特別報酬?
「おめでとうございまぁ〜す」
砂浜に戻るとサンゴさんが手招きをしてきた。
観客席からはアカツキ、シズク、レキが飛び出して走り寄ってくる。
……レキは遅いけど。
『レキ遅いwww』
『シズクはちゃっかりアカツキの背中に乗ってきてるのにレキときたら……』
『いや、カメは体重あるからどっちにしろ無理だろ』
『ジンは! ジンはいないんですか!? やっぱりもうお役御免なの!?』
いや、ジンはいつでも召喚できるように専用のアイテムを持ってきているから、半日くらい経ったらレキと交代するつもりでいる。よく考えたらレキも緋羽屋敷のお庭の改造が途中だし、こないだハインツがお情けで買ってくれたジェム・ツリーの苗木も設置しないといけないんだよね。
水上レースの会場から出たらいったん交代しようかな?
「このあと交代しましょうかね」
「ワシは……かまわぬ」
「うん、ありがとうございますレキ」
『やったにゃーん! 猫に優しくしないケイカちゃんは一回しばき倒そうと思ってたところだから命拾いしたにゃ?』
って、ルナテミスさんだこれーっ!?
PKできないこのサーバーでおっそろしいこと言わないでください!?
「あっはっはっ、ジンの自尊心がそろそろやばそうですし、しばらく通訳が必要なさそうならレキにはスローライフしててもらいましょうか。あの子には進化もしてほしいところですし」
『連れ歩いてにゃいくせに進化してほしいとかよく言うにゃん』
『ルナテミスって誰?』
『うわ辛辣……』
『ほら、前に猫喫茶でシズクの進化させてただろ? そこのオーナー』
『え、その動画見てない! いつの?』
『タイトルはそのまま猫喫茶の文字が入ってたはずだから新着順で探してこいや』
『ありがとー!』
いやまあ確かにルナテミスさんの言う通りではあるんだよなあ。
ジンのためにも構ってあげなくちゃ。魔獣になるほどストレスは溜まってないはずだけど……ストレスメーターみたいなの見られるようにならないかなあ。
そういうのがあるゲームならやったことあるし、参考になるんだけど……手持ちが多くなってくるとパラメーターとかのガバが増えてくるのはありがちだけど、この子達にはそれなりに優秀なAIが入ってるから余計に罪悪感がすごい。
こんなAI、普通は医療機関のカウンセリングロボットとか相談室勤務のロボットくらいにしか入ってないからね。
「優勝したケイカさんにはぁ〜、こちらを差し上げますわぁ〜」
「ありがとうございます!」
こちらがコメントとやりとりをしながらもサンゴさんは首を傾げつつ対応してくれる。ありがたい。彼女からもらったのは貝殻でできたネックレスみたいなものだ。これは……?
「これは海の眷属と仲良くなりやすくなるお守りですわぁ