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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
小さな後輩?『コスプレ幼女とエレヤンお姉ちゃん』

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ミズチ戦、リターン!!


「は〜、もう君らも怖くないですね」


 懐かしい〜とか思いながら動く樹木に清水をふりかける。

 相変わらず王蛇の水源には自走する樹木、ビックリ・トレントが生息しているようだ。目をつむっているトレントは普通の樹木とほとんど変わらないため、初見では本当に見分けがつかない。


 しかし、こうしてゲームを続けている私はすでに見分けがつくようになっている。そのため、さすがに初見の頃よりも落ち着いて対処することができた。


 眠っている……というよりは、獲物を待ち構えている状態のトレントに近づくと、ボコォッと地面から埋まっていた根っこを出して追いかけてこようとするのだが……この隙にノックアウトして清水をかけてしまえばいいのだ。


 トレントはアイテムの清水さえかけてしまえば普通の樹木となり、果物とかが収穫できるようになる。たまにジェム・ツリーに変化するやつもあったりするため、ガチャをなるだけ多く回したいときには重宝する。


 清水をかけられて「ヒョワーーーー」と、水をもらって満足そうな声をあげながら浄化されていくのがおもしろすぎる。最初悲鳴かと思ってビビったけどね。違った。喜び的な意味での昇天でした。一瞬スーちゃんの教育に悪いのでは??? とか思ったけど、私はなにを考えているんだ。そう思っちゃった私の思考が一番教育に悪い。以上証明終了。


 ……は? 

 優雅な舞姫、ソンナコト、カンガエナイ。

 解釈違いです!!! 


 ……自分に対して解釈違い起こすってなに??? 

 公式(わたし)が勝手に言ってるだけ案件か??? 


「おねーちゃん、なにひゃく……ひゃくめんそう? してるの?」

「んっんー、自分に対してキレ散らかしていただけなのでなんの問題もないです。気にしないでね」

「はーい」


 元気の良いお返事ができてよろしい。とっても良い子である。

 トレントを浄化しつつ、ときおり出てくる蛇型魔獣を不殺でリリースすることでのんびりとレベリングをしながら奥へ、奥へと向かっていく。


 こうしてみんなでゆっくり向かっていると、私がどれだけ走り回ってドタバタしていたかが分かるね。普通に歩いているだけだと案外滝壺までの距離が長い。そこそこ滝壺には遊びに来ているが、こうして初心者プレイヤーを連れていくとなるとなおさら時間もかかるし、なるほどちゃんとダンジョンっぽい雰囲気にもなってるんだなあ……と実感もする。


 いやあ、私のときは怒涛の展開でしたね。遠い目もするさ。ちゃんとチュートリアルに気づいてさえいれば、もうちょっと落ち着いていろいろできたのかもしれないのになあ。


「……ま、そうじゃなかったからこそ、シズクと出会えたのかもしれませんが」

「おねーちゃん、なんだか大きい音がするー!」

「あれはですね、いっぱいお水が落ちる音ですよ〜」

「お水? ほんとに?」

「そうです。お水はいっぱい集まると、あんなに重たい音を出すんですよ」

「へ〜。カップに入れる音とか、シャワーの音しか知らない! しんせん!」

「そっか〜」


 小さい子だし、滝なんて当然見たことはないだろう。走るのも新鮮だったようだし、やっぱり彼女は入院生活をしている子供……なんだろうか。新しい経験にキラキラおめめになっているのはとても微笑ましいが、若干闇が覗いているような気がしてしんどい。


 手を繋いで歩いているビィナが、お姉ちゃんムーブをしてスーちゃんの頭を撫でて、リスのリャッキーが頬に頭を擦り寄せる。そしてそれに、にっこり笑顔を見せるスーちゃん。


 私もオボロも「うっ、年下が尊くて眩しい」みたいな顔をしているため、先導は凛々しい兄ムーブをかますアカツキだ。シズクお姉さんはダメダメなオタクムーブまっしぐらな私達なんて気にせず、尻尾ではたいて正気に戻す役である。もしかしたら、この場の誰よりもお姉ちゃんしているかもしれない。シズクお姉様??? いや、わりといつものことか。


「スーちゃん、本当に自分一人でやるんです? 確かにそのほうがいいとは言いましたけど」

「だっておねーちゃんも一人でやったんでしょ?」

「ええ、まあ……」

「なら、一人でやる! お姉ちゃんは見守ってて!」

「分かりました」


 いつも配信を見てくれている人達がいたのなら、過保護乙とか言われそうな念の押しっぷりである。自主性をうんたら言いながら、結局手助けがいらないかどうか確認しまくるあたり本当に。


 ……というわけで、スーちゃんから一人で頑張る! との言葉があったので、私は本格的に見守るだけとなる。


 もちろん、ミズチ戦でもだ。


「スーちゃん、私は端っこのフィールドギリギリで魔獣から身を隠すためのアイテムを使って隠れます。見守ってはいますが、手は出しません。スーちゃん達がもし全滅してしまったら、私達も速やかにボス部屋を退出しますので、やられてしまったらその場で待ってください」

「うん」


 かと言って、勇姿は見守りたいので一緒にボスフィールドには入ることになった。普段はほとんど使わないが、魔獣とのエンカウントを防いだり、ターゲッティングされないためのアイテムを利用して邪魔にならないよう振る舞うつもりだ。


 ミズチは人間がその場にいるだけでターゲッティングしてくるので、このアイテムを使わないと、私がソロでやったときと近い状況にはならない。


 アイテムを使って、スーちゃんにだけミズチが目を向けるようにして、私達はその様子をハラハラしながら見るだけ。


 自分以外が、それも自分がいっさい関わらずにボス戦をやっているところを見るのは初めてなのでこちらも新鮮な気持ちである。


「鳥居だ!」

「これで簡易セーブはできますけど、ひとまずキャンプセットだけ設置しておきましょうか。セーブしておきましょう」

「はーい! 頑張る! ね、ビィナ、リャッキー!」

「キキッ!」

「きゅー!」


 ちっちゃい一人と二匹で、はじめてのボス戦に挑む前に士気を上げる姿を見て和む。


「もし、怖くなっちゃったとかあったら言ってくださいね」

「だいじょーぶだよおねーちゃん!」

「それは頼もしい! 行きましょっか」

「うん!」


 てこてこと歩くおちびーズについて鳥居をくぐる。

 すぐさまアイテムを使ってボス戦フィールドの端っこに移動して、樹木に寄りかかって観戦の体勢に入った。ミズチ戦のときにはいなかったジンが、興味津々でスーちゃん達を見守る。


 まだ子供だもんなあ、ミズチ相手に怖がらず攻撃を10分間避けるとかするだけでも大変だろう。舐めているわけではないが、心配ではある。


 そうして始まったミズチ戦。


 私は失念していた。


 彼女は今日走ることの楽しみを知り、私という回避と技の相殺特化プレイヤーからの英才教育をわずかながらでも受けたという事実を。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 隠しきれないエレヤン要素もバッチリ吸収してそうw
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