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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
『深淵咬魚にハッピーエンドの福音を』

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配信枠『新シナリオ来た! 後輩と一緒にリンデのところに凸します!』


 >>配信を開始


 ――――――


『新シナリオ来た! 後輩と一緒にリンデのところに凸します!』

『ケイカのブリーダーチャンネル』の配信が開始されました。


 ――――――





「ペンペン、ペペンペーーーーン!!」

「あはははは! アジオすご〜〜い!!」


 確認用に映した自分の配信画面、その背景にてものすごい勢いでフレームインし、そしてフェードアウトしていくペンギンと幼女の姿が映る。


「……こんにちはー! 本日も私、ケイカのブリーダーチャンネルへようこそいらっしゃいました〜! 久々の配信になりますが、今日は新シナリオを見つけたので、さっそくやっていこうと思いま〜す!」


 一瞬素で笑いそうになりつつ、私は配信開始時用の爽やかな笑顔で挨拶を読み上げた。吹き出さなかった私、エライ!! 


「えー、今日のメンバーは〜」


『はいおつー』

『配信おt……なにあれ???』

『後輩!! 幼女たん!! と思ったらなんかカオスで草』

『ペンギンと幼女がサーフィンしてる……え???』

『なにがどうなってこうなってるの???』

『久々の配信だーって来たらなんか草』

『なにこれ? 背後でなにが起こっても笑ってはいけない配信?』


 コロコロ雪原のキャンプ地。

 予告通りに配信が開始されてさっそくやってきた視聴者達が、次々と困惑の声を漏らしていく。その様子にも笑っちゃいそうになりつつ、メンバー紹介に移る。


 背後でなにが起こっても笑ってはいけない配信って表現は、わりと当たっている気がするなあ。配信主がそもそも笑いそうになってるし。


「もちろん、配信主の私とアカツキ、オボロ、シズク、そしてザクロちゃんです! そして今回の配信はですね、タイトルの通り後輩ちゃんも一緒にやりまーす!」


 そう言って画面中央から少しズレると、先ほどまで視聴者達が大困惑の極みみたいになっていた光景がはっきりと映し出される。


「アルターエゴくん、スーちゃんのほうの中継ワイプでどうぞ〜」


 そして、例によって雇っているアルターエゴのほうに主カメラを移す。

 私の画面のほうがワイプになり、今度は雪原の中に存在する小さな水辺にてスーちゃんと、彼女と同じくらい大きなペンギンが氷の板を使って盛大にサーフィンをしている様子が映し出された。


「ペンペンペーーーーン!!」

「あはは、はやーーい!!」


 ペンギンの顔に乗っている大きなサングラスが、日差しを受けてキラリと光っている。その肩に捕まって一緒にサーフィンをしているスーちゃんは、すごーーーーく楽しそうである。本当、この子って将来有望だよね……。


「はーい、こちらアルターエゴ1号! 本日もアルターエゴの配信カメラサービスをご利用いただきありがと〜! 今現在、共存者『スーちゃん』は仲間になった『サーフィン・ペンペン』の『アジオ』と楽しく交流を深めているところだね! とっても楽しそう!」


 ちなみにサーフィンできるほどの波はペンギンさんとシズクがスキルで操っているものである。セルフサーフィン。圧倒的陽キャオーラを放つペンギンとすぐに仲良くなって友情ゲット的な演出をかましたスーちゃんの姿は、私の中で伝説になりました。光属性同士の交流って……どうしてこんなにも眩しいんだろうね。私なんてじゅっと浄化されそう。うっまぶしっ!! 


『キャラが……キャラが濃い!』

『あれ見間違いとかじゃなくてマジでサーフィンしてるのねwww』

『うおっ、まぶしい』

『幼女!!!!』

『ちっちゃいことペンギンの組み合わせって癒されるナー(棒読み)』

『え、こわ……はや……なんであんなきゃっきゃ楽しめるんだ……おじさんにあの速さは無理だよ』

『エレヤンの配信に出演するにはキャラが濃くないといけない法則でもあんの???』

『ハッ、もしや俺らもキャラを濃くすれば配信に出演できる……?』

『←ヒールを自ら作って踏んでもらおうとするレベルの変態性を持つか、あるいはカッパになりきって沼に潜水できるか、あるいは足フェチの変態になったり、極度の厨二病になったり、猫被り(物理)になるか……』

『あっ、やっぱいいです』

『ただの陰キャにはハードルが高いんよ』

『極度の陰キャになればワンチャン』

『ごめんね^^ 僕ちゃんと友達はいるんで^^』

『極度の陰キャ=友達いないみたいに言うのヤメロォ!!』

『なんだこのペンギン(困惑)』


 ……うん、まあそういう反応になるよね!! 分かるよ!! 


