仲間の召喚は龍笛の音色に乗せて

　この、システムに書いてある『レイドの枠は共存者四名×それぞれの聖獣四匹ずつ、計二十名まで』『ソロで挑む場合は、自身を除き、他の枠を用いて最大十九匹まで聖獣を参加させることが可能です』っていうのは、つまりソロなら待機している子達も呼び出せるってことだよね？　

　VRだからか、画面が止まって準備画面に〜ってことにはならない。

　今も砂の中を三角の巨大な黒い背ビレが泳ぎ回っているのが見えているところだ。でもこっちを襲ってこないということは、多分準備完了するまでは襲ってこないようになっているんだと思う。

　ピニャータイベントの最後はある意味レイドバトルみたいな感じになっていたが、本当の意味でシステムが組まれたレイドバトルはこれがはじめてのはずだ。いっちょ大物を地引き網で捕まえてやろうじゃないですか！　

　メニューに『ホーム』の欄が追加されていたので、そこから『呼び出し』を選択。

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　レイドバトルでは『呼び出し』コマンドが追加されます。

　初回のレイドバトルのため、『呼び出し』に必要なアイテムなしで呼び出すことが可能です。

　二回目以降からはレイドバトル専用である『集合の鐘』をゲーム内通貨で購入してください。

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　運営は私からお金をふんだくりたいの？　

　まあいいや、ちょっと購入画面見てみよう。

　集合の鐘は一回のみの使い切りタイプと、永続的に使えるタイプの二種類。使い切りタイプは300ゴールドだけど、永続タイプは3万ゴールド……か。

　なお、リアルマネーを使った場合は出費が500円に抑えられる。しかし、ゲーム内通貨で買ったものは画像の見た目そのまま。リアルマネーで買えるほうは色みまでカスタマイズが可能になるので、より自分専用のグラフィックのアイテムを作りやすい……と。それだけでリアルマネーつぎ込む人はいそうだね。

　さて、普通にボス戦を通過するだけなら使い切りタイプでもいいんだけれども、多分このシャチも100回スカウトで仲間になるタイプだと思うと、永続タイプを買ったほうがお得だ。

　のちのちまた使うことがあるかもしれないし。

　これから先もレイドバトルはあるだろうし、一回の買い物で済むならそれのほうがいいだろう。なるほど、ゴールドより大幅にリアルマネーで買ったほうが安いとなると課金も辞さない人にはすごくお得である。無課金でも500円なら手が届かないわけでもないし。

　しかもこの『集合の鐘』、見た目が五種類くらい違うのがある。

　普通に鐘型の他に、銃型とか短刀型とか、弓矢型とか、あと笛型とか。それぞれ呼び出す際の動きに違いが出るらしい。変なところにこだわりのある運営だよ本当。

「ちなみに、エフェクトがどんな感じか知っているかたはいらっしゃったりしますか？」

　どんな使用感なのかは商品説明でも映像付きで見られない。完全に買わないと分からないようだ。なんで何種類も用意してるのにそこでお試しが見られないようになってるの？　運営さん、変なところで抜けてない？　

『鐘は鳴らすと天から光が差して、そこに魔法陣ができて現れるタイプだったよ』

『俺氏は銃！　コール！　って叫びながら呼び出すの気持ちいいいい！』

『弓は空に打ち出して、矢が刺さった地面から魔法陣が出て召喚するタイプでしたの』

『短刀も投げて刺さったところに魔法陣ができる感じだった』

『笛は吹くと背後に魔法陣が出て飛び出してくる感じでしたよー』

『基本的にバトル開始前に使うものだから、使ってる間に不意打ち食らうようなことはないみたい。意図的にバトル開始してから使った場合は知らん』

　なるほど。

　……それなら私は、舞姫ですし和風のものでいかないとね。

　笛も小さいものから横笛までカスタマイズ可能になっているみたいだし、やっぱりこの装備なら横笛一択でしょう！　

「横笛購入します！」

　初回はいらないって書いてあったけど、どうせ買うなら今買っちゃうでしょう！

　さてさて、呼び出す動作もある程度アレンジ利くみたいだし、ここは全力で舞姫ロールプレイをしないと！　

　マニュアル操作ではこういう厨二なアレンジを利かせることができるようになってるのいいよね！　オートにすれば恥ずかしい動作をしないで無難な動きで呼び出すこともできるわけだし！　

　ロールプレイしたい人にもいいし、そんなのなしで面倒なことは全部カットして効率重視にしたい人はオートでやればいいだけだから上手いことバランスは取れていると思う。

　横笛を購入。アクセサリー枠に装備していつでも使えるように腰の帯部分に差しておく。普通に呼び出すだけではつまらないもの。そこは『私らしく』行こう！　

「アカツキ、オボロ、シズク、ジン、みんな。そのうち声を合わせる練習をしましょうね」

「クーッ！」

「ワオン！」

「シュ！」

「うにゃーん！」

　笛に合わせて鳴き声で歌ってくれれば、それだけパフォーマンスにもなるから裏で練習しよう。画面映え、これ大事！　それ以上に私達が楽しめるのも大事だけどね！　

「神前舞踊――『龍笛(りゅうてき)のしらべ』」

　横笛……龍笛ってやつは低い音から高い音まで縦横無尽に駆け抜ける、その音色のことを「舞い、立ち昇る龍の鳴き声」と言い表されるらしい。

　その言葉に擬(なぞら)えて私が踊るのは、緋色の扇子と純白の扇子で火の粉と雪の花を上に向かって立ち昇らせ、龍に見立てること。

　羽織りの翻(ひるがえ)る鳥の羽ばたきのような動きと共に、天へと向かう紅白の龍。そのあとは自然な動作でそっと帯に扇子を差し込み、くるりと回って横笛に口をつける。

　笛の音色だけは初回でマニュアルではどうしようもないので、視線移動を使い『オート』に切り替え、音階とその音色を響かせるために必要な指の動きを見ながら覚える。

　そして音色を響かせてから魔法陣が背後に展開され、呼び出す聖獣一覧が開く。すぐさま『全員』を選び、そしてアドリブで先ほど見たコメントの言葉を叫んだ。

「召喚(コール)！」

　魔法陣が翠(みどり)色に光り輝き、左隣にレキが。右隣に仲間にしたばかりのプラちゃんが召喚される。

　これで六匹。

　でもまだ終わらない。

　なぜなら。

『えっ、そのお守りって』

　そう……一日に一回、会える子達がまだいるよね？　

「お願い、力を貸してくださいユールセレーゼ達！」

　白梅のお守りにキスをするようにそっと抱きしめて、その場で使用。

　瞬間、砂漠なのに白い梅の花がざあっとその場に吹いて、四つの影が現れるのだった。