もっと、もーっとファンサを頑張ります！

　――――――

【アンケート】

　現在、神獣郷オンライン！　では海イベント真っ最中！　

　どうやら自分で料理を作って屋台を経営できるらしい……？　

　屋台経営を時間を決めてやってみるべきか？　

　・やってほしい（遊びに行きたい）

　・やらなくてもいい（イベント優先）

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　目の前を埋め尽くすような勢いでコメントが流れていく。

『聖獣達用の料理作ってみるとかどう？』

『屋台やってみて欲しいです。どんな料理ができるか楽しみです』

『やってほしいです！　多分みんなでしてたら乙姫様出てくるかもしれない！　ケイカさんは聖獣・神獣達と仲がいいから！』

　ああ、いいね。人に向けた商品も多いだろうし、聖獣にターゲットを絞るっていうのは名案！　

『見つけた時に何か特別なイベントが見れるかもだからイベント優先かなぁ』

『イベントやってから余った時間で屋台で』

『それよりジンに構ってあげてほしいにゃ〜』

『聖獣とケイカちゃん両方が店員やるってことはもしかしてそれを口にできる可能性が！？』

『＞アンケート　もしかすれば腹ペコの乙姫さまが来るかも知れないからやっちゃえやっちゃえ！　てか、来なくても俺が買いに行く』

『屋台なんだから当たり前だろ……えっ行かなきゃ』

　同じゲーム内なんだから、来れば食べられるよ？　

　あとルナテミスさん以外からも、ジンを構ってあげてって意見が多め。他にも幸運を招く猫なんだし看板猫、招き猫になってもらおう！　とかそういう意見もたくさん来てるね。

『イベント優先にしないの？　時間ないでしょ』

『いや別にケイカちゃんが見つけなければいけないわけでもないよね？』

『乙姫様青髪らしいから青髪優遇ってした屋台やったら釣れるかもね。それと屋台はパートナーとの共同作業でできるやつで。ってことでやって欲しいに一票』

　うん、乙姫様捜索はプレイヤー全体のミッションだから、実は参加しなくてもよかったりもする。いや、見つけたいし、絶対特殊なイベント入るだろうからやるけどね！　

　やりたいことは、どっちもやる！　これ大事！　

　うん、結構『やってもいいよ』って言葉が優勢みたいだね。

　みなさん、同じVRの中だから私達の店に来たがっている感じになるみたい。嬉しいお話だなあ。ファンが来たら握手とかウインクのファンサくらいはしちゃおっと。

　こうして考えている間にも、乙姫様捜索はいろんな人がやっているようだし……さっきも考えたけれど、もしかしたら美味しいご飯に釣られた乙姫様がやってくるかもしれないからね。

　青い髪だって話だから、それっぽい人に片っ端から声をかけてみればいいわけだ。聖獣のみんなにも従業員を手伝ってもらって、商品を購入した人にはひと撫でしていい権利をあげたりすれば盛り上がるかなあ〜？　

「さて、最終結果出ました！」

　脳内でドラムロールを鳴らしつつ、結果を指差す。

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　・やってほしい（遊びに行きたい）　75%

　・やらなくてもいい（イベント優先）25%

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「と、いうわけでやります！」

　声を張り上げると、いっせいに赤文字コメントで埋め尽くされた。目の前が見えない。コメント自重して！　

「えーっと、二時間ほど砂浜のどこかで私達がお店を開くことにします。これから私達自身もお昼ご飯を食べるので、開始はゲーム内時間で本日の午後13時から午後15時までで終了です」

　事前に一応決めておいたことを伝えて画面に手を振る。

「しかし！」

　ここでいったん切ってから、びしっと人差し指を立てた。

「このあといったん配信を切ります！　みんなでお食事タイムをしてから作戦会議をして、システムのほうで屋台を出す申請を出し、指定した食材なんかを搬入したり、飾り付けをしたりしてからお店を設置するわけですが……みんな来ますよね？」

　首を傾げてみれば、画面に溢れ出すほどの『もっちろん！』のコメント達。

「ですよね！　それだと、人が殺到して危ないかもしれないので、私達が屋台を出す場所は秘密にしておきます。時間になったら、必ずこの砂浜のどこかにお店を構えるので、頑張って見つけてくださいね？　押さず、騒がず、節度ある行動を心がけてくださいな！」

　そう、配信見てる人達が追いかけてきたら明らかに手が回らなくなるのが目に見えている。それに、一般の、私を知らない客が入らなくなるかもしれないし、そもそもそれだけ人がいたら乙姫様がびっくりして来てくれないかもしれない。

　だから宝探し感覚でみんなに探してもらおうというわけだ！　

「それでは、今から配信を切って準備に入りますね。皆様、なにが屋台で出されるかはお楽しみです。待っていますよ？」

　口に人差し指を当ててウインク。

　大量のコメントが通り過ぎていくのを見守りながら、私は手を振って「それではまたあとで！」と配信を止めた。

　さーて、準備しますか！　

　イベントと両立して遊ぶことも目標に、目指せ砂浜一の売り上げ！　

「頑張りましょう！」

「クァーッ！」

「わん！」

「シャーッ！」

「にゃあーん！」

　みんなで空に向けて手を振り上げ、私達はまずはお昼ご飯を食べるために移動するのだった。