足フェチ織物屋はブレない! いよいよ新衣装へチェンジ!
「ストッキンさん……」
「はい」
如何様にも処罰を……みたいな顔をして全力で目を逸らして来ている彼に、笑いかける。
いや、怒ってはいないよ? ストッキンさんはストッキンさんなんだなあと思っただけで。
「昨夜、ラフ絵がメールで送られてきたときのものよりもスカートの丈が短くなっていることなんて、ええ、ぜんぜんこれっぽっちも怒っていませんからね。なぜかソックスガーターが追加されていることとか、全然怒っていませんよ。料金が嵩んでしまうのではないかという心配はありますが……で、これらを追加した理由はいったい?」
「趣味です」
知ってた。
心なしか首に巻かれているシズクや、足元にいるアカツキ達も呆れているような視線を向けている。ストッキンさんのシルクハットの上に乗って頭を下げるネズミさん……レッグがなんだかかわいそうになってきた。
しかし、実はデザイン自体は気に入っている。
変更するならすると、職人としての連絡をよこしてほしかったというだけで、作られた装備に罪はない。
「……こちらがゴールドの振り込みになります。私が装備をセットしたら、説明をお願いしてもいいですか?」
「あ、はい! ぜひに!」
アッ、これはめちゃくちゃ語られるパターンでは。
嫌な予感を覚えつつ、メニューから装備一式をセットする。
装備の名前は『緋色の舞姫シリーズ【鳳凰印】』となっていた。ちゃんと鳳凰印が残っていて安心した。初期装備からしっかり引き継いでくれたんだね。そこは職人の腕に感謝だ。低レベル職人では、これを引き継がせることができないということだったからね。
「おお、やはり似合いますね。さすが私……」
「変態紳士さん、自画自賛やめてください。素晴らしい出来ですけれども!」
鏡を用意してくれた彼にお礼を言ってから、自分の姿を確認した。
いつ見てもアカツキとお揃いの緋色の髪。左右で三つ編みに編み込みながらハーフアップにしているところを、赤色の羽根一枚と桜の花弁で飾り付けられた簪がひとまとめにしてある。
それから下に着ている着物は、上だけ着物のようになっているが、下の部分はスカートとなっていて、スカートのひだが交互に違う模様になっていて、華やかだ。上に羽織っている羽織りがアカツキを思わせる鮮やかな緋色で、袖のたもとが鳥の翼のような形になっている。
羽織りが強い赤色で、中の着物が薄めの朱色となっているからか、全体的に赤色でまとめられているにも関わらず、不思議と色がうるさいとは思わない。
腰装備の帯はシズクを思わせる青色で、帯の真ん中に三日月のついた大きなリボンがつき、腰の後ろにリボンの先が回っていて、下にひらりと垂れている。
青色に薄い水色の水玉模様になっていて、リボンの先の垂れた部分にはシズクの額の宝石の色と似た丸い宝石がついていて、あれ? これ絶対に予算で足りなくない? という感想が真っ先に浮かんだ。
ワンピース型の着物のスカートは膝上10センチくらいか?
その下にオボロの毛並みを思わせる真っ白なハイソックス型の足袋に、足袋を止める同じく白いソックスガーター。
足元は茶色のスタンダードな高下駄になっていて、歩くのも大変そうだが、私には約束された『器用値』というものがあるのでまったく問題にならない。
高下駄のおかげでちょっと身長が伸びたように感じる。
下駄の鼻緒の部分はオボロを連想させるふわふわもこもこな作りになっていて、サンダルのように足首を固定する帯がついている。こちらは雪の結晶モチーフのアクセサリーがボタンになっていた。
胴装備のアカツキ、腰装備のシズク、足装備のオボロ。
全て取り入れつつ、それぞれの主張をさせながらも見た目が派手すぎないように押さえ込まれている逸品だ。ちょっとだけ派手ではあるけど、これがオンリーワンのユニーク装備だと思うと少しくらい目立つほうがいいだろうね。
「ふむふむ」
「どうですか?」
「動きやすくてグッドですね。どんな性能になりました?」
私が質問すると、ストッキンさんはキラッと目を輝かせて語り出す。
「ケイカさんは器用値を重要視していますよね? ですから、胴、腰装備は器用値をそれぞれプラス20ずつ。頭はエッグが入っていないのでプラス10が限界でした。足の装備も敏捷を20上げられるように製作しております。いかがでしょう?」
「プラス20!? え、だって一体の進化で手に入るステータスポイントが10なのに!? それでもプラス50も上げられるとかマジですか!」
「マジです。全力を尽くしました。褒めてください」
「ストッキンさん素敵! すごい! さすおじ!」
「ついでにその下駄で踏ん」
「調子に乗らないでいただけます?」
「はい」
ノリがいいのは面白くていいんだけど、性癖が問題だ。
やはり足フェチ変態紳士は侮れない……。
しかし一気に50も器用値が上がるなんて……! 最高では?
敏捷についても、これならもう逃げられなくて足手まといになるなんてことにはならないし。自力で移動しながら三匹の指示をして攻略ギミックを探すこともできそうだ。
「エッグがまたいくつか手に入ったらメッセージを飛ばしてください。装備に追加して更新したり、頭装備に追加したりできますからね」
「分かりました。ストッキンさんあなた、変態ですけど素晴らしい職人ですよ!」
「ふふ、変態は好きなものに全力投球できますからね」
「そこ否定しないの!? ま、まあそういうものですよね。これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ、これからもご贔屓に」
にこにこと笑い合いながら挨拶し、別れる。
本日は装備の受け取りもしたので、宿屋に一度戻ることにした。
アクアビットを使ってシズクに回復スキルを覚えさせてから、装備の試運転を兼ねてシズクのレベルを上げていき……そしてレベルが10くらいまでいったら、雷峰高原に挑戦してみたいと思う。
他の属性はアカツキ、オボロ、シズクで網羅したので残るは雷属性の子のみ。
四匹目までならパーティ内に入れておけるし、気にいる子がいたら仲間にしたいと思う!
ということで、まずは宿屋だ。
道行く人達に新装備を見られながら、そうして私はルンルンで町中を歩くのだった。
主人公ケイカの新衣装は以下のツイートから。
https://twitter.com/shigureookami/status/1277616828437549056?s=21&t=AZBIzQSOWcQzE1yaLsNspQ
こちらのツイートに貼ってあるのは、コミカライズのお話が出る前に好きな絵師様に依頼をして作成していただいたものです。
くら桐様には漫画の単行本のほうにもお祝いイラストを寄稿していただいていたりと、とてもお世話になっております。
コミカライズ版がこの話まで追いついて、この衣装を作画担当の春千秋様の絵で見られることも今か今かと楽しみにしているところです!!
思い入れの深いイラストなので、ぜひ見ていってくださいね!!
また、イラスト関係は『【神獣郷ライブラリ】挿絵・設定・番外・短編ギャラリー』という番外編専門の作品にて一部公開しております。
そちらの作品も併せてゆっくりとお楽しみくださいませ!




