のじゃロリ女王、乙姫のイベント説明
そんなゆるーい放送にみんな気が抜けていたものの、やはり乙姫ちゃんが見つかったからか砂浜から歓声が聞こえてくる。乙姫ちゃんの姿をしっかり見たいという声が上がっているみたいだね。
「それじゃあ、乙姫ちゃん? ちゃんと一人でできるかしらぁ〜」
「ぬう! サンゴに言われなくとも一人でできるわい! そこで大人しく見ておれ! そしてわたしの見事な弁舌に、いっぱい称賛の声を送るがいい!」
マイクを手渡すサンゴさんに乙姫ちゃんが胸を張る。
ん〜、そのやりとりも全部マイクに入ってるんだよなあ〜。可愛い。
私達はというと、営業終了の時間を迎えて設営していたお店も片付け終わったところだった。おもに、借りつけていたお店の基礎を綺麗にして返す作業だね。
お店を出すには運営からお店の基礎部分を借りる必要があったんだけど、その基礎の部分を飾り付けを取って綺麗にして返す……と、そんなところ。
商品や商品のための素材は持参してないといけないんだけど、お店やお店の飾り付けは別にイチから作ってるわけではないのである。
もちろん、最初にかける基礎費用によって借りられるお店の基礎もグレードが違ったりしたりね。
私達のは本当に形だけのお店だったので、夏祭りの出店レベルのやつだ。メインは商品のほうだから問題ない。
本当に夏祭りみたいに『ヨーヨー釣り』や『金魚すくい』みたいな、手間のかかるものをやりたい場合は、それだけ基礎を借りる際の値段が高くなるってことだね。
こうして片付け終わったため私達は揃って岩場に座り、二人のやりとりを眺めることにしたのでした。
私が岩場に座ると真っ先に膝の上へジンがダイブ! ぐりぐりと頭を押しつけて甘えてくるので喉元に手を伸ばす。するとジンは、ぐるぐると機嫌良さげに喉を鳴らして丸くなった。
オボロは背後に回ってくるりと私を包むように体を横たえる。伏せの状態だね。その間にアカツキやシズクがきゅっと身を寄せて入り込む。
「もう、暑くなっちゃいますよ」
まあ、そんなこと言っても嬉しいんだけどさ。
暑ければアイス食べればいいだけだものね。
さて、乙姫ちゃんの勇姿を見守りましょうか。
「……すぅー」
深呼吸する音が入り込んでますよ、乙姫ちゃん。気づいてないなあ……可愛いからいいんだけれども。乙姫ちゃんは緊張したように深呼吸してから、カッと目を開いて喋り出す。
「みにゃの者!」
キィィィン……とマイクのハウリングが起こる。乙姫ちゃんはびっくりしたのか、第一声で噛んだことがショックだったのか、いったん沈黙してサンゴさんを振り返った。涙目である。大丈夫かなこのロリ姫様。
「乙姫ちゃん、ファイトよ〜!」
サンゴさんがゆるーく拳をあげて応援する。助けるつもりはないようだ。乙姫ちゃんに甘いようで、そういうところはしっかりしているらしい。
「………………んんっ、み、み、皆のもの! よくぞ集まってくれた! 海の国を統べる女王として、感謝するぞ!」
あ、仕切り直した。
「お忍びで会場をまわったが……皆が一つの目標に向かい切磋琢磨し、あるいは聖獣達との絆を示す良い余興であった!」
へえ、お忍びだったんだなあ。迷子じゃなかったんだ。いや、そうか。最初から私達の実力や聖獣との仲の良さを見るためにわざわざ隠れて見ていた……とかなのかな?
まさか竜宮城の女王様が見た目相応のロリっ子なわけがないし。
「迷子の間違いでしょ〜? だからピンクちゃんの尻尾に捕まるか、わたしが抱っこするって言ったのに〜」
あ、違うわこれ本当にポンコツロリなだけだ。
変に深読みしそうになっていた。危ない危ない。
「わたしもこうして発見してもらっ、発見されてしまっては仕方ない! 明日のイベントについて、この場で説明させてもらおう! 少しの間だけ、耳を傾けてくれればよい! 頼むぞ! ……き、聞いてくれないと困るからのう!」
威圧的に女王様らしく喋っていたのに、最後の最後にちょっと不安になったのか、弱気になる乙姫ちゃん。これは人気が出そうな子だなあ。パートナーは誰だろう?
サンゴさんとセットで立体フィギュアとか出てくれたら絶対買っちゃうなぁ……でも、その前に公式で告知のあった『聖獣リアライズ企画』を待たなくちゃ。
どうやら基礎になるぬいぐるみ型のロボットに神獣郷オンラインのデータをダウンロードして、AIデータを移植。ぬいぐるみロボットを中心にしてホログラムを展開し、まるでリアルに神獣郷のパートナー達が現実化したかのような気分になれるグッズが発売予定らしい。
もちろんAIデータを移植しているのでゲームの中の子達と同一個体だ。それでもって、ロボットだから連れ歩きも可能。夢が広がるよねぇ〜! 絶対予約しないと!
っと、考えが飛んでた。明日のこと聞かないと。
「明日から開催されるのは、この砂浜を含む、海原のフィールドにある地点六箇所を巡るスタンプラリーである! 場所は地図を渡す故に、明日アイテムボックスを確認してくれい! スタンプを集め終えた者は我らの城、竜宮城への招待権を獲得したとして歓迎しよう!」
す、す、スタンプラリー……?
それはさすがに予想外だったな。てっきり竜宮城への道が開かれるから普通に行けるものだと。
「竜宮城への道は普通ではない。しかしスタンプを全て集め終えた頃には、その入り口がどこにあるかも分かるだろう。スタンプを集め、特別な入り口を見つけよ! それが明日行われるイベントである!」
乙姫ちゃんの放送はそこで終わったのだった。
夏のイベントはまだまだ続きます!




