死なば諸共って言葉、知ってます?
「ケイカ……以前、屋敷に、イベントの飾りつけを勝手に……買おうなどと……考えていたそうだが……お前は反省というものを……知らんのか……?」
一拍。
間があいて、レキの言葉のひとつひとつを頭の中で考え、ようやくその意味を理解する。
……が、心当たりがまるでない。
「え………………? そんなこと、言いましたっけ……」
イベント開始から十日目の朝のことである。
カァカァと鳴きながら朝の水浴びをしているアカツキとザクロを眺め、縁側でお茶をしているところに放たれた一言に、私は首を傾げる。
おせんべいをレキと一緒にパリポリ食べる、なんの変哲もないのんびりとした時間に、唐突にやってきた緊張の瞬間だった。
膝枕を堪能していたプラちゃんが、目を開いて上目で私を見つめてくる。
見える、見えるぞ……! 張り詰めた糸のような緊張感が……!! 私のだけど!! でも本当に心当たりがない。
あ、ちなみにアカツキとザクロが水浴びをしているのは、でっかいビニールプールみたいなやつの中である。お湯でちょっと濡らして体を洗うくらいなら、晴属性の子達も普通にできるのだ。
完全に水中……ってなると辛いみたいだけどね。
しっかし、いったいいつのことだろう? 本当に分からない。
「先日の……ことだ……確か、アインとともに……鳳凰様へ謁見する……前の出来事と……聞いた……」
んんんん? それってリアルだと数日だけど、ゲーム内で考えると一週間以上経ってるじゃないか。さすがにそんな覚えは……あっ。
――あとで緋羽屋敷もハロウィンの飾りつけ、しようかなあ……。
――こうして街自体が仮装しているところを見ると、自分でもやりたくなるのが不思議だ。
――ケイカちゃん、レキに怒られるよ。
――うっ、そうでした。
――ありがとうございます……でも、私は散財で、アインさんは迷子で指摘しあってるのでおあいこですからね!! レキにはどうか内緒に……!!
――それとこれとは違うと思うんだけど。ダメなものはダメでしょ。叱られたほうがいいよ。
――ううっ。すみませんでした、本当にすみませんでした、どうかレキには御内密に……!!
――カァ。
――アカツキくん……アカツキくんに免じて、僕は許してあげる。レキには伝えないことにするよ
――アインさん……!! ありがとうございます!!
――う、うん……えーっと、で、案内してくれるんでしょ? もう行こうよ。
――はい! こっちです!
……あ の と き か !!
さすがに思い出した私は、バッと振り返って屋敷の中を見る。
そこには、オボロとジンのブラッシングを楽しげにやっているアインさんがいた。
別に役割を取られたとかは思ってないよ? だってあの子達、アインさんにブラッシングしてもらってからブラシをくわえてやって来て、私にもやってもらおうとしてくるんだもの。可愛すぎか?
……じゃなくて。
「アインさん!! 言わないって約束したじゃないですか!!」
「え〜、僕は言ってないよ〜?」
ルンルン気分でオボロのお腹ブラッシングしている彼から、衝撃的な言葉が出てくる。
半分寝ている状態のオボロは、足だけピクッ、ピクッと反射で動かしながら仰向けの状態でブラッシングされ続けている。ジンのほうはあそこまで溶けてないけど……。
「あなた以外に誰が!?」
私が叫ぶと、なんだなんだ? といった様子でシャークくんが目の前の地中から生えてきた。タケノコもかくやという生えかただった。地面の中を泳ぐのは別に構わないけれど、いきなり出てくるのは心臓に悪いので若干勘弁してほしいところがある。
問われたアインさんは、私の焦燥なんてまったく意に解さずのんびりとした口調で「言ったでしょ〜? 僕、『は』許してあげるって」なんて言ってのける。
そんな彼が指差した方向に視線を向けると……。
「ケェ!」
腰に手を当てるように、翼を体に当てたアカツキがそこにいた。
胸を張ってぷんすか! みたいな雰囲気を醸し出しているが、さっきまで水浴びをしていたせいで若干羽毛が湿っており、いくら胸を張ろうが濡れたカラス状態で可愛いだけだと思うの。
本来なら鳥は犬みたいにびしょ濡れになってもそんなに変わらないと思うが、そこはゲーム。しっかりと濡れて羽毛のボリュームが減った、びしょ濡れアカツキくん状態である。
「あ、アカツキ……?」
「ケェー!!」
突然仲間に裏切られた人みたいな震え声が出て我ながら草生えちゃう。
アカツキが軽い水浴びをやめてプールから出たからか、ザクロがきょとんとしている。目玉の宝石が濡れないように外して置いているので、見えなくてなにが起きているのか分からないのだろう。
「ああ…………教えてくれたのは……アカツキだ……」
「まさかの裏切り!?」
「聖獣は……共存者の……致命的な……間違えを……正すことも、使命だ……」
「私のちょっとした呟きが致命的な間違え扱い!?」
そりゃあ、悪道に堕ちた人を止めるために云々って設定もきっちりあるけどさ!!
「ま、まさかアインさん……アカツキが密告することを知って……?」
「うん」
そうか!! だからあのとき、やけにあっさりと引き下がったのか……!! なんたる不覚!! あとよく考えたら、あのときめっちゃコメントで意味深なこと言われてたね!? もしかしてみんな薄々気がついてた!? 私だけ思い当たらなかったの!? なんてこと!!
「叱られて後悔するなら、やらなければいいんじゃない?」
「……アインさん。アインさんは叱られて反省して迷子が直るんですか?」
「……直らないね」
「それと一緒です」
「ならしょうがないか〜」
「そうなんです!」
開き直ってきゃっきゃっと二人で言っていると、ふと隣の空気が重くなったような気がした。
「そこに直れ、二人とも」
「アッ、はい」
「え、僕も……?」
「直れ」
「はい……」
心なしか、ゴゴゴゴみたいな効果音が聞こえる気がするレキの前に、二人で正座する。
「ケイカちゃん、巻き込んだね!?」
小声で私を非難する彼に、私はふっと鼻で笑って答えた。
「死なば諸共って言葉、知ってます?」
「さ、サイテーだ〜!?」
「聴こえておるぞ」
「ぴゃっ」
「ごめんなさい」
本日のお題は、『こわいもの』
……写真の題材は決定である。
「しゃんと背を伸ばすのだ……ケイカ!」
「ひゃい!」
怒ったお爺ちゃん……お爺さまは、怖い。
「注意喚起」
好きな実況者の動画見てたらコメントで私と神獣郷の名前が出されてて冷水を浴びせられたような気分になりました。
よそ様の動画で関係ない話をするのはやめてください。本当にやめてください。神獣郷のファンは民度が低いとかって嫌われることになります。マジでやめてください。私としても迷惑です。実況者さんに申しわけがない。
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