げるとくにようにためて……。


「大 正 解 ! !」


 大きな声で言って、スーちゃんを抱きしめる。途端にザクロが私ごと全員を囲むようにぎゅむっと締め上げた。


 そう、抱きしめたじゃなくて、締め上げた。興奮のし過ぎである。力加減ができていなかったので全力でスーちゃん達を庇った私は偉いと思うの。ザクロの腕をパシパシ叩いて力を緩めてもらい、全力でザクロをハグしてあげる。君はただ抱きしめたかっただけなんだよね〜と共感を示しつつだ。

 今度は私一人だけが締め上げられた。うん、これでヨシッ! 


 HPが3ほど減ったところで離してもらい、スーちゃんに向き合う。


「そうです、まずは石像となった巫女さんを探さなければなりません。大ウツボは現在、我を忘れて暴れ回っている現状ですので……目を覚まさせてあげるという意味でも、一番仲が良かった人と会わせるのが恐らく有効でしょう」

「やった! 正解!」


 大怪我をして、体に武器が刺さったままその部分が石化してしまっている大ウツボ。そのために、大ウツボは人間を見るやいなやすぐに襲いかかってくるのだ。魔獣化もしているわけだし、大ウツボの心を癒すことのできる手段があるとすれば……それは私達ではなく、かつてのパートナーであるべきだ。私はそう思っている。もしかしたら巫女さんを復活させなくても大ウツボをスカウトすることもできるのかもしれないが……絶対確率低いじゃん? 


 そんな勝率の低そうなことはさすがにやらない。

 それに、スーちゃんは遅くまでログインをしていられないから、結果的に時短できる方法を選ぶべきだ。


「というわけで、いざ! ミッション:石像を探せです!」

「えいえいおー!」


 と、言いつつ私は適当に歩くふりをしながらもスーちゃんを先導していった。

 そう! 私がなんのために罠解除の旅に出ていたと思うのだ! それは今日このとき……スーちゃんのためである! 


 罠のない快適な道をさりげなく通り、目的の場所まで雑談をしながら進んでいく。ほぼ雑談配信と化しているが、いいんだ。罠にかかって慌てる私という撮れ高映像はすでに配信したあとだしね。


 さあ、完璧なエスコートをするのだ! それでこそ優雅な舞姫というもの……ふふ、これで皆さんはまた、私のエレガントさを再認識するっていう寸法よ。もうオモシロ舞姫だとかエレガントヤンキーだなんて言わせない! 私は面倒見のいいエレガントなお姉さんなのだか……。


「ら〝っ!?」


 あれ、今足が沈み込みませんでした??? 


「見て見ておねーちゃん! 床にコインがある〜お金だよね、これ! もらっちゃう?」


 さっとしゃがんだスーちゃんの頭上を通り過ぎ、ダメージを受ける風が私を撫でていく。さながら『潮風トラップだ! しばらく装備がベタベタになって威力が3下がるぞ!』みたいな演出が入りそうな罠だった。

 このゲームローグライクじゃないんだけどなぁ〜!! 


 まあ、スーちゃんが無事でなによりである。

 そう、犠牲になるのは私だけでいいのだ。悲しき年上の宿命である。


「ここの階段を下です。上の階などにはいませんでしたし、この下には地下牢があるらしいので、もしかしたらそちらかな……とあたりをつけていたんです」


 話の中では、巫女はメドゥーサを封印すると同時に石にされてしまったということだったけれども、まさかメドゥーサのいるラスボスの部屋にそのまま石像があるだなんてそんな難易度の高いことはないだろう。


 ゲーム的になにかあるとしたらこの地下牢だと思うが……。


「階段が……長い」


 どんどん階段を降りていき、そして辿り着いたのは。


「地下牢ってこれ……え?」


 あの映像で出てきた、メーサの研究室だった。


 そして、なぜか研究室は燃えていた。

 って、え!? 燃えてるぅ!? 


「しょ、消火! 消火ーーーー!!! シャークくん、水の球で火を全部飲み込んで!!」

「クォォォォン」


 水に囲まれ、酸素を封鎖された火が消える。

 しかし、なぜこんなことに……? 研究室に散乱していた書類は全て焼け焦げ、読めなくなっているようだ。それらの書類は全て、魔獣化したものや聖獣、神獣を利用し、操るための道具作りについてのものが大半である。


 つまり。


「さっきまでリンデさんがここにいて、研究結果を破棄していた……とかですかね?」


 不気味なまでに静かな研究室に、私達の息遣いだけがこだましていた。

 じゃあ、そのリンデさんはいったいどこに? 


 神獣郷オンラインのコミカライズ21話前半が更新されております。


 こちらのお知らせは前話のあとがきにも書いてありますが、漫画のほうの更新が小説のほうの更新よりあとだったため、追記した形になっておりました。


 あとがきが追加される前に小説を読み、あとがきを知らないかたのためにこちらを再び記載しております。ご了承くださいませ!


 いよいよ、コミカライズのほうではライジュウ戦が始まります。ジンが仲間になるエピソードであり、オボロの進化エピソードでもありますね。私自身もそれらのエピソードが読めると思うとワクワクしてしまいます。


とっても楽しみですね!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 風トラップのところでコメントが盛り上がってそうw
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