 私もあのペンギン……ニックネーム『アジオ』君が加入したときちょっと思ったからね。顔の大きさに合わないほど大きなサングラスに、なんかやたらとキザっぽい態度。明らかなウェーイ系臭漂う仕草や口数の多さ……スーちゃんの姉として(姉ではない)、友達になる相手にそれはどうなの? ってちょっと母親みたいなこと思っちゃったりして心配したんだけど、蓋を開けてみれば普通にいいペンギンだった。


 チャラいところはあるけれど、ほとんど外で遊んだことがないだろうスーちゃんのことをすぐに理解し、ああして彼女が楽しめることを探って遊んであげているのである。チャラ男と世間知らずな幼女のピュアッピュアな友情……ええやん!! やってることは普通に親戚のお兄さんだし!! 


 保護者ビィナと、サーフィンの酔いで早々にリタイアして避難してきたリャッキーの許可も出ているので、あの二人のことは安心して見ていられるのだ。


 初見は大困惑するけどね!! 

 今日も私の周囲は平和です。


「あの、サーフィンをしている女の子が後輩の『スーちゃん』です。スリャーシャちゃんっぽくしたアバターがすっごく可愛いですよね! とってもいい子なんですよ〜! ……あ、親御さんからの許可もいただいていますよ? まだ初心者なのにもう『コロコロ雪原(ここ)』に来ていても問題ないほど育っていて、立ち回りも上手な子です。それからパートナーの……」


 順番にスーちゃん、パートナーのビィナとリャッキー、それから皆を混乱に陥れたペンギンのアジオを紹介して、配信冒頭の説明を終了する。


 それから今度は今回の目的についてを話すわけだが……それは歩きながらでいいだろう。


「スーちゃーん! アジオくーん! 出発しますよ〜!」

「はーい、ケイカお姉ちゃん! 今行くね!!」

「ペ〜〜〜ン!」


『お姉ちゃん呼びされて明らかに口元が緩むエレヤン可愛い』

『わりと子供好きよねケイカちゃん』

『というより、年下好き? 年下にも好かれるよね?』

『ペンギンの聞き分けがいい……』

『水辺から氷のサーフボードごとバシャって出てきて、スーちゃん抱えてサーフボードキャッチしながらくるくるって着地するの、やってるのがペンギンだけどあまりにもイケメンなんよ』

『アジオお兄ちゃんじゃん』

『ファンになりました課金先はどこですか??? ここにスパチャしてもケイカちゃんの収入になるよね???』

『早い早い早いwww』

『とか言いながら課金する視聴者』


「ありがとうございま〜す」


 指先で丸を作ってゴールドのサインをしながら、ニコニコ笑顔でスーちゃん達と合流する。

 正直、視聴者さん達も私のこと散財癖がどうとか言えない立場だと思うんだよね。神獣郷のようなVRMMOやソシャゲも含めて月何万使ってるんだろう。怖いから絶対聞けないけど。


 もし聞いたら「〜で怖くて泣いちゃった」構文を使うハメになりそう。


「というわけで、今回はこのメンバーで『沈黙の海城』へ向かいまーす。経緯としてはですね……現在地のコロコロ雪原にて、豪華客船で支配人をしていたヴィランのリンデルシア、カッコ限定イベ衣装SSRカッコ閉じと遭遇しまして……ちょっと会話したところ、初めて見るシナリオが発生したというわけです。これはやらないなんて選択肢はないでしょう!」


 スーちゃんとおててを繋いでルンルン歩きながら雪を踏み締めて歩いていく。

 さて……状況説明も簡単に済んだことだし、いよいよ海に出て海城へゴー! である。


 スーちゃんのほうはさっきみたいにサーフィンで行くと言っていたけれど、本当に大丈夫だろうか……今に出ると確定で巨大ウツボが襲ってくるので心配しかないのだが、当の幼女が「絶対やる!」って言っちゃってるからなあ。


 こういうとき、ちっちゃい子は反対しても頑なになるだけなんだよね。だから、しっかりザクロちゃんの飛行している後についてくるように言い聞かせてあるんだけど……不安だ。


 まあ、いざとなったらザクロをギリギリまで低空飛行させて、二人とも捕まえて上空にあがっちゃえばいいか。脳内シミュレーションだけしておこう。


 コメント欄にて、さっそく掲示板やまとめあたりにシナリオ概要の掲載許可を求める書き込みがあったので、シナリオ名だけ先に公開することを許可しておく。まだ、帝国の黒歴史が云々ってことくらいしか詳細は分かっていないからね。もう少し情報が集まってから、できればちゃんとした記事を書いてもらいたいところだ。


