ストーキングスキルで開店直後にやってくるのは反則です!
準備は万端……他のお店も見て回ってどこにもないものを商品にすることを決定して現在、ゲーム内時間で午後1時ちょっと前。
これから二時間が勝負となる!
本当はいい匂いのするものを……って案もあったんだけど、焼きそばや焼きとうもろこしだと他のお店の二番煎じになっちゃうし、埋もれちゃいそうだったんだよね。
そして私達が商品にすると決めたもの! それは……!
【舞姫と聖獣が作るフローズンフルーツ】
砂浜に立てられた旗。白と青を中心に、涼しげで清潔感のある配色の屋台。
屋台に飾り付けられた草花に、一度緋羽屋敷に戻って撮ってきた写真。
そう、私達のホームである緋羽屋敷には、レキが育てた果物がたーっくさんあるのだ! だからそれを自分達で収穫し、ついでに収穫風景の写真も撮り、採れたてのリンゴやブドウ、ナシにモモ、バナナなどをオボロがスキルで冷やして盛りつける。
目の前でオボロが果物を冷やし、私が盛りつけ、手渡しをする。完璧では?
遠くで待つ人向けに、手渡しで対応しきれない場合は従業員役のジンやアカツキ、シズクが背中にくくりつけられたお盆の上に商品を乗せ、運んでいく。
事前に作ってはいないから、結構忙しくなってしまいそうだけども……やっぱり目の前で作るってパフォーマンスはいるよね? ファンサービス的な意味で!
そして、私達は屋台巡りをしながら人が少ないところを探してちょっと探検していたんだよね。おかげで秘密のビーチ的なところを発見した! 足首程度までしかない浅瀬を通って岩場を横切ると、そこにまた砂浜が続いていたんだよ。
これまた綺麗な場所でね! こんなところ、みんなが知らないのはもったいない! ……というわけで、配信中の景色を見ればどこの岩場の裏か分かるように、イベントビーチの様子を映しつつお店を始めるつもりだ!
「よーし、頑張りますよ!」
「くー!」
「わふぅん!」
「しゃ!」
「うなあーん!」
みんなで手をあげてえいえいおー!
さあ、開店です!
「こんにちはー」
「反則技使うのはなしって言いませんでしたっけ〜?」
13時ジャストに岩場の陰から出てきた人物に、反射的に声をかける。
まだ配信も開始してませんけど?
「い、いやあ偶然ですね……」
ジト目でやってきた人……ストッキンさんを見つめてから、諦めてパパッと配信を開始する。
「はーい、お時間となりました! 私、ケイカと聖獣達による『フローズンフルーツ』の屋台がこれから二時間の間営業します! 砂浜のどこかにあるので、配信風景の背景などから頑張って特定してみてくださいね!」
実はこのシークレットビーチ、私達だけがいるわけでもない。
一般のプレイヤーもいて、魚釣りをしていたりする。そういう人にはこれからうるさくなるかもしれないからと、前もってフローズンフルーツをプレゼントして交渉済みだ。
『お、さっそく!』
『フローズンフルーツかあ。涼しくていいねえ』
『会長ズルはなしだろ〜』
『会長? この紳士があの変態!? うそ!? 嘘だと言って!?』
『果物は海にはないし、人が多くなってきたら乙姫さんも釣れるかもな』
『ファンクラブ会長、顔はイケオジ紳士だもんなあ』
『掲示板とのギャップで草』
多分画面前で待機していたんだろうね。配信を始めると同時にコメントが流れ出して、それぞれが好き勝手に喋りだす。それからチラホラと場所の特定のために考察している人がいたり。
「桃のフローズンフルーツを買いますね」
「はーい! オボロ、スタンバイ!」
「わふん!」
元気よく返事をしたオボロに、切り分けた桃が飾り付けてあるお皿を差し出す。
「こちらのお店で取り扱っているのは、すべて私達のお屋敷で育てた果物となります。それから……」
合図を送ると、オボロがスキルでお皿の上にある桃をシャキシャキに凍らせてその上につまようじを刺して……っと。
「はい、完成! どうぞ、ストッキンさん」
「300ゴールドとか安すぎませんか? もう一つゼロをつけません?」
「ただの屋台なのでこれでいいんですよ。どれだけ貢いでくるつもりですかあなた」
彼の一言でコメントが笑いに包まれる。
ガチめな書きかたでもっと貢がせてとか言ってくる人もいるが、そういう人は十個買っていってくださいとだけ言って対応する。
「こんな感じで、パフォーマンス込み! さらには商品の購入をしてくれたかたには、聖獣のみんなをひと撫でする権利を差し上げます! もしくは私との握手ですかね? それでは、皆様のご来店を聖獣達とともにお待ちしておりまーす!」
そういう言葉で締め括り、岩場の向こう側を見る。
……もう既に人だかりができていた。特定するのはやっ、こわっ。
「うーん、乙姫様。来てくれるといいですね」
私の小さな小さなひとりごとに答えるのは、ぱしゃんと打ち付ける波の音だけなのであった。
引き続き読者参加型のお話です!
一言コメントにて、簡単に自身の好きな動物・連れていそう・連れていたい聖獣とアバターの性別だけ答えてくだされば、お客さんとしてケイカの店へ訪れることが可能です。
その際に伝えたいことなどもございましたら「」書きでご記入くださいませ!
①聖獣
②性別
③「」
の順で番号まで書いていただければ、確実に「あ、採用していいんだな」と判断して使わせていただきますよ!
恐らくあと一話分のみ屋台のお話となります!
よければ参加してみてくださいね!




