千客万来!嬉しい悲鳴ってやつですね!
さてさて、まだまだ人はいるぞ!
次は男性。白猫ちゃんだー! 肩に乗せているみたい。リアルだと体重とかの問題でできそうにないこともゲームだと簡単にできるからいいよね!
「はーい、お待たせしましたー!」
「レキおじいちゃんにありがとうと伝えて欲しいです。あとシズクちゃん撫でさせてください」
お、レキも着々とみんなに好きになってもらえているみたいだね。嬉しいなあ。
「もちろん!」
シズクも人気でなによりです。
おっ、そう言っていたら蛇を連れた男性も来た。
「リアルだと結構高いんですよね、フローズンフルーツ」
「あー、確かにそうですね?」
「それと、モフモフをください」
「お好きな子を選んでくださいな〜」
彼はオボロと迷ったみたいだけど、最終的にはアカツキの柔らかな翼を堪能していった。そうなんですよ。オボロのほうがすごいと思うじゃない? 意外と鳥の翼ってモフモフもっふりしていて気持ちいいんだ。
……と、次に来た人はなんというかその、いろいろと見た目が濃かった。
「よーし、お前達! 今こそケイカさんに練習したものを見せるときだ!」
「ぢゅー!」
三つの声がユニゾンする。
男性の肩に乗ったハムスターが三匹。しかも全部違う種類だ。その子達が小さな団扇を取り出して踊り始めた!
「エレヤン! エレヤン!」
男性のほうも懐から団扇を取り出して腕を振る、いわゆるオタ芸的な動作を始めている。あ、これ古の動画サイトで流行ったやつだ……化石じゃないですか。しかしそこは私、団扇に書かれていることに従ったファンサくらいはしないとね!
「はーい、シャッター準備はいいですか? ウインクしちゃいます!」
「やったぜ」
男性にはハムスター用に細かくカットするサービスつき。ついでに冷たすぎないようにして、彼は人数分お買い上げになっていきました。私もハムちゃん達のお写真を撮らせてもらったので満足!
「お姉さま! 貢がせてください……」
蛇を連れた女性がぽおっとして言うので、「それじゃあ十個お買い上げになってくださると嬉しいです」とめいっぱい甘えたり。
「蛇ってスベスベしてて気持ちいいですよね! 撫で比べさせてください!」
これまた蛇を連れた男性がシズクをご指名。
両手で二匹を撫でているときはすごく幸せそうだったね。
それからやってきたのは、尻尾が二股に分かれた黒猫を連れた小柄な女の子。同性のファンもいてくれて私としてはものすごーく嬉しいのです。もっとたくさん来てくれていいのよ!
「配信楽しく見てます……あの、握手して貰ってもいいですか? もしくはオボロを撫でさせてください。ちゃんと払うので……!」
「じゃあ握手します?」
「はい!」
快く握手していると、「やった……私もケイカさんみたいにエレヤ……かっこいい舞姫になりたいです」と真剣な顔で呟いた。
うん、なんか色々漏れてるけど私気にしない……エレヤンって言われるの慣れてしまったもの……認めないけど。
「わふん!」
「わふ……?」
次いで大きなわんこが先に走り寄ってくる。
みんな岩場のあたりで並びながら雑談したり、交流したりしているようなので、そこから飛び出してきたのだ。
追いかけるようにして男性が前へ。
「ケイカさんと握手できると聞いて。オボロをモフりたいけどひと撫じゃあ止まれそうにないし……」
まあ気持ちは分かる。男性はリンゴのフローズンフルーツを購入し、私と握手しながら真剣な眼差しになる。
「ところで、聖獣達を愛でる会。通称ケモナーの集いに入りません?」
「あ、宗教勧誘は受け付けておりません」
「宗教じゃないのに!?」
ばっさりしてしまった。
次は……お、またウサギさん!
