すごいよ乙姫様!?
「し、しまったああああ!? 捕まってしもうた! い、いやじゃあああ! わたしはもっともっと遊び回るんじゃああああ!」
う、うるせえええ!
すごい至近距離で叫ばれるとめっちゃ罪悪感あるんですけども!
というか別人だったらどうしようとか思ってたけどこのセリフの感じだとまったく問題なさそうだね! うん! 本人だよね! こんなこと言う一般プレイヤーがいてたまるかよ!
「あ、あれあれあれ? どうすればいいんでしょうコレ。捕まえたはいいんですけれど、さ、サンゴさんってどうやって呼べば……? あの人、足元が珊瑚になっている設置型のホログラムしか各地に置いてないですよね? 呼んでも来れませんよね? え、え、どうすれば」
「うええええええん! わたしはただ綺麗なものが見たいだけなのにぃぃぃぃぃ!」
『圧倒的カオス』
『大混乱』
『残りの客が困ってて草』
『あ、俺並んでたけどサンゴさん呼んでくるわ』
『ケイカまで泣きそうになってるw』
『おっ、ナイース!』
は、配信していて良かった!
今猛烈に配信していて良かったと思っている! みんなの対応があったかいですよぉ!
さて、このまま腕を離したら逃げられてしまいそうだし、ここは私の得意な説得スキル(自力)の出番ですね。
「えーっと、乙姫様?」
「むう、乙姫ちゃんと呼べい!」
ええ、そこ?
「あー、乙姫ちゃん。さっき言っていた注文のためのお金は持っていますか?」
「二万九千七百ゴールドだろう? 乙姫たるもの、それくらい払えんでどうする! 一国一城の主人ぞ!? それくらいのお小遣いはもらっておるわぁ!」
そっかー、お小遣いかー。
一国一城の主人がお小遣い制かあ……サンゴさん、苦労してそうだなあ。
いや、お小遣いとしては三万ゴールド近く持ってるのはすごい……のか? いやすごいよね。これだけ幼い子に。あれ、ってことはサンゴさんが乙姫ちゃんに激甘な可能性……?
「それでは乙姫ちゃんの氷像と一緒に作りましょうね」
「海で見ておったが、見事な氷さばきに珍しい地上の果実! わたしは美しいものが好きでのう、おぬしのワザはお見事であった! 間近で見たいと思ってついつい誘われてしまったわ!」
「あら、それは嬉しいお言葉ですね。やりがいがあるというものです!」
『おだてられてるw』
『いや、おだててきてるっていうより、これ純粋に褒めて来てない?』
『素直ないい子だなあ』
さっきの九十九個パフォーマンスはほぼ嫌がらせみたいなものだったんだけど……この子食べ切れるのかなあ。
いや、お金を出されてるんだからやらないわけにはいかないか……それでは、いざ!
「全員の力を合わせておっきな器を作りましょう!」
シズクが水球を作り、オボロが凍結させて、アカツキが半分溶かして、深皿にしたところをまたオボロが凍結させる。そしてジンが尻尾で打ち上げる果物を私が対の扇子で切り刻み、オボロがシャリシャリに凍らせる。
氷の器に山積みになった果物の横に、最後にオボロがアイスクラフトで乙姫ちゃんと、ついでにサンゴさんの氷像を作ってどーん!
「完成です!」
「おおおお!」
……いや本当、食べ切れるのかなこれ。
『サンゴさん、今本体で向かうってさ〜』
『有能』
「あ、ありがとうございます!」
「んん? なにと喋っておるのだ。まあいい、さっそく食べてしまおう! なにか果物のジュースやら、かき氷のようにかけて食べることは可能か?」
「えーっと、この場で作っちゃいましょうか。なに味がお好みですか?」
「イチゴじゃ!」
イチゴね、なるほど。
手早くお料理スキルでイチゴをいっぱい突っ込んでイチゴのソースを作成。練乳と混ぜてるのであま〜いソースになるよ!
大量に必要なので後半はスキルによる自動生成をして、九十九個合わせてひとつの大きなビンに入れた『巨大なイチゴソース』にする。
「はい、できましたよ乙姫ちゃん」
あ、やばい。大きなビンにしすぎてこれ、かけるのすごい大変では?
「よっし! さっそくいただくぞ!」
「ええええええ!?」
『はあああああ!?』
と思ったら、乙姫ちゃんが自分より大きいビンを片手で持ち上げて、軽々とした足取りで巨大フローズンフルーツにぶっかけた。嘘ぉ!?
「いっただきまーす!」
あ、えらい。じゃなくて!?
巨大イチゴソースについていた、これまたでっかいスプーンで乙姫ちゃんはさくさくとフルーツを食べ進めていく。嘘でしょ……なんキロあると思ってるのこれ……嘘でしょ……あの小さい体のどこにそんな量が入るの……!?
サンゴさんが迎えに来るまで、その場は乙姫ちゃんの勇姿を見守り、撮影するスクショ大会が開かれることになったのでした。
ちょこっと遅れましたごめんなさい!




