イベント説明!
幼馴染と二人、並んで上空を見上げる。
そこかしこで同じように鳳凰さんを見上げるプレイヤー達がいた。
どうやらこの様子が公式のライブ配信になっているみたいで、イベント最初のこの出来事を見逃しても後で見られるようになっているらしい。
公式サイトにも多分、この鳳凰さんの演説が終わったあとくらいにイベントについてと報酬についてのページが追加されるだろう。
『このピニャータ祭の目的は二つ! ひとつ、聖獣を模した動くアイテムボックス、ピニャータを壊すことで厄祓いをすること……』
厄流しのために自分の厄を紙人形に移して川に流す……みたいな行事と一緒だ。聖獣がこれから健やかに育っていけるよう、よくないものをアイテムに移して壊して除去する。
その、厄災を移す対象が動くアイテムボックスだという点だけが特殊だろうか。
ようするに、聖獣は不殺するもしないも自由だけど、このピニャータはアイテムボックスで生きている聖獣じゃないから、普段不殺プレイしている人も盛大にバトルしてぶっ壊そうぜ! というイベントだね。
『ふたつ、ピニャータの中にあるキャンディを回収して我ら神獣の供物とすること! 集めた分だけ、我らから褒美をやろうではないか!』
『また、ご自身のパートナー達と同じ種類のピニャータを壊すと、キャンディの獲得量が倍になります。パートナーの厄を祓うためのものですからね』
これはポイント報酬のことだ。
キャンディをたくさん集めて神獣の元……運営に納めるとポイントに還元されて一定量ごとに報酬がもらえる。もちろん、キャンディを納めた数によるプレイヤーのランキングもあり、ランキング一位になったら運営から贈る特別なアイテムや装備が手に入るみたい。
一位の報酬は今のところ公式鳳凰印の豪華ユニーク装備、同じく麒麟印の公式ユニーク装備。それと鳳凰、麒麟から与えられるユニークスキルの一覧から好きなのをひとつ選んで入手できると。
それ以外はステータスアップのアクセサリーや、なんと確定で称号待ちの聖獣が生まれてくる卵まである。
低ランク報酬と、低ポイント報酬はゴールドが少しもらえるとか、スキル書が手に入るとかそういう感じみたい。それでも損はないので集めたほうがいい。
それに、事前に公式ページには『ピニャータの未破壊による特別報酬などは一切ありません』と書かれていた。
不殺プレイ推奨の公式から、ちゃんと破壊しろよと念を押されているわけで……ピニャータの破壊は不殺プレイの邪魔にならないことが確定している。
だから、私もこのイベントには大手を振って参加できるというわけだ!
『ピニャータの種類は三つあります』
と、そこで違う場所から麒麟が登場した。馬の体に龍のような顔と、全身にウロコのある神獣だ。
こちらは女性寄りっぽい声だけど……初めて見たね。麒麟って触れたら蛇みたいにすべすべしているんだろうか? 体温はどうなんだろう。冷たいのか、それとも馬の体に合わせてあたたかいのか……想像が止まらない。
っと、そうだ。ユウマに聞きたいことがあったんだった。
「ねえ、ユウマ。鳳凰と麒麟の声が男性と女性なのって意味があったりするんですか?」
「んー? あー、確か検証勢の話だと、PKあり鯖じゃ鳳凰が女、麒麟が男の声。なし鯖だとその逆で鳳凰が男、麒麟が女の声だって話だね。別個体みたいだから、伝承通りに男女で分かれてるんじゃないかって推測されてる。名前が同じなのは、分けたら意味が通らなくなる一般人がいるからだろうって」
「名前? 分ける? どういうことです?」
「ホントはホウオウのホウとオウで男女が分かれるんだってさ」
「あーなるほど。じゃあ、元からサーバーごとに一対になった二種が案内役で分かれてたんですね」
納得して話を聞く態勢に戻す。
麒麟は見たことがなかったけど、どうやらキャラクタークリエイトの際に鳳凰と麒麟どちらに当たるかは五分五分らしい。
『アイテムボックスとして各地に設置された置き物型のピニャータ。聖獣の姿を模した動くアイテムボックスと化したピニャータ。そして、共存者のお邪魔虫として用意された強い敵性反応を示すシークレット型のピニャータです』
『お祭りだからの。困難を乗り越えてこそ強い絆が育まれ、そして能力も強くなるというもの。フィールド内には姿を隠し、共存者のキャンディ集めを邪魔するピニャータが極めて少数配置されている。これらを打ち砕き壊した者にはより多くの祝福が与えられるだろう』
お邪魔キャラがいる、と。
この感じだと目に見えないタイプ……? なら、シズクの様子を常に確認しておく必要があるかな。定番なお邪魔キャラといえば、せっかく集めたキャンディを奪ってくるとか、気絶させられて時間をロスするとか、かなあ?
『イベント期間中、ビット系アイテムを十個集め、我らの前で使えば特別なスキルを教えてやれる。それをゆめゆめ忘れるでないぞ。我らは城前にて、お前達の様子を鏡で確認する故、用があればそちらに来るといい』
『健闘を祈ります。良い祭りの日を』
鳳凰さんが街の奥をクチバシを突き出して指し示し、二匹はそちらへと飛んでいく。これでイベントの説明は終わりのようだ。
公式ページも十分ほどのメンテナンスが終わると、先ほど神獣達が説明した通りのルールが書かれている。
聖獣のための祭りだから不殺はしないほうがいい。そもそもピニャータはアイテムボックス扱いなのでキルやカルマでカウントされない。
設置型と、動き回る聖獣に似たやつがある。自分の聖獣と同じ種類のピニャータを壊すと獲得キャンディが倍になる。
動くピニャータの中に、見えないのかどうなのかは分からないが、レアなお邪魔キャラがいる。お邪魔キャラを撃破するとより多くのポイントが手に入る……と。
単純な道具集めイベントだけど、初めてのイベントだ!
みんなで頑張ろう。
「ユウマ、行きましょう」
「ん、じゃあ、やりますか」
私は、鳳凰さんや麒麟を憧れの目で見上げていたパートナー達を撫でると、さっそくユウマに声をかけてその場から動き出すのだった。
鳳凰の雌雄については検証スレ回で回収するつもりでしたが、感想返信で同じことを二度言うのも手間ですし回答として出しちゃいました。
シズクが雨属性なのも。オボロがいる時点で普通の四神にはならないのが分かると思いますが、主人公のパートナー達はみんな青龍、朱雀、玄武、白虎にはなりません。
別の神格を持ったものになります。アカツキの行く先は多分察しのついている人が結構いるでしょうが、まだ他の子はお楽しみ!