しかも二足歩行……だと!? 前足ついてないタイプの子は初めて見るね! どんな風に進化して行くんだろう? すごく興味が湧く。この人の要求はっと。
「扇広げてくるって回ってもらうのって大丈夫ですか?」
「ファンサの一部なので問題ないですよ〜。動画スタンバイです!」
いつものように激しくではなく、優しく優雅にくるっと回る。
ゲーム内のカメラを用いてムービーを撮ったらしいその男性は、「大切にします」と言って去っていった。
「わお、みんな可愛いですね……! どなたに運んでもらおうかな」
次の子はまたまた蛇を連れた女性だ。でもこの子は細くて小さいサイズの蛇さんである。おっきいサイズもいいけれど、小さい子もいいなあ。
「えと、猫ちゃんいいですか?」
「どうぞ! ジン、持っていってあげて」
「うなあ〜ん」
多分初見さんかな? 嬉しそうに受け取ってくれたので私としても満足です。
「ンメェ〜」
「ん?」
あら、いつのまにかそばに羊さんが。なかなか珍しいね。
「すみませんうちの子暑がりで……」
「いえいえ、大丈夫ですよ! 冷たい物を食べて元気になってくれたらそれで私は嬉しいですからね」
羊さんは毛が多いから大変だよね。この人も十個分買っていってくれました。ありがたい。
次に来た子は、最初から目がキラキラと輝いていて穴が空くほどの視線を感じた。狐さんと猫さんを連れた女の子だね。
「ストッキンさんがイケオジなわけ……! 嘘だぁぁあ! ……あ、うちの子の分合わせて全種類5個ずつください」
「あー、今ストッキンさんここにはいないですからねぇ……どうしても気になるならお店に寄るといいですよ」
そう言いながら全種類を製作中、彼女はしゃがんで自分の聖獣達に向かってお話しし始めた。ひそひそ話なんだろうけど、正直丸聞こえである。
「エレヤンだ……これが、エレヤン……天照、月詠、これがエレヤンだぞ。こんな風にはならないようにな? ……いやなってもいいけど、てかケイカさんみたいになるなら大歓迎だけども」
狐と猫ちゃんの名前を呼びつつ言い含める彼女の肩に手を置く。
「装備から扇子が見えてますけど、もしや舞姫ですか……?」
「あ、そうです! 後追い舞姫! ケイカさん達のことは箱推ししてるので!」
「ありがとうございます〜! 後輩だ! 後輩嬉しいー! 見てください皆さん! 後輩ですよ後輩! やったー!」
はっ、思わず無邪気に喜んでしまって時間を食ってしまった。引き止めちゃったし、一言謝ってからお別れしたのでした。
次の人も全体的に和風の装備で固めていて、相棒が狐さんだった。いいなあ、狐さん。ちょっと憧れる! あ、ごめんなさい。油揚げはないです。その代わりしゃきしゃきのリンゴを提供するので!
さて、まだまだ行列は続くねえ。
おっと、今度は虎さんが来ました。しかも可愛い女の子まで!
「ケイカさんの配信いつも見てます! ケイカさん、大好きです!」
「ありがとうー! こんな可愛い子に言ってもらえるとますます嬉しいですねー!」
コメントで可愛くなくて悪かったな! とかなんとか言ってるけど、みんな大好きですからね? 大好きより下はありません! その上にハイパー大好きがあるだけです! ……ハイパー大好きってなんだよ。
「あ、あの……」
「ん?」
「僕、男です……」
「男の娘……だと!?」
天然物だー!?
あ、いやゲーム世界だから偽物の可能性もあるか……? いやでもこの反応は、普段も似たようなことがあるからこそ起こる反応な気がする。
まあ、美少女でも美少年でも目の保養なのは変わらないんだけどね!
……と、衝撃から回復して次のお客さんはと周りを探す。岩場の辺りで並んでいる人に、次どうぞーと言うと、思い切り背後かな? を指さされたので振り返る。
白いクジラに乗った女の子がいた。
「なんと!?」
「アタシのホーちゃんに乗せてあげるからアカツキに乗せなさい」
「ちなみにご注文のほうは?」
「イチゴ!」
「それじゃあ、アイテム渡してからにしましょうね」
「むむ、はあい」
クジラの背中はすべすべしていました。毛が生えてるのだろうかって思ってたけど、ゲーム的表現で、よりすべすべ肌になっているみたいだね。
「クァー!」
「すごいわ!」
アカツキも満更でもなさそうだし、問題はないね。
少女がすっかり満足してから前に来たのは狸を抱えた女性だ。手早く注文を済ませてから要求に入る。
「オボロさんとジンさんに踏んでいただいてよろしいでしょうか? ああ、そういう趣味ではないですよ? 単にうちの子の肉球との感触の違いを堪能したいだけですので」
「そういう趣味では?」
「Mではありません」
「アッハイ」
反射的に声が出ていた。
私も狸さんの肉球を少し触らせてもらったけれど、すごい弾力だった。でもうちの子が一番なんだよね。特にジンとかすごいもの。ふにふにしていて、よくこれで地面を歩いて怪我をしないなって思うくらいだし。
そうして営業していると、今度は背景にしている洞窟から人が現れた。
神主さんの格好をしたプレイヤーに、二足歩行をしている猫……おそらくケット・シーがついて歩いている。洞窟から神主が出てくるというシュールさがさごい。
「ん? トラコどした? イケニャンがいるだと! あ、本当だ、イチゴとブルーベリーが食べたいのか? よし並んで一緒に買おう」
私達の姿と一緒に行列も見えたらしい。素早く列の後ろに並びにいったようだ。
そして視線を向けていた列から虎を連れた、男性のお客さんがやってくる。
え……!? すごい。この虎さん、金色だ! なにこれなにこれ! 知らない子だー!
