表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
『深淵咬魚にハッピーエンドの福音を』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

757/854

助けてくれるのは一度きり


 助けてくれたことに感動して色々話しているうちに、リンデさんの姿はいつのまにか消えていた。もしかしたら、神獣纏をしようとしたときにだけ発生するイベントだったのかもしれない。


 お礼も言わないうちにいなくなってしまうだなんて……いや、彼女がわざわざ私を助けにきてくれるってこと自体が、なんとなく解釈違い的な感覚が湧き上がってくるのでこれでいいのかもしれない。リンデさんが私を助けてくれたのは彼女の好意ではなく、『イベント』だから。ゲームのキャラとして、イベントは必ず行わないといけない。


 それに、さっき彼女が言っていた「自殺志願者かなにかなの?」という言葉から察するに……今私が神獣纏をしたら即死する可能性があるということだろう。恐らく、すごいダメージを受ける程度で彼女はあんなことを言わない。止めもしないだろう。それでもそう言って止めたということは、神獣纏がこのダンジョン内では初見殺しの一面があるということなんだと思う。


「……もしかして、シズクと神獣纏しようとしたから?」


 肩から私を見上げるシズクをチラッと見て、その尾を侵食している青銅を確認する。私の腕もそろそろ二の腕あたりまで金属に覆われてしまいそうだ。

 さっきのイベントで時間を取られたからか、結構呪いが進行してしまっている。


「……」

「お姉ちゃん、ダメって言われたのに!」

「大丈夫、やりませんから」


 すっとシズクとの絆卵を取り出し、水の上に掲げてみる。

 しかし、今度はリンデさんが現れることはなかった。使おうとするそぶりを見せても、彼女は現れない。けれど、私はそれを確認してすぐに卵をしまった。


「リンデさんが助けてくれるのは一度きり……ってところでしょうか」


 もし、「シズクと神獣纏をすると即死」という予測が正しかった場合、二度目も危険なことには変わりない。それでもリンデさんが現れないということは、一度だけは忠告してあげるけど、それ以降は自己責任ってことなのだろう。


 理不尽なトラップによる即死は、このゲームにはほとんどないように思う。天楽の里でのあれとかはまあ、リトライが何度もできたからセーフとして。

 だから、恐らくチュートリアル的な目的で「その行為」が危険なことだと忠告はしてくれる。ゲームとして、そうやって予告しておかないといけないのだろう。


 うん、だからリンデさんが私を助けてくれるなんていう解釈違い行為をしたのもゲーム的な都合だから仕方ないね……と自分を納得させてから、ようやく事態を飲み込んだ。


「お姉ちゃん……?」


 弱々しい声にハッとする。

 ビィナやアジオ君とぎゅっと手を繋いで不安そうにしているスーちゃんは、私を伺うように覗き込んできていた。


「もう大丈夫です。変なことはしませんから」


 彼女の前でしゃがんで、無事なほうの手でその頭をそっと撫でる。

 私の頭の上に着地してきたアカツキもその翼で安心させるよう、なにやら身振り手振りをしながら鳴き始めた。

 海外アニメのようなやたらとコミカルな動きはどこで習ったの? と言いたいくらいだが、今はその動きにスーちゃんが喜んでいるのでよしとする。


 後ろから私を抱きしめるザクロも、しゃがんだ私の膝に無理矢理飛び乗ってくるジンも、心配してくれたのだと分かって微笑む。


 けど。


「お姉ちゃん、しんじゃやだ。びょうき、こわいよ……?」


 凍りついた。


 私の金属になったほうの手をとって弱々しく握り、下手くそな笑みを浮かべているスーちゃんに。不安そうな顔を隠せもしない、いつもとはまったく違う笑顔。


 ……ああ、子供にこんな顔をさせちゃダメだ。

 年下の可愛らしい子に、こんな不安を押し隠すような顔をさせちゃダメだと、私のほうが泣きそうになった。


 今までも感じていたことだけれど、どうやら私とスーちゃんの間に、ゲームへ対する認識のギャップがあるようだ。


 スーちゃんだってこれがゲームであることなんて分かっている。自分がゲーム内で死んでも復活することも分かっている。分かっていて、普段はできない全力で運動して遊び倒すことをこの子だってしている。


 けれど、自分が遊ぶ分にはしっかりとゲームだと認識しているのに、他人が……私が危険な目に遭うことはリアルに引き摺られて考えてしまうらしい。

 そんなこと気にしなくていい。どうせ復活できるのだから……なんて言うのは、あまりにも無神経すぎる。


 このダンジョンに入ってから、スーちゃんのそういう反応が特に顕著だ。

 それは恐らく、私達がかかっているこの呪いのせい。


 この呪いが、きっと彼女にとって「怖い病気」に見えている。


 もしかしたら、「治らない病気」としても見ていて、それが辛く苦しいことだと認識しているのかもしれない。だから、余計に現実と混同しそうになっているのかも。


「もう怖いことはしませんよ。私も体を大切にします。一度、外に出ましょうか。そうしたらこの手も元に戻ります」

「……うん」


 優しく背中をトントンして、私の真似をするようにザクロも彼女を包み込んで、尻尾で優しくさすっている。


 せっかくここまで地図を埋めたところだけれど……どちらにせよ水中をどう攻略するかを考えなければならない。


 シズクとの神獣纏がNGなのは把握したが、他がどうなのかが分からないし……リンデさんが助けてくれるのは一度きり。他の子を試そうとしても忠告をしにきてくれるわけじゃないから、危険かどうかの判断がつかない。


 だからといって、片っ端から試すなんてことをしたらスーちゃんを心配させてしまう。


 うーむ、どうしよう。


 入口にワープで戻り、キャンプセットを開く。

 考えるついでに休憩だ。


 そうしたら、コメントである記述が目についた。


『会長と検証班が動いてるから、呪いと纏関係については調べてもらったら? それくらいいいでしょ』


 おお、それは頼もしい。

 でも、あの、もしかしてこの『会長』って……。


「推しのためなら検証もお任せください!」


 その声を聞いて、思わず「やっぱり」なんてため息混じりの声が出た。

更新遅くなり申し訳ありません!!

第3巻も無事に発売いたしました!!固定ツイートに表紙とかも載っているのでぜひご覧くださいませ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 変態脚フェチ紳士が久しぶりに登場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