ケイカちゃんの罠解除の旅〜コメント欄を添えて〜
スーちゃんと別れた私は――。
「ああ〝あ〝ーーーーー!!!」
――汚い悲鳴をあげまくるはめになっていた!
マップのあらゆる罠に引っかかっては大量の水に押し流されてシャークくんに救出されたり。
「城の中に……ポツンとお風呂??? なんでこんなとこひぃ!?」
『笑』
『草』
『ホラー苦手だもんねぇ』
『悲鳴たすかる』
なぜかポツンと置かれたユニットバスを覗き込めば、浴槽が真っ赤で悲鳴をあげ、ついでに『ナニカ』に背中を押されたせいで真っ赤なお湯の中にドボンし、体力を半分持っていかれたり。
お風呂の中にあったスイッチを踏んで単身水の中にワープして溺れかけたり……ちゃんとシャークくんが全力で探しにきてくれたから無事だったけど。
とりあえずまあ、ありとあらゆる罠にわざとじゃないかと思われるレベルで引っかかった私は、コメントが爆笑の嵐で埋まっていくのを恨めしげな目で睨んだ。
くっそー、おもしろがりやがって!! 確かに!! 動画的においしいけども!!
さっそく切り抜き動画が作られているし、神獣郷関連のチャンネルでランキングをエグいぐらい駆け上がってるから収益的には!! すごくありがたいんだけどさ!! 複雑だよね!!
どうやら検証メンバーから外れ、休憩に入ったはずのストッキンさんが切り抜き師となって動画を投稿しているようだ。勝手には撮れないので、すでに撮られている放送から加工して放流しているようだ。一応許可は出しているので問題はない。それに、あの人なら下手な編集はしないって分かってるし。
それはそれとして!! 複雑な心境だけども!!
そんな動画からも流れ込んできているのか、同接人数がじわじわと増えていく。深夜なのに昼間の都会みたいな混雑状況である。初めの頃から随分と人も増えたし、さらに新規も入ってくるしで私のほうは金銭的な意味でもうはうはで助かるけどね! いやでも回線大丈夫かな。神獣郷関連専用の投稿サイトだし大丈夫か。神獣郷運営を信じろ!!
「なぜ私が罠はまり芸ばかり披露するはめになるのか……」
はい、それの答えは『罠を解除するスキル』も『罠を見抜くスキル』もないからですね〜、当たって砕けろ!! 戦法で罠を解除しております。
こうして私が犠牲になることによってマップに罠情報が更新されて、再びスーちゃんと一緒に最新部まで行くときに危ない目に遭わせなくて済むんですね〜。私ったらお姉ちゃんなので、こうして頑張ってしまうのだ!!
しかも、毎回設置し直される罠もあるけど、一度きりの罠もあるからね。こうして私が先に解除しておくことでスーちゃんはより安全に探索できるってわけ!
『おつー、検証班は?』
「え、なんで検証班に任せないのか……ですか? ああ、さっき来たばかりの人でしょうか。こんばんは〜、楽しんでいってくださいね! ええと、それは……」
実は、シナリオ受けている人にしか適用されない罠もあるらしいんだよね。だから、体を張って私がいろいろと試して先に罠解除をして、ついでにマップに書き込まれるようにしておこうってことになったのだ。年下がいないときじゃないと無様な姿は見せられないからね!!
視聴者の皆には見せてもいいのかって? いつものことだから慣れっこですねぇ!!!
というわけで、スーちゃん離脱後のおまけとして今は『ケイカちゃんの罠解除の旅〜コメント欄を添えて〜』って感じになっている。
なお、私を含めた相棒達も罠には散々かかったのにジンだけは一度もかかることがなかった。さすが幸運の三毛猫様ですわ……。
「っは!? 実はジンを先頭にすれば罠にかからなかったのでは???」
『天才か?』
『いや罠解除しておくんでしょ? w』
『これは天才』
『罠にかかっとかないとダメって自分で言ってたんじゃん』
『アカツキ達はジン先頭にしとくべき』
『ジンったら頼りになる〜!!』
『ケイカちゃんだけ罠にかかれば解決では?』
『そ れ だ !』
「皆さんひどいです〜!!」
だがしかし事実である!
というわけで私が先頭なのは変わらずに、アカツキ達はジンを先頭にして行くことになった。近くにいるとはいえ、ぼっち行動である。悲しい。
そうして、背景ストーリーは随分と重くてシリアスなのに、私達のせいで道中カケラもシリアスがないのがちょっと申し訳なくなるほど……道程は順調に進んだ。
「さてさて、スーちゃんがいない間にも探索の優先順位くらいは決めておかないといけませんね。皆さんにはもうお分かりかもしれませんが……」
私の歩みに迷いはない。
まあ最深部に近づくだけだからという点もあるが……マップ作りをしてくれている検証班のおかげで、なんとなく怪しい場所というものには心当たりがある。
大ウツボが城の内部に侵入できる経路があるはずだ。海のほうでは普通に狂った大ウツボという扱いのみで、イベントは特に起こらなかった。追いかけられるイベントはあったけど、魔獣を聖獣に戻すためのきっかけは外では得られない。なら、そんなイベントがあるとしたら多分城の内部だけだろう。
ま、今日のところは場所を確認するだけなんだけど……。
あとは。
「それと、検証班の方々が開かなかった扉の確認ですね」
シナリオに携わる扉は、検証班の方々には開けることができない。だけれども、そこの扉が開かないという事実は確認できるので、皆さんしっかりとマップに記してくれているわけだ。そこも私が開くかどうかをちょろっと確認して今日の枠を終えればいい。扉を5センチくらい開けて閉めればオッケーのはず。
「つまり! 部屋に入らなければイベントは起こらない!! ので!! チラ見しても問題なーいというわけですよ!! ほらほら、大ウツボが出そうなひろ〜いお部屋をチラ見しま〜!!」
普通の西洋風の扉に手をかける。
そして、開いた瞬間。
目の前を巨大な影が横切った。
部屋の中で、暗闇の中でも不自然なまでに真っ赤に光る瞳がこちらを向いている。同時に、キラリと光る鋭い歯がカチカチと音を鳴らした。
「〜〜〜す…………アノ、オジャマシマシタ。ッス」
そっ閉じした。
コメント欄には煽りコメントが溢れかえった。
お前ら私だと思って煽り散らしやがって!!
セーフ! セーフだから! まだイベント始まってないからセーフ!
『ギルティ』
『アウフ』
『有罪』
『セウト』
『有罪』
『ダメでしょ』
『許さん』
『ギルティ』
『絶許』
セーフ! セーフだって言ってるでしょーーが!!
神獣郷オンラインのコミカライズ21話前半が更新されました!
いよいよここからライジュウ戦ですね!
春千秋様の描くライジュウレースの行方を、ぜひぜひ漫画のほうを読んで楽しんでいただければと思います!
コミックポルカ様の公式サイトでなら、次の更新までの間は無料でご覧になられますので覗いてみてくださいね〜。