「種類分かる人います?」
『あれはゴールデンタビータイガーってやつだと思うよ』
お客さんがこっちに来る前に、こっそり聞いてみるとすぐさまコメントで教えてくれる。こういうときって配信便利だよね。お礼を言ってお客さんと向き合った。
「ジンくん撫でまわしたいです」
「はーい、ジン。もふられてきてね」
「うにゃーん」
若干ご不満そうだけど頑張って!
それにしても、さっきも虎さんのお客さんがいたけどさ。虎さんが果物食べてるとなんとなくこう……違和感あるよね。肉食だから。実際のところどうなんだろう? 私は動物園くらいにしか行ったことないから分からないなあ。
「あ、あの……」
っと、もう次の人か。
フードを目深に被った女性……かな? 声からして。隣に浮かんでいるのは……な、なんだろうこれ? 猫のようにも見えるしコウモリっぽくも見える。
「トマトはないのですか?」
「え、トマト?」
「はい、トマト」
「なくはないですけど」
「じゃあそれで」
「メニューに出ていないものなので値段上乗せになります。それでも?」
「それでもです」
ネココウモリ? かな? それとも吸血鬼的な? よく分からない生き物だったのでスクショを撮った。
「はい、冷凍トマトですねー」
「ピギョ!」
「え、ぴ……?」
「ピィギョェアアアアア!」
「わっ!?」
トマトはこの子の好物だったらしく、すごい勢いで飛びついてきて驚いてしまった。な、なんだろうこの生き物? 本当になんだろう?
『なにこの生き物』
『え、分からない。教えてアルムのモミの木さん』
『アルムのモミの木「ピギョと鳴くネコっぽいコウモリっぽい生き物よ」』
『なんだ今の』
『ありがとうアルムのモミの木さん。なんでいるの???』
『さあ……』
『ちくわ大明神』
『結局なにも分かってない件』
『誰だ今の』
カオス。
さて、終わりまであと三十分といったところだなあ。
次は……パンダー!? 思わず二度見しちゃった。クジラも結構びっくりしたけど、さすがにパンダもびっくりですよ!
パートナーはお団子ヘアーな眼鏡女子だ。中華風でまとめてきてるのかな? みなさん、だいたい西洋風と和風が多いからなんだか新鮮だ。パンダだもんねぇ……。
「うちの子とジン君のツーショットお願いします」
「ジン、出番ですよ!」
「なおーん!」
パンダの背中によじよじと登ってポーズを取るジン。
それを女性はすごい勢いで撮影してから去っていった。なんというか、濃いな。
さーてパパッと回転を良くしてお次はっと。
お、ライオンだ! それに首に白蛇さんを巻いた男性だね。
これはまた……果物食べるのにわりと違和感があって面白い映像になるなあ。
人数分買っていただいてから彼はジンをご指名。それから、自身の聖獣であるライオンさんの頭を撫でながら言った。
「こいつそろそろシーサーになるハズなんだけどなかなかクエストがうまくいかなくて……だからゲン担ぎってことでジンくん、撫でてもいいですかっ!」
「どうぞどうぞ! ジンは幸運の招き猫ですからね!」
ジンもなんだか照れ臭そうだ。
さて、あと二十分くらいか……あんまり会話しなかった人達も効率よくどんどん対応していったので、わりと疲れてきたところある。精神的に。
「最初のほうにやっていた九十九個分のやつをわたしにもやってくれい!」
「え、正気です……か……!?」
反射的に言ってから気づく。
青い髪。幼女と言っていいくらいの低い身長。耳の代わりにチラッと見えるヒレのようなもの。青を基調とした涼やかな和風ドレス。極めつけはサンゴさんがまとっていたものとまったく同じ薄ピンク色の羽衣みたいなもの。そしてちょこんと乗った貝殻でできたティアラらしきもの……。
ええい! 人違いだったらごめんなさいするだけだ!
「お、乙姫様確保おおおおおお!!」
「な、なんじゃあ!?」
ガシッと腕を掴んだのは自然なことであった。
なんと、文字数がいつもの二倍!
やりきりました……!




