子供は成長が早いもの
秋学期といえば。
「研修旅行と文化祭どっちもあるのが忙しすぎる……」
秋。それは学校行事においてもいろいろと詰まった学期である。
ハロウィンを終えて11月に入り、12月には期末試験も控えているがその前に文化祭やら学校行事としての小旅行やらが存在するわけだが……一番の問題はこれだ。
「研修じゃあ、ゲームできないじゃん!!」
「そりゃあね。で、ケイカはどこ行くの?」
「うっうっ……京都ぉ……絶対厳しい……つら……」
「だろうね」
「せめて宿泊する場所にアカツキ達を連れて行くだけでも……」
「許可、出るかなあ」
「ううううう……」
ぐでっと机に腕を伸ばして伏せる。
文化祭のほうはアカツキ達も含めて参加することができるだろうが、真面目な研修旅行ではそのようなことができない。家を継がないとはいえ、お花のことができたほうがいいということでの研修だ。仕事に関しては、将来なにになるのなどは特に決めていないのでお試しということになる。
目指せプロゲーマー!!!
……みたいなのは私のプレイヤースキルだと現実的じゃないからね。いろんなゲームに手を出すわけじゃないから、プロだなんてとてもなれそうにない。
多少は配信者としてしっかり稼げるようになれたら嬉しいなあ、と思うくらいだ。
だからまあ、研修はもうちょっと楽なグループに入るとかでもいいが……お母さんがね。基礎を見直してきなさいって言うから! 言うから!!
「ロボット? あー、最近流行りのアレな……研修先で泊まるんだったらダメだけど、ホテルとかなら持ち込んでもいいんじゃない?」
「本当ですか!!」
「うん、本当。さすがにVRゲーム持ち歩くのは許可できないけど。あ、でもすごく高価なやつなんだっけ? それだとちょっと……ホテルでも厳しいかもねぇ。それでも持ち込んでなくしたら自己責任ってことになるけど?」
「ううううううう」
担任の先生は半笑いで言った。
隣で同じく質問にきたユウマが「おー、唸ってる唸ってる」となんか言ってくるが、無視だ無視!
……連れて行きたいけど、攫われちゃったら嫌だもんなあ。
二泊三日、アカツキ達のいない生活か。
……絶望的だ。
◇
「絶望的だぁーーーーーー!!」
「お、お姉ちゃんどうしたの!?」
ところ変わっていつものゲーム内。
突然叫んだ私にビクッとスーちゃんが肩を揺らし、ビィナが庇うように立った。いやなにもしないって。
ちなみに私がなぜ絶望しているかというと……なんと、スーちゃんが自力でリリィイベントをこなし、いつのまにかリリィと仲良くなっていたうえに、自力ですごくレベルを上げていたのだ。それも、昔の私よりもペースが早い。
若いって、すごいね!!
自分よりもできる子に対してこれ以上先輩ヅラするなんて私にはとてもできない……!! 恥ずかしくなってきちゃった!!
ってことである。
「ふっ、スーちゃんはもう免許皆伝です。私が教えることはもうなにもありません……今後は一人でも十分にやっていけることでしょう」
「え? やだやだ! まだお姉ちゃんと一緒にゲームする!」
「う〝っっっ」
やだ……この光属性……まぶしい!!
「ペンギンさん、一緒に探してくれないの……?」
「っ……喜んでご協力させていただきます!!」
簡単に手のひらを返した私を笑ってください。
閑話休題。
さて、彼女達のレベルは40ほどまで来ている。かなりのハイペースだが、これはむしろ都合がいいかもしれない。彼女の求めるペンギンは高レベル帯のコロコロ雪原にいるが、探しに行くのに一番のネックは彼女達自身のレベルだけだった。
飲み込みが早いからゲーム内での動きに関しては問題ないだろうし、心配なのは一撃でも攻撃を受けたらまずいって状態だけだったわけだね。この心配事がなくなったと思えばいいことだろう。つまり、もう彼女とペンギンを探しに行けるってことだから。
「スーちゃん、私リアルのほうで数日後にちょっとしばらくログインできない日があるんですよ。だから、今のうちに一緒にペンギンさんをスカウトしに行きましょうか」
「わかったー! 行く!!」
「よしよし、じゃあみんなで行きましょうね」
と、いうわけで。
研修旅行までにスーちゃんのやりたいことを全部やる作戦でいきます!!
いざ、ペンギン探しふんわりRTAはっじまっるよー!!




