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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
初イベント!『キャンディ・ピニャータ・パニック!』

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その大嵐は災禍か恩恵か

 シズクが青いオーラを纏ってゆらゆらと、わずかながら宙に浮かぶ。

 スキル【遊泳】の遊泳状態だ。これで他の雨属性スキルの効果も上昇するのだ。


「――!」


 シズクが鎌首を持ち上げ、天に向かって吠える。

 声は聞こえない……しかし、いつも彼女の声を聞いている私からすれば、どんな風に吠えたのかは簡単に脳内再生ができた。


 ぽつり、ぽつりと雨粒が落ちてくる。

 どんよりと集まった雲が渦巻き、小さな水滴がだんだんと大粒になり、勢いを増す。


 手のひらを差し出してみれば、雨粒が当たった場所から緑色の幻想的な光がほのかに輝き、体力がわずかに回復する。【恵みの嵐】だ。味方の体力を回復し、敵を雷で攻撃するスキル。先程の戦いでシズクが自力取得した技。


 開幕からこれを使うことで蝶々の無力化を試みる。


「ナイスですよシズク。動画だと見づらいでしょうか。このように、蝶々の無力化のために雨を降らせてもらっています」


『なるほど雨ねー』

『まだ飛んでるのもいるし、同時に風も吹かせればもっと楽になりそう?』

『嵐か。嵐属性はないもんなこのゲームw』

『地獄絵図で草』

『大丈夫、見えるよ』

『男の方もよくやるわ』

『っていうか、あっちの子コミュ障すぎて草』

『あめあめふれふれもっとふれー♪』


「……ユウマはまあ、ええ。厨二病なもので」


 それにしても風か。いいな。

 今も嵐の影響かゆるく風が吹いているけれど……雰囲気は生暖かい風のまま。思えば最初に異変に気がついたのも、風が変だったからだっけ。

 風がいつものフィールドとは違って、なにかいると感じて……それでキャメレオンを見つけたんだ。


「風、か」


 そういえば三匹目はいることが分かっているのに、どこにいるかがさっぱり分からない。この一帯『綿毛の通り道』のどこかにいるのは確かだ。このゲームはオープンワールドで境界ごとのローディングみたいな前時代的なものはないが、一応ひとつひとつのフィールドが区切られて名前がついている。


 私達の耳に影響が出ているのだから、この一帯にいないとおかしい。でも見えない。キャメレオンみたいに隠れているのか? 


「あうんは索敵中。タイガーとカルマは攻撃中。パトリシアは僕と待機してる。ケイカ、キャメレオンは?」

「シズクが追っていますが、雨の継続にSPが持っていかれているのでしばらくは放置です。私が感覚共有で場所を把握しておきます。先に蝶々の処理を」

「りょーかい」


 嵐の中、雷がずどんと落ちる。地面を伝っていく電流が落ちた蝶々を焼いていき、その上をオボロが走りながら氷の道を作り、凍りつかせて踏み砕く。


 次々とドロップしたアイテムがボックスの中を浸食していき、すでにキャンディの数は9000を超えた。フィーバータイムだね。


 ジンはユウマの聖獣、牛のタイガーの背に乗って一緒に電撃を放っている。

 電撃の威力はタイガーのほうが強いから、もしかしたらもう一段階強い電気スキルを直で見て学んでいるのかもしれない。


「――!」


 わずかに揺らぐ透明な空間。

 そこに向かって目を鋭くしたアカツキが飛び込み、風圧を発生させながら鋭く尖ったかぎ爪とクチバシで攻撃をする。たまらなく姿を現したキャメレオンは舌をべろんっと伸ばしてアカツキを追い払おうとしているけど、多少のダメージでは彼は退散しない。


「シズクの隣に行きますね」


『いろんなところでいろんなことしてるからどこ見ていいか分からないw』

『目が四つ欲しいな』

『馬鹿野郎! あとで録画を見返すんだよ!』

『その手があったか!』

『ハッ!?』

『にしてもアカツキかっくいい』

『オボロもスケートできるようになってからすごい楽しそう』

『私はジン推し! 無邪気可愛い!』

『そこはシズクでしょ。蛇の姫さんクールで素敵』


 論争が起きてる! 

 私の聖獣達は可愛いでしょうそうでしょう! 


「当然です。私自慢の可愛い子達ですからね。箱推ししてください」


『もちろんケイカちゃん推し』

『ケイカちゃんあってこそだろぉ???』

『箱推しよそりゃあ』

『ドヤケイカかわゆい』


「照れますからやめて」


『てれてれ』

『エレヤンかっくいーぞ!』


「やめてって」


『きゃーケイカさん舞ってー!』

『おい舞姫、まだ舞ってないぞ』

『そういえば舞姫なのに舞わないねwww』


「やめろっつーの!」


『エレヤン』

『ヤンキー出てるよ!』

『本性出てますよ(小声)』


「なにが本性ですかこの野郎! 舞いますよ! 舞えばいいんでしょう! 舞えば!」


 なんだこの茶番。

 配信主っていじられるから大変だなあ。

 こらそこ、ユウマ。笑うんじゃない! 


