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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
『深淵咬魚にハッピーエンドの福音を』

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影メドゥーサ


 動けない私の前から、スーちゃん達が飛ぶように駆け出していった。


 唯一動かすことのできる視線だけでその姿を追っていると、ふと視界に見慣れた柘榴色が映る。ザクロは背後に立ち、腕翼を横から囲い込むようにして私を守ってくれているみたいだ。


 スーちゃんを守るようにと指示をしたのに、その肝心のスーちゃんが飛び出していってしまったために私を優先することにしたのだろう。正面が開いているのは、スーちゃんの活躍を私が見たいと思っていることを分かっているからだろうか? とてもえらい。


 ザクロの顔は私のほうにおりてきており、そっと頬ずりされる。視線の高いザクロはへたしたら影メドゥーサと目が合ってしまいかねない。そのため、自主判断であちらを向かないようにしているらしい。うちの子ったら賢い!


 私の頬に触れた感触に横目でザクロを見上げる、

 長時間の探索をしたためか、砂や潮で少しザラついた鱗に、あとで磨かないと……なんて計画を立てながら私はその顔を撫でてやれないことを残念に思った。


 そして、スーちゃん達のほうへと再び意識を向けると、アジオ君が思い切りジャンプをしてチラリとこちらを見たところだった。


「シャァァ!」


 そのタイミングで、足元のシズクが大量の水を連続で砲撃する。

 アジオ君の下に着弾したアクアブラストが散り、すぐさまその前方にも大量の水が着弾する。そうしてどんどん量を増していく水に対してアジオ君がなにやらスキルを使うといっせいに凍りついた。


「ペンペンペーン!!」


 腹から氷に着地したアジオ君が、即席で作られた氷のジャンプ台に向かって滑り出し、頭上に飛び出る。そのまま、まるで空を泳ぐように翼を動かした彼はそのまま影メドゥーサに向かってダイブした。


 視界を遮るような形で氷のつぶてを放ち、そして自身の足を凍りつかせることで空中からの回転キック。


 影メドゥーサも同時に迎撃へと動いていたが、動いているのは彼らだけではない。


 石化から免れたメンバーが全員、複数現れてしまった影メドゥーサへの対応をしているため、一人の敵に対して複数人で囲んで叩くような形をとることができている。

 故に、彼らはアジオではなく自分達のほうへと気を引かせるため、火球や氷の塊などを飛ばして補助をしていたのだ。


 アジオのキックが影メドゥーサの頭に直撃し、その頭を踏み台にするようにしてひらりと逃げていく。その手腕はとても最近仲間になったばかりの聖獣には見えなかった。


 スーちゃんの走りながらの「すごーい!!」という声援に、アジオ君はクチバシを高々とあげてドヤ顔をしている。


 さて、無事逃げおおせたドヤ顔ペンギンの背後では、なにもできずにその場に留まる影メドゥーサの姿があった。


 四方八方からの攻撃によりひっきりなしにヘイトを稼がれているため、影メドゥーサは視線をあっちこっちに動かそうとしながらも混乱したようにその場から動けなくなっているのだ。


 結構怖そうな登場をしたわりに、戦闘UIはそこまで頭が良くないみたいだ。聖獣や魔獣などは専用の学習型AIを積んでいるために、わりと頭の良い挙動をするが、影メドゥーサはその限りではないらしい。魔獣ですらない、倒しても『不殺』に影響のないただの影だから……なのだろうか。


「速報ーーーー! 影メドゥーサは死亡したプレイヤーの半分のレベルです! 繰り返します! 影メドゥーサは死亡したプレイヤーの半分のレベルです! 落ち着いて対処すれば必ず勝てますので冷静に!」


 遠くから検証班の人の掴んだ情報が響いてくる。早いな、もしかしてもう一体倒したのだろうか? さすがすぎる。しかし、どうやってレベルなんて特定しているんだろう。検証班の技術は不思議だ……。


「交戦中の皆さんは!! 視線誘導や視線を塞ぐための妨害! または視線を直接封じるための試みなど! どんどん! 試してください! 鏡のようなものを使って石化の視線が反射できるかなどの検証も!! できればお願いします!!」


 ああ、確かに。それはちょっと気になるかも。

 もし鏡が効くなら、次点で分厚い氷とかでもいけないかなって試すのもありかもそれない。でも、私は今動けないんだよなあ〜! それだけちょっと悔しい。油断したのは良くなかったなあ、本当。何事も慣れた頃にやらかすって言うけれど、それをすごく実感している。反省せねば。


