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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
小さな後輩?『コスプレ幼女とエレヤンお姉ちゃん』

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紫炎の貴婦鳥、ヒクイドリ


 その場に踏み込んだ瞬間、足元から紫色の火花が散った。

 陽が差し込まないほどに頭上が樹木の葉と霧で覆われ、仄暗い森の中。


 相変わらず紫色の炎がどこからか湧き出てくるフィールドの中央に――その魔獣はいた。


 円形になるように篝火台が設置されているが、そのどれにも炎は宿っていない。紫色の炎は、火を抱くはずの台を無視してあちらこちらに宿って燃やしている。まるで、台から火が逃げ出しているかのような光景だった。


 その篝火台の中央にうずくまっているのか、ずんぐりむっくりとしたよく分からない魔獣の姿がある。あれ? 確かここのボスってヒクイドリ……つまり鳥だったはずだよね? と疑問に思いながらも、私達は戦闘フィールドに一歩ずつ近づいていく。


 接近されても微動だにしない魔獣。ミズチ出現のときよりもはるかに近づいているはずなのにだ。セーフラインがどこまでか分からず、警戒しながら恐る恐る移動してとうとう三メートルもない地点までやって来た。


「うそぉ……これどうすればいいんですかね」


 まったくの初見なので、本当になにが起こっているのかが分からない。

 うずくまっているらしい魔獣はよく見れば、美しい朱色の翼が地面にまで垂れていて足元や、俯く顔と首を完全に隠してしまっていることが分かった。まるで、ヴェールのように。


 朱色の美しい翼に燃え盛るは紫色の炎。文字通り身を焦がしているヒクイドリとやらは、死んでいるかのように動かない。


 ……いや、本当に心配になってきたな。まさかバグとかじゃないよね??? 


 ちょっと焦りつつ、でも、もしバグだったとしてもコメントを表示させるようにするわけにはいかない。そんなノリでうっかりネタバレを踏んだらたまらないし、これがバグじゃなくて仕様だった場合……私は見事にチキって視聴者様に頼ったという事実だけが残る。それはちょっと困る。視聴者ありきの配信者とはいえ、アドバイスを求めておんぶに抱っこ状態になるのはいただけない。


「アカツキ……どう思いますか」

「……カァ」


 アカツキが、進化先に選ばなかった姿。そんなヒクイドリを目の前にしてアカツキは低く、低く声をあげた。それは不満……いや、わずかな怒りを宿した鳴き声で、ヒクイドリの状態が通常ときっと違うんだろうということを察した。


 ……そういえば、プレイヤーが連れているヒクイドリは紫の炎なんて纏ってなかったよね。


 むしろ、煌々と朱色の翼に似合う鮮烈な赤のイメージが焼きついている。そりゃあ、アカツキと同じくニワトリから正統進化していった先がこの子なのだから、当たり前だろう。


 ならば。


 周囲を見渡す。

 ボスの奥。古ぼけた社のようなものがあった。そこには使われた形跡のない松明が保管されているようで、いくつか大きなものが立てかけてあった。火をつける前の松明と、火がついていない篝火台。おのずと答えは見えてくるものだ。


 恐る恐るヒクイドリの横を通り過ぎて社まで進む。

 シャークくんとシズクのコンビはきっちりと篝火台の外から遠回りするように地面を泳いで来たが、私達は完全に真横を通った。なのに、ヒクイドリは行動を起こさない。


 ……いや、本当にバグとかじゃないよね??? 信じるよ??? 私このまま手探りで進めるからね??? 


 そして、これまた紫色の炎に侵食された社の中で、小粒ながら鮮やかな『赤』の炎を宿す松明を手に取った瞬間――背後から、物音がした。


「ですよねー!!! だと思いました!!!」


 松明を取り落とさないように握りしめ、私は振り返る。

 そこには、起き上がったヒクイドリがいた。


 細長い首とクチバシ。ダチョウのようなシルエットでありながら、翼は貴婦人のふんわりとしたドレスのように足下までを覆い尽くしている。


 翼だけではなく尾も長く、地面を引きずるのではないかと思うほどだ。地面スレスレで上反りをし、優雅にくるんと巻かれたその端から紫色の炎が灯っていた。


 よく見れば翼の内側から鋭いかぎ爪が見え隠れしており、翼が後ろに流れているのではなくワイバーンのように翼腕となっていることが伺える。


 頭には鶏冠の代わりに紫色の炎がごうごうと灯っており、その瞳も、額の宝石も、暗く濁った血のような赤色だ。反転した目の中には、暗い中に鋭い赤がポツンとのっている。瞳の下に刻まれた青色の隈取りは、まるで涙を流しているかのようだった。


「これが……ヒクイドリ」


 沈んだ目には、ほとんど『意思』というものが感じられない。


 抱き込んだ松明には、走れば風で消えてしまいそうなほどの豆粒みたいな赤い炎。ヒクイドリを侵食し、身を焦がしているかのような冥界の炎。円形に設置された、火のついていない篝火台……ふむ、なるほどね。


「まったく、なにがあったらこんな風になるんでしょう」


 いや、違うか。


「なにをされたら、こんな風に……?」


 それにしても。


「バグじゃなくてよかった〜〜〜〜!!」


 切実である。


 紫炎の貴婦鳥、ヒクイドリ。

 その視線は私が独り占めだ。モテちゃう舞姫は困るわね!! 


 べべ、別に変人を見るような目で見られてないし!!! そんな目で見てくるのは視聴者だけですし!!!

ヒクイドリちゃんの見た目はダチョウの黒い翼部分がスカートみたいに真下にぐわーっとなってるのと、骨格的な意味ではモンハンのアケノシルムを想像していただけると分かりやすいと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] んー……ひょっとして、問題解決されてない状態なのか……?
[一言] バグかもと思い、キョドりまくる…かわいい 次は地獄のランかな?
感想一覧
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