竜宮城での水中遊覧(カオス味)
さて、お題の水中遊覧のほうだが……実は最初から内容は決めてあった。
たんに竜宮城周辺で泳ぐだけでもいいし、それを撮影するだけでいい。
――ただし、海底から水面に向かって真上にカメラを向ける。
私の考えた作戦はそれだけだ。
水面を下から見ると光がキラキラと反射して揺れていて、とても綺麗だろう。もちろん神獣郷でもその光景はリアリティ溢れる映像で見ることができる。それを利用し、下から水面に向かって撮影をし、水中なのに飛んでいるような写真を撮ろうと思ったのだ。
たとえば、水族館のペンギン。
通路上部がホール型の水槽にし、スイスイ泳ぐペンギンがまるで空を飛んでいるように見える展示の仕方があったりするだろう。
それと同じように、海の中を泳いでいるのに、まるで空を飛んでいるような……しかし、下から映した水面が見えるので確実に水中だと分かるような写真を撮影してみたかったのだ。
なので、どんな撮影風景になるかというと。
「全員準備はいいですか?」
「カァ!」
「わふっ!」
「しゅあ!」
「くぉーん」
「僕は撮影係だよね? おっけー」
今回の撮影の一番の主役は……シズクだ。
シズクには大きくなってもらい、巨大な龍に乗った私。そしてその周囲につくように、同じく大きくなったアカツキ、シャークくんに泳いでもらう。
そして、アインさんには竜宮城の建物を背景にして、下から私達を見上げる大きなオボロの姿を手前に配置し、撮影してもらうのだ。
撮影の際にはオボロのすぐそばに寝転んでかなり下からのアングルで撮ってもらうことになるが、アインさんは快く了承してくれている、
写真の一番手前に、地面スレスレから見上げるようなアングルで水面を見上げるオボロ。竜宮城の建物を背景にして横切るように黄金の龍であるシズクが泳いでいる姿と、その背に乗った私。その近くに、普段より大きくなったアカツキとシャークくんが、龍のおつきの従者のように並走するというものだ。
「いけます!!」
水中遊覧のお題としてはかなりいいものだろう。ガッツポーズをして、さっそく撮影を開始!
だがしかし、切り抜き動画用のサムネイル撮影をいつもしているときのように……撮影自体が一筋縄では上手くいかないのであった。
要約?
えぬじーしーんが、いっぱいでた。
◇
「わぁぁ! 前! 前! シズク! 衝突します!!」
「シャアー!?」
体を大きくしたことで、周囲にあるものからの距離感の掴みかたにちょっと苦労したり、たまに泳いでいる大きい魚にぶつかりそうになったり。
「竜宮城に来た人がまた映り込んでます……!」
竜宮城の入り口で撮影していたために、上から竜宮城にやって来る人が映り込んじゃって写真がボツになったり。
「り、リヴァイアサン……!?」
「遊ぶのならワレも混ぜろ〜!」
予定していなかったメンバーが突然撮影に紛れ込み始めたり。
「どうじゃ! ワレは雄大で格好いいだろう! もっと大きく映せ!」
「リヴァイアサンのあなたが手前に来たら私達が隠れちゃうじゃないですか!! ダメです!!」
「ちぇ〜、ケチじゃのう」
写真いっぱいに映るリヴァイアサンの胴体。うん、胴体しか映ってないし……これもボツ。
「リタだけズルい!! わたしも混ざるのじゃ!」
「あらあら〜、それじゃあ私もマーメイド姿で映りたいわ〜」
次々と撮影に参加する人が増えたり……いや、あなた達竜宮城の最高責任者ですよね!? さっきから来訪者が結構来てるのに、そっちの対応は放っておいてもいいの!?
そんなこんなで、最終的に撮影に混ざる人数が多くなって、予定よりもずっと賑やかな『水中遊覧』の写真ができたのであった。
一番後ろのリヴァイアサンとわずかに映った竜宮城を背景に、予定していた私達。そしてリヴァイアサンに乗った乙姫ちゃんと、その横を聖獣纏をしてマーメイド姿で泳いでいるサンゴさんとピンクイルカ。
予定より増えた遊泳者達に若干引き気味のオボロというNGも出たには出たが、最終的にはいい感じの一枚が奇跡的に出来上がっていた。
思っていたよりも画面がゴチャッとしてしまった感じは否めないが、これはこれでいいだろう。最低限、見られる写真にはなっているのでヨシッ。
今日のお題に一番よく撮れていた写真を投稿し、私達はいったん竜宮城に借りているお部屋でひと休みすることにしたのであった。
次はいよいよ、行ったことのないエリアへ行けるだけ行く旅に出る……!!
待っててペンギンさん! ……いるよね?




