ハロウィン写真コンテストの結果発表
「さーて、お楽しみの結果発表は今日だね?」
ルンルンと鼻歌を歌いながらディスプレイを操作する。
ログイン前に公式発表の、ハロウィン写真コンテストの確認をするのは当たり前だよね!! もちろんゲーム内でもお知らせは出ているだろうけれども、ゲーム内ではメタ的な視点での公式コメントとかはつかないからなあ……って、公式からコメントがつくのは上位三名とかまでなのに気が早すぎるかな?
いやいやいや、でもお題コンのほうはいい線いってると思うんだよね。なんせレアキャラのアインさんまで出演しているわけだし。それだけでも結構評価は上がると思う。きっちりお題には沿うようにしてるし。
あ、あとは普通にハロイベのお菓子獲得数で報酬があったりなかったりもするが、そっちは……ねえ?
視線で画面をスクロールしながら、まずはハロイベのメインの順位を確認。
「うん! 下から数えたほうが早いね!! 知ってた!!」
なんせお菓子をかけた勝負をすれば絶対に負けるのだ。だから、私のお菓子所持数がデフォで配られる分より高くなることは一切ない。なくなってはデフォ分を配り直してくれるNPCのところへ行って補充をする。私にはそれしかできなかったので、最終結果のときはデフォ数よりも少ないお菓子しか所持していなかった。
「配信者でこれって逆にすごいよね……持ちネタにしよ」
自虐的な笑いが口元に浮かぶ。いやいやいや、悔しくなんてないよ。だってこの順位は、健全に他人の聖獣達にも萌えて愛でることができるってことの証明のようなものだし。悔しくなんてないよ。最下位じゃなかっただけマシでは?
むしろ配信者なのに下から数えたほうが早い順位ってところが、逆に面白くていいと思うんだよね。ネタ的に視聴者が面白く感じてくれればおっけーなのだ。
本気でやるぞ! って気合いを入れて無難な順位で終了するよりは、どうあがいても無理でした! 無駄な抵抗乙でーす! って草生やせるほうが断然いい。うん、そうだ。そうに違いない。
……だよね?
「私がトリックオアトリート勝負で、即堕ち負けする様子の切り抜き……全部をダイジェストに編集して動画投稿するか」
転んでもただでは起きない。それが私である。
ただたんに長い配信の中から場面を切り抜いて繋げて、音楽をつけて……とするだけでもそれなりの時間はかかるが、楽しいからオッケーです。
最近はメキメキと編集技術も上がってきたことだし、その辺の成長もコメントで言及してくれることが増えていて嬉しい。最初は本当に雑な切り抜きしか作ってなかったからなあ。
片手で動画の確認と切り抜きの作業をしつつ、もう片手で別のホログラムウィンドウを出し、写真コンテストの確認に移る。プレイヤー名で表からログインしといて……っと、お知らせ?
「お、お題写真のほう……二位……だと!?」
ただしくは金賞である。
運営からのお知らせもそれについてだった。報酬が届いている。
「じゃあ最優秀賞は……?」
最優秀賞の人のお題は、全ての写真が一貫していて、そして物語性が持たされていた。
一匹のドラゴンが必ず写真の中に登場し、運営が出した一見バラバラのお題にきちんと沿いながらも、写真を全て繋げてひとつの物語のような、旅するドラゴンというストーリーが想像できるような出来となっていた。旅の途中で出会った仲間や景色。そんな感じの演出がされている。確かにこれはすごいや。
この人の作品が、全て繋がっている一貫性があるとすれば、私の作品はそのような一貫性は存在しない。私が二位だったのは、そのあたりが理由だろう。
若干悔しくもないが、これは仕方ない。この人の写真は納得の一位だ。
「……って、よく見たらこの人のプロフィールに、リアル写真家って書いてあるし……私、大健闘なのでは?」
お題写真のコンテストのほうは、配信者としてのアドバンテージはとれない。普通の写真コンテストのほうはユーザー投票だから、ファンが投票を入れてくれるなどして有利にもなれるが、こちらは運営選出なのでファンがいようがいまいが関係ない。
それでも二位になれた。そんな事実が嬉しかった。
ちなみに普通の写真部門に投稿したやつも、それなりに上位に食い込んでいる。
え、こっちでも優勝は取れてないじゃんって?
これに関しては景色部門、仮装して撮るトリック部門、お菓子と一緒に撮るトリート部門。それぞれにいっぱい写真を投稿してしまったため、ファンの票数がバラけてしまったのが敗因かな……ま、楽しかったし、報酬もそれなりにいいものが手に入ったからいいんだけどね!!
……今度似たコンテストがあったら、一番これだ! って思った写真だけ部門ごとに一枚ずつ投稿するだけにしよう。あれもこれもってやりすぎた。反省。
「っし、ゲーム内でもアカツキ達とお祝いしよう! 今日も豪華にお菓子作ろ!」
くるくると椅子を回しながらそう言っていると、ベッドで充電の体勢に入ったアカツキがジトッとした目でこちらを見上げていた。オボロはおへそを天井に向けて思いっきり充電中……もとい、寝ている。
「目が覚めたら一緒に食べようね!」
「くう……」
アカツキ達にとって、こちらの世界は夢の中。
夢の中でも現実でも友達がパーティを企画しているとか、それだけ聞くとなんだかうんざりしそうだ。
いや本当にそうだな?
なんだか、いつもパーティをしているような気がする。いやいや、でもお祝いごとはちゃんとお祝いしないとだし?
「よーし、さっそくログインログイン」
そうして本日も、私はゲームの中にダイブするのであった。
昨日投稿しようと思ってたらいつのまにか寝落ちしてました。申し訳ありません。
15日に神獣郷のコミカライズ第二巻が発売開始しております!
表紙のカバーを広げると、なんと一枚絵になる仕様になっていたり……?気になる人は、ご購入していただけるか、私のTwitterの固定ツイートにその写真を載せているので、ぜひご覧くださいませ!




