収集率100%への道のりは遠いですね
「運営が私に優しくありません」
『買わなきゃいいだけじゃん』
『まーーた散財しようとしてる』
『もはやフラグとすら言えないくらいに当たり前になったねw』
お土産コーナーはとってもリーズナブルでした!
ただし食品系を除く。ぬいぐるみみたいなホームに置ける小さな家具は普通に売っているところよりはお安く買い求められるみたい!
あとは鬼ヶ島ランド特有の家具シリーズだね! 海原シリーズもあるし、ここでイベント会場の浜辺をモチーフとした家具と、鬼ヶ島をイメージした家具を買えるようになっているんだね。
……というか、家具まであるのか。収集家系のプレイヤーさんは大変だなあ。あ、砂漠シリーズもある……嘘でしょ、水晶洞窟シリーズまである……普通に家具屋さんみたいなものじゃないこんなの。
よくよく見れば細々としたアイテム以外は、全部普段より安いとはいえ高いもんは高いというね!
でもお金は遊園地内でまだ使うだろうしなあ。それに、お土産屋さんも、絶対ここだけじゃないし。普通、大きな遊園地だと複数お土産屋さんがあるよね。そのうえ、売り物のラインナップはだいたい店によって違うのだ。
なら、全部見て回ってから改めて欲しいものを吟味して買うべきだろう。スタンプも探さないといけないし、全部の施設を巡ってみないと、情報の漏らしがあるかもしれない。お金がなくてそもそも入れないなんてことになったら困る。
「にゃうーん」
「くうん」
そうやって棚の前で悩んでいると、ジンとオボロが私の羽織りの裾を引っ張った。やっぱりこの子達も止めてきている。そりゃそうか、いつも散財して後悔している姿を見せているからね。
……と振り返ったら、そこにはきゅるんきゅるんの目で私を見上げるジンとオボロ。そして目が合うと、ジンがささっと移動してなにかの機械の前におすわりをした。
――ポップコーン製造機。
あ、はい。
『草』
『止めるんじゃないんかーーい!』
『この主にしてこの聖獣ありか』
おうおう、好き勝手言ってんじゃねーぞコメントども。
心の中で軽口を叩きつつ、オボロの目線と合わせるためにしゃがむ。
「食べたいんですか?」
「きゅーん」
「うにゃん!」
悲しげに鳴くオボロと、機械の前で鳴くジン。
も、もう、しょうがないなあ。ポップコーンくらいなら各地で違うフレーバーとか絶対にあるし、構わないかなー?
「表にはフランクフルト屋台とかもありましたね」
遊園地の食べ物は高いのだけれど……まあこの子達がねだるなら仕方ないよね! 必要経費、必要経費!
「くぁ」
「しゃ!」
そしてアカツキとシズクからストップがかかる。
アカツキは翼を広げてある場所を指差し、シズクは私の顔を尻尾である場所に向ける。
――美味しいじゃがバター。
――できたてゆで卵。
あ、はい。
みんな食い意地が張ってるんだからなんだか。私に対して遠慮がなくなってるよね? どうせ散財癖が治らないと思って開き直ってない? まあいいんだけどさ!
せっかくの遊園地ですし、堪能しないとね。
……ということで全員がお望みの品を買い求め、食べながら外に出る。
他のところに家具が売っていなければもう一度ここに来ることになるだろう。
さて、次はどこに……と、博物館から出て視線を近くのアトラクション入り口に向けたとき……そこにいた人に引きつった笑みを浮かべた。
「は、はろーストッキンさん」
「おや? 早いですね。てっきりまだお土産を買っているかと」
もしや先回りでもしてたのか? この変態。
「ところでストッキンさん、その首輪どうしたんですか? 趣味?」
「違います」
そして気になったことをすかさず質問。
ストッキンさんは前に会ったときにはしていなかったはずの『首輪』としか言いようのないアクセサリーを身につけていた。なにそれって話である。
「これは、運営からつけられたものですね。これがあるうちは撮影機能の停止と、他人に聖獣をついていかせることができなくなる呪いをかけられているのです。要するに呪いの装備ってやつですね」
なるほど。
「つまり自業自得ってことですね?」
「そんな身もふたもないことを言わないでください!」
とうとう運営の罰則が与えられたらしい。さすがに好き勝手やっていた人だからね。たまにストーカーされていて偶然助けになることもあったが、それはそれとして、ちょっといい気味だ。反省してください。
「で、先回りしてたんですか?」
「今回に限っては違いますって! ちょっと鬼ヶ島のボスバトルが難しくてですね……現実逃避に遊びに来ていただけです」
「へえ、ボスバトルが難しい……ちょっと興味ありますけれど、まあ深くは聞きません。ネタバレせずに一度は挑みたいですし」
ストッキンさんが難しいって言うと俄然気になるけどね。そのときまでのお楽しみだ。
「そうでしょうね。ですから私からはなにも言いません……一緒に園内を回りましょうか?」
「お断りいたします」
「えっ」
当然なんだよなあ。




