卵ぉっ!?
よし、今日もログイン!
意識が落ち、眠りから覚めるように目を開ける。
木製の天井が視界に入り、きょろきょろと辺りを見渡せば毛布にくるまって寝ているアカツキ達の姿がぼんやりと見えた。
寝起き特有のぼーっとした感じが襲いくる。そんなところまでリアルにしなくていいのに……本当にこちらが第二の人生みたいになってしまいそうで怖いくらいだ。
「ふぁ……んー、おはよ」
体を起こして足を動かし、違和感。
なんか足元にある……?
「なあにこれ……」
一人だけなのもあって丁寧語を外しつつ、布団をめくる。
「……?」
掛け布団をかけ直して、もう一度めくる。
そこにある現実は変わらなかった。
「はい?」
足元。布団の中。そこにあった特徴的な緋色のツルツルとした丸い物体に真っ白でスーパーでよく見るあれによく似ているが、真ん中に氷の紋章っぽいものが刻まれた丸い物体、それに澄んだ水色の丸い物体。
カラフルだが、それの形状には見覚えがあって……。
「卵ぉ!? わ、わた、私が産んだ!? おめでとうございます!?」
それは、カラフルな三つの卵だった。
「パートナーに!? いやそんな馬鹿な!? それとも『あなたの心をアンロック』ですか!? 心の卵!?」
混乱しすぎてとんでもないことばっかり口走ってしまっている自覚はある。自覚はあるけど正直なんだこれ!?
「アカツキ!」
「クェッ!?」
寝起きでパチパチと瞬きをしていたアカツキの名前を切羽詰まりながら呼べば、びっくりしながらその首を横に振る。
「おぼ、オボロ!?」
「わふん!? わふわふクゥーン!」
ぶんぶん首を振るオボロ。いや、そもそもオボロは女の子だし。
そうなるとシズクも違うわけで?
「し、シズク……?」
「るるぅ……」
あ、あれ否定しない? そんな馬鹿な!?
えっ? えっ? と混乱していると、シズクは呆れたように這い寄ってくると、私の目の前で空中を撫でるような動きをする。
「え? あ、メニュー? いや、観察眼?」
この子、賢いよなぁ……。
アカツキのものっぽい緋色の卵を手に取ってみる。
あれ、これ卵というよりも、宝石のような質感……? というか、なんか突起みたいなものが……?
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アニマ・エッグ・ジュエリー
パートナー聖獣の信頼度がMAXのとき、ゲーム内で八時間以上の睡眠を取る、または現実時間で六時間以上ログアウトしていると現れる卵形の宝石。
装備生産の際に使用すると聖獣の姿を模した共存者専用装備が作成される。また、聖獣用の装備を生産することができる。
百個集めて同属性の神獣に納めれば、特別なスキルを覚えることができる。
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「アニマ……って確かどこかの言葉で魂とか生命のことでしたっけ。アカツキ達の魂……の結晶? いえ、心の結晶? ということですか?」
「しゅるる」
シズクが頷き、私に水色の卵を押し付けてくる。
この子達の心そのものってことか。しかしどうして今? だってこの世界で一晩明かしたはずで……。
「あ、そっか。そういえば寝ずに徹夜したのでした……だからミズチ戦前後で現れなかったのですね」
盲点だった。寝ることで手に入るアイテムがあるとは。
しかし。
「でも布団の中に現れるのは心臓に悪いと言いますか、セクハラですよね」
速やかに運営にメッセージを送る。これは抗議してもいいだろう。せめて枕元に出現させてほしい。
「装備、装備ね……専用装備。欲しいな」
どうやら聖獣の種類によって専用装備の見た目とやらも変わりそうだ。この三匹からのジュエリーでそれぞれ頭、胴体、腰辺りで装備が作れるだろうか?
今までは戦わずに避ければいいと思っていたので、あまり装備の性能は気にしていなかった。これは装備を生産してくれる生産職の人を探してみないといけないだろう。
イベントまでになんとか間に合わせたいが、遊馬は……リアルでは生産職みたいなものだけど、多分こっちでは厨二病全開のロールプレイをしていて生産職ではないだろうな。
信用できる生産職を探したいところだ。
そうと決まれば、あとはステータスの更新とスキルを取得して町をぶらぶらしながら、いい人がいないか探してみよう。
動画配信コミュで募集してもいいけれど、それだと人がもし殺到した場合に選ぶ選ばないの問題が出てきてしまうので……まだ、そういうのは遠慮したい。
今はただわいわいやってるだけにして、人をもっともっと集めてこの子達の布教をしないといけないからね。
「朝から混乱してしまいましたが、ひとまず落ち着きました。それでは、ステータスの確認といきましょう!」
まだまだやることはあるのだ!
ステータス更新まで長引いてしまっていて申し訳ない。
あと二万字で文庫一冊分となる十万字になりますね。頑張ります!
昨夜にも幕間を更新しております。
よければそちらもみてくださいな!
シズクはクーデレ系なので顔にはあまり出しませんが、結構懐いております。




