ホウオウとの謁見
目の前にいるのは翼をたたんだ大きな大きな鳥さん。
見上げるほど大きく、けれど瞳は優しげでオレンジのあたたかい羽毛に覆われている。日の光に当たったところが、心なしか虹色に見えるくらい、美しい鳥だった。
「ようこそ、順番待ちは退屈だったろう。用件はなにかのう?」
これが、鳳凰。
アバターを作るときにお世話になったから、ずっと『さん』付けなんだけど、声もあのときと一緒で、少し低めのダンディな声。でもユウマのほうは驚いている。確かPKサーバーの鳳凰はこちらと対になっていて女性の声なんだっけ。確かに、私が同じ立場なら違いすぎて驚くかも。
麒麟のほうは話したことがないので分からないけど、こっちにいるのは女性の声のほうだって話だし、このイベントが終わったら話してみたいな。
「ええと、キャンディの数と順位を見せてもらってもいいですか?」
「よい」
鳳凰さんが翼を広げるとランキングが表示される。
2位 12356
「って、2位!?」
ちなみに1位は1万と5千くらいでユウマだ。どうやらシークレットピニャータ戦でかなりの数を稼いだのが原因らしい。上の方に行けただろうなとは思っていたけれど、まさかこんな駆け上がっているなんて……。
普通にピニャータを倒しているだけだと、廃人さんでもここまでのスピードで上がって来られないということだろうか?
でも休憩とかしていたら、あっという間にランキングを抜かれてしまう気がする。
順位を眺めていたらルナテミスさんも1万を超えているようだし。彼女はシークレットピニャータに会っていないはずなのに!
「よきかな、これからも励むように。このまま先頭を走っていくならば、加護を多く与えることができよう」
「加護!」
「おぬしは既に加護のスキルがあるだろう? それに重ね合わせ……レベル3くらいまで上げることが可能だ。加護は進化の際に関わることもある。あって損はないぞ。また、そっちの者は麒麟の加護があるのう。鳳凰と麒麟、二つの加護を所持することもまた、得となるだろう。目指して損はない」
進化……!
「えっと、聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「よいよい、しかし重要な情報はキャンディを供物として差し出してもらうことになるが、よいか?」
「はい。進化先と、その条件についてです。たとえば……進化が二段階目のこの子達が三度目で和種転生進化で神獣に至りたい、という場合どのような条件が必要になるのか、教えてほしいのです」
「え、それ聞くの?」
ユウマに頷く。今までは流されてきたけれど、ヒントくらいは欲しい。もちろん自分だけで考えてそこに至れるならそれでいいし、そのほうがよりすごい!
でも、まったくの手探りだとそれはそれで難しい。
自分達のために聞いているのかと寄り添ってぎゅうぎゅうに挟んでくるモフモフに、にやつかないようにしながら真剣になって鳳凰さんを見る。
「ひとつ、いやふたつ答えることはできるのう。しかし、情報ひとつにつきキャンディを5000いただこう。もちろん、キャンディを失えば現行のランキングには影響が出るぞ。総数によるランキングもあるが、手持ちのランキングとはまた別だ。それでもよいか?」
「ぐ、はい」
元よりランキング自体は興味ない。そりゃあ、多少はランキングが上だと嬉しいけど! けど! 私はこの子達がキラキラで美しくなるのを早く見届けたい!
だから、ためらわない。キャンディの数が一気に2000まで減るのを見て息を詰めるが、気にしてない! 気にしてないもの! この子達のためだもの!
「……ふむ、では言おう。しかし、伝えるのはケイカとやらのみ。もう一人にはいくら聞き耳を立てても聞こえぬ。よいな」
「はい」
「まあそうだよね」
前置きをして鳳凰さんがクチバシを開く。
「ひとつ、信仰をもっと集めるが良い。そうさなあ、80%といったところか。ふたつ、伝承を調べよ。この世界には様々な書物が存在する。そこにヒントもあるだろう」
書物。なるほど盲点だったかもしれない。伝承も、仲良くなったリリィとかなら話してくれるかもしれない。
「ありがとうございました」
「いや、よい。これからも精進せよ」
「じゃ、アイテム交換して終わろうか」
「ええ」
こうして、後は回復アイテムやスキルを手に入れられるビットをキャンディと交換して、はじめての謁見は終わったのだった。
抽象的なヒントのわりには要求する対価がえぐい鳥さんなのであった。