「――」


 シズクの隣に行けば、彼女はゆっくりと私を見上げた。

 そして緩慢(かんまん)な動作で私の周りをくるっと覆うように尻尾を巻きつけてくる。尻尾だけで甘えながらも、嵐の維持に必死になっているシズクに触れ、私はSP回復のアイテムをその場で振りかける。

 水をかけられたシズクは気持ちよさそうに目を細めた。


 ああもう、こういうときにまで可愛いんだから! 


「シズク……」




 ――――――


 和種転生進化の条件、80%達成により残りの条件を開示します。


 龍神種【   】への進化条件。


 信仰度50以上。

『嵐』スキルの取得。

 複数回、広範囲の降雨を行う。二度達成。

『風』スキルの取得。未達成。


『風』スキルを取得してください。


 ――――――




「え!?」


 和種転生進化? なにそれ!? 

 しかも進化先は龍神種……え、これやるしかないよね。というかいつのまにか信仰度が半分以上になっているだと。それだけ配信でも人気になったということかな。嬉しい。


 風、か。


「シズク、ちょっといい?」

「――」


 聞こえないと分かっていても、思わず声をかけてしまう。

 不意に触れたらびっくりしてしまうので、彼女が見えるようにそっと斜め前辺りから鱗に触れる。


 そして、取得できるスキル一覧をステータスから開いた。

 現在彼女のレベルは18まで上がっている。イベント開始時は15だったので、ピニャータ戦で少し上がっているのだ。それに、レベルが5上がるごとにスキルを取得できるのに今まであと一枠保留になっていた。


 つまり、今『風』スキルの取得が可能なのである。

 残しといてよかったー! 


「えーと、風スキル。……」


 嵐と相性良さそうなのはっと。これかな? 

 いや、『龍神』になるんだしこれしかないでしょう! 


「ということで、シズクには風スキル、【神風】を覚えてもらいます」


 選択。次の瞬間、シズクはさらに顔を上に持ち上げて力を振り絞るように吠えた。初めてのスキル。取得した瞬間に使い始めるなんてこの子やりおる……。


 スキル【恵みの嵐】に【神風】が混ざり込む。

 暴力的なまでの強風、雨、そして雷。それはまさに大嵐と言えるような天候で、味方にとっても少し視界が狭まってしまう。


 けれど、敵にとっては明確に『災禍』となって大嵐が襲いかかる。

 蝶々はもはや飛ぶことすらできず、風圧だけでキラキラとエフェクトを散らしながら倒されていった。木の上にいたキャメレオンもたまらずビタン! と下に落ち、木の上から黒と紫のカラフルなコウモリみたいなピニャータが落ちてきて……って!? 


「いやいやいや、羽音って。コウモリなら鳴き声でしょ」


 ツッコミをしている間に、シズクの体が光る。




 ――――――


 和種転生進化の条件を全て達成。

 個体名【シズク】は龍神種、【蛇龍(じゃりゅう) 一目連(いちもくれん)】へと進化が可能です。

 進化しますか? 


 ――――――




 最後の三匹目に対するツッコミとか、感動とか、いろいろな感情が混ざって混乱しているが、私の答えはひとつしかない。


「シズク、祝福しますよ!」


 心を込めてシズクを抱きしめる。

 そして、そっとイエスを選択した。


ということで、暴風神「一目連」が正解でした。


同一とされる一つ目の神様は鍛治の神ですけど、一目連単体だと暴風・台風・大雨を表す天候の神様なのです。


予測のアマツマガツチで笑いましたw 確かにw

BGMはアマツのでいきましょう。


さて、この先は明確に恵雨の水神方面に進んでいきます。


デジモンの進化バンクみたいに、別の神話のモチーフに進化したりも普通にあります。そこはご了承くださいね。


進化の回数も少ない状態で神獣まで至れることもあれば、最長10回進化してやっと神獣まで至れるという場合もあります。その辺は掲示板回にて。


実は最終進化先の名前が感想欄で出ていたりします。こういう小説で出ることは少ないでしょうか?

次回でもしっかりヒントは出すので、推理してみてくれたら嬉しいです!


今後もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] シズクさんの進化おめでとう!名前の通りに一ッ目だとちょっとなので、ここは第三の目という姿ならより神っぽいと思ったりして(笑) [気になる点] コウモリのよくある特技に超音波を飛ばして行動の…
[良い点] コメントで煽られて本性出るエレヤンさんかわわ でもケイカさんは、聖獣達を可愛がっている時が一番可愛いと思うます
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