「そっか氷もいけるかな! ビィナ、えっと視線ゆうどうよろしく! わたしより背が高いから、ビィナは目を見ちゃダメだよ!」

「キキッ!」


 影メドゥーサは四方八方からやってくる攻撃を捌くのに夢中だ。

 その隙に影メドゥーサの近くにまで移動したスーちゃんが少し躊躇ったあとに、意を決してかスライディングでその足元まで入り込み、影メドゥーサの足元を潜りながら斬りつけていく。そのまま前転移動で抜けた彼女の背後で、影メドゥーサがよろめいた。


 すぐに体勢を立て直そうとする影メドゥーサの足元で、今度はちょろちょろと糸のようなものを持った小さな影が走り回る。スーちゃんが潜り抜けて行ったタイミングでポケットの中から出てきたのだろう、リスのリャッキーだった。


 影メドゥーサの足元をぐるぐると回って駆け出していくリャッキーにより、影メドゥーサは足を縛られて完全に倒れる。今まではなんとか捌いていたのだろう攻撃が、その隙を見逃すはずがなくすかさず四方八方から降り注ぐ。


 凍りつき、炎で炙られ、太陽の強すぎる光がレーザーとなって貫き、紫色の美しい雷が落ちる。私やスーちゃんのパートナー達以外にも、追い討ちをかけるように多種多様なスキルが嵐のように降り注いで影メドゥーサの周辺にだけ爆発が起きる。


 煙が晴れた頃には、もうそこにはなにも残っていなかった。

 さすがにみんなやりすぎでちょっと笑ってしまったが、どうやら大勝利だったみたいだ。


 スーちゃんがやる気だったため、近くにいたプレイヤーの人達も軒並み援護に回ってくれていたらしい。足を斬り払って、縛って転倒させた彼女達の連携プレイに対し、まばらな拍手が起きる。


 一番の年少で、なおかつ純粋にゲームを楽しんでいる彼女に対して皆さんすごく優しいね??? 後方保護者面してる私も納得はするけども。でもあの子の今の保護者は私なんで……絶対渡さん。


 さて、私を石化させた影メドゥーサは倒され、徐々に周囲の喧騒も落ち着いてくる。どうやら全員倒せたようだ。


 けれど、一向に私の石化は解けない。他の石化した面々もそうだ。

 スーちゃんの援護というひと仕事を終えて帰ってきたアカツキやジンが、私の頭の上と足元でそれぞれ心配するように鳴き声をあげながらうろついている。シズクもそうだ。するすると石になった私の体をのぼり、首に巻きついて頬を頭で押し上げようとしてくる。でも、石なのでびくともせずにしょんぼりしてしまっていた。


 ああ待って! 泣かないで! 泣かないで〜!! うう、私も泣きそう。いますぐ抱きしめて頑張ったねって言いたいのに!! なんで動かないかな!! 


「おねえちゃん……もどらないの……?」


 あーーー!! 子供の涙で潤む目はダメです!!! ダメです弱いんです!! 泣かないで〜!! 私は大丈夫だから!! なんで一言も喋れないの!! 安心させてあげたいのにできなくて死にそう。


 後ろからぎゅっと抱きしめながらぴすぴす言っているザクロちゃんも抱きしめてあげたい。今すごくツブヤイターにぴえんって書きたい気分。つら……。


「ケイカさん……」


 他のところの対処が終わったのか、こちらにきたストッキンさんは上から下まで私を眺めると、懐からアイテムを取り出して頷く。あ、もしかして助けてくれる感じですか!? それはありがたい! 


「呪いの対処法も清水でしたし、清水をかけてみましょうか。試してみる価値はあると思います。よろしいでしょうか?」


 なるほどね、それはありかもしれない。

 ぜひよろしくお願いします! 目線だけでジーッと見て訴えていると、ふと照れたように顔をそむけたストッキンさんが言う。


「あ、安心なさってくださいね。わたくし、石化萌えの趣味はございませんので。しっかり治しますとも!」


 余計な一言を言わないといけないノルマでもあるのかこの人は??? 


 このあと、石化を解除されてすぐに行動した私は、彼のこの一言をルナテミスさんとユウマに拡散するのだった。あの二人に散々からかわれるがいい。ツブヤイターに投稿しないだけマシでしょう。


 ちなみに、スーちゃん活躍回となった配信は、特定の人物による課金がかなりの回数行われたりなんだりしていた。お母様ェ……。


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― 新着の感想 ―
お母様ェ…
2025/04/02 22:53 kkkkkkービィ
[一言] 赤いのが飛びまくっていたら破産しそう…… 自分もそうしたい(余裕があれば) スーちゃんがやっぱり無邪気でかわいいですわ
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