「あ、これはただの憶測なんですが、このシナリオは一回リンデさんと関わったことのある共存者にしか出てこないものだと思います。その辺も要検証ですね〜」


 ……と、検証班への課題も投げておきつつ、雪原の出口となっている水辺に着いた。


 さっそく水の中に入ったアジオくんが、お尻をぷるぷる震わせながら漂ってクチバシで羽繕いなんかを始めている。サングラスをかけているペンギンだから若干シュールだが、その羽繕いの様子はペンギンもちゃんと鳥類なんだなあ……って分かる仕草になっていて妙に感心してしまう。


 だってアカツキが水浴びしてるときとそっくりなんだもの。丸くなって水の上に漂いつつ、クチバシで羽根の間をカシカシしてぷるぷる震える鳥の仕草って、なんであんなにも可愛いんだろうね……多分一生見ていられる。


「……そういえば、この場所から外に出るとなると潜水が必須なんでしたっけ。スーちゃん、下に降りるまではザクロで行きません? 水中行動系のスキルは持ってませんよね?」

「……っは! そっか!」


 そこはちゃんと聞き分けのいい子って反応してくれるのね。よかったよかった。これでザクロに乗せてそのまま飛行して行ければいいんだけど……絶対下に着いたら降ろしてくれって言ってくるんだろうなぁ。


「じゃ、皆でザクロちゃんに背中を貸してもらいましょう。ザクロちゃん、スタンバイよろしくお願いします」

「ぴゅるるぅ〜」


 上機嫌に鼻歌を歌って身を屈め、翼を地面につけるザクロちゃん。

 その翼の腕を踏み台にさせてもらって全員を背中に乗り込ませ、しっかりと彼女の背中を掴む。


「よーーし、よく捕まっててくださいね。出発進行!」

「しゅっぱつ、しんこー!」


『幼女が二人いるように見える……』

『しっ! 聞こえちゃうよ』


 見えてるんだよなあ……。


「突撃! リンデさんのお仕事事情! の始まりです!!」


『えっ、それがシナリオ名?』


 違います。

 いそいそと配信画面内に本来のシナリオ名の『悪役ヴィランとの奇妙な共闘』を記載しつつ、私達はその場から飛び立つのであった。


 ちなみに、案の定スーちゃんは海上でサーフィンをしたがったし、不安になりながらサーフィンを許可したら、例の波乗りペンギンさんが巨大ウツボが追いかけてくるのも余裕でぶっちぎってくれました。すごぉい。


 ……それにしても、サーフィンできゃっきゃしてるスーちゃんが画面に映り始めたあたりから大号泣の絵文字とペンライトの絵文字を連打して課金しまくってくれていた人がいたけど……あれってもしかして。


 いや、まさかね。

今回から章タイトルが変わります!

よろしくね!!


さて、ここからは余談です。


偶然ではありますが実際に水族館にいってペンギンを見てきました。めちゃくちゃ可愛かったです。お尻の尻尾をぷるっぷるしてるのが本当に可愛い。ツイートしてあるので、気になるかたは見て癒されていってね!

https://twitter.com/shigureookami/status/1567741520341770246?s=46&t=UsnOFIrXUKkg2o-Ya_r5sA


あとこちらはチンアナゴとウツボの水槽のツイートです。

ウツボが通るとひゅっと引っ込んで、いなくなった後にそろ〜っと出てくるチンアナゴが愛おしすぎる。

https://twitter.com/shigureookami/status/1567744318294863873?s=46&t=UsnOFIrXUKkg2o-Ya_r5sA


三つ目は同じくチンアナゴ。ご飯の時間だったらしく、上からいっぱい餌が落ちてきてたのですが、大体小魚達に奪われててかわいそうかわいかった……意外と砂の中に潜ってる分が長いんですね。

https://twitter.com/shigureookami/status/1567745480351948801?s=46&t=UsnOFIrXUKkg2o-Ya_r5sA


もうすぐコミカライズ18話も更新時期のはずですので、動向が気になるかたはTwitterのほうをチェックしていてくださるとすぐに確認できて便利ですよ!(宣伝)

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― 新着の感想 ―
[一言]  ペンギンの名前のせいで、ペンギンが頭の中でアジョッ○になってしまった……。
[良い点] アジオの兄貴!! 子分がいる系ペンギンだよ 群れの長をやっていても不思議じゃない [気になる点] なんか娘が元気に動いてる姿が見れる嬉しさから破産しかけるレベルで課金してる母親とかいません…
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