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私、散財しすぎでは問題

 開き直りました。(二回目)


 はあ〜、大変に綺麗な日本家屋だね? 

 庭も大きくて池まであって、しかも池にはあの……なんて言うんだっけ。赤くて半円に持ち上がった橋。あれがついている。池にはハスの花が咲いているし、玉砂利は枯山水にはなっていないけれども、丸くてそれほど足の裏が痛くならない。痛くないわけではない。


 私も最初は予算に余裕を持ってホームを買ったわけですよ。

 でもすぐにすっからかんになった。なぜか? 


 この庭には少しだけ問題があった。

 器用値極振りしている私でも一本歯の下駄で歩き回るのはちょっと難しい……というところである。


 いつも狼の背に乗って走り回り、その一本歯の下駄で氷の上を滑りまくり、軽々と魔獣の攻撃を避けたりバク転したり、かかと落とししている奴がなにを言うのかと思うだろう。


 だって、普段戦闘しているときと、日常でまったりゆったりしているときって感覚が違うんだもの。日常で気を抜けば転んで丸い玉砂利の中にダイブしたり下駄がぶっ飛んで強制足つぼマッサージされるような環境にはいたくない。


 というわけで、庭の玉砂利を全面撤去してごく普通の地面が剥き出しの庭園に変更した。残ったお金の三分の一が消えた。


 そのうえホームには家具がなかった。和風には和風で揃えたいものである。

 残った予算のもう三分の一が飛んだ。


 トドメにこのホームの庭は、どうやら初期は『睡蓮の庭』という名前になっているらしくて、場所を決めて別の花を植えておけばゲーム内時間の約十二日。現実時間の約三日で新たな『庭』に切り替わるのだそうだ。


 たとえば『ツツジの庭』たとえば『紫陽花の庭』たとえば『薔薇の庭』と、十二日かければどんな庭にもできる。この庭の花は上手く育てれば染料として採取できて、質が良ければ装備品を加工する際に使用すると、出来上がった装備品に追加効果を加えることができるのだそうだ。体力に+10とかそんな感じで。


 有用すぎない? 


 ちなみに種とゲーム内通貨のみで買える肥料だけで最後の三分の一が消しとんだ。さようなら……また今度巡ってきてね。

 さすがにリアルマネーを課金してまで肥料を求めることはなかったので、そこだけは幸いだ。あと少しアカツキにつつかれるのが遅かったらポチッていたけれども。


「どうしてこうなるんでしょうね」

「クー」


 呆れた顔の相棒が見上げてくる。

 私はそれから目を一所懸命逸らしながら庭で駆け回るオボロを眺めた。庭を氷漬けにして彫刻を作り始めるのはおやめなさい。あ、よく見ると氷を牙で細かく削って私の写し身を作ろうとしている……? なにそれ器用すぎる。可愛いから許す。


 なお、現在『椿の庭』制作中である。冬に咲く花だし多少吹雪(ふぶ)いていても大丈夫だろう。屋敷は街の一角にあるけれど、玄関から先は異空間という名前のフィールド切り替わり現象みたいなものがあり、屋敷内のいざこざは外に一切漏れ出ていかない。


 屋敷の外まで見えるようにするなら、クリスマスシーズンに課金限定で発売予定のイルミネーションセットを買ってねとのことだった。商売が上手いことで……。


 何を隠そう、私の財布の紐は緩い。ゆるっゆるである。普段はそんなことないのだけれど、それだけこのゲームが楽しくてお布施したくなってしまうのだ。

 要するにオタク魂に火がついている。いいコンテンツにはお金を落とす。それもゴリゴリに。育成オタクである私は特に景観とか、聖獣を飾り付けるような類の装飾品には目がない。貢ぎまくるのも仕方のないことだった。


「シズク、池の中はどうですか?」

「しゅるぅ」


 気持ちよさそうだ。

 池は問題なさそう。自分の横に視線を送れば縁側でゴロゴロするジンの姿。目が合うと、パシパシと二秒ほど見つめあってから私が目を逸らす。


 動物は長く見つめ続けると『敵意がある』と判断してしまうため、敵意はありませんよと示すために目を逸らす必要があった。

 このゲームでそこまで再現されているかどうかは知らないけれど、少なくとも効果はあったようで、ジンが起き上がりトテトテと移動して私の膝の上に乗る。


 その背を撫でながら空を見上げた。すっかり夜だ。もう街中の図書館もやっていないだろう。一旦ログアウトして宿題をひとつ片付けてくる必要があるかもしれない。


 これで宿を取らなくても良くなった。

 しかし、メニューを開くたびに目に入る所持金ゼロに少しばかり落ち込む私なのであった。いい加減学習しろ、私。

お金がすっとんだことがショックすぎて微妙にテンションが怪しい主人公さん。アカツキくんは金銭管理できる人が切実に欲しくなっていると思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] ぴったり0なら逆に金銭管理できているのではなかろうか?(ダメな発想)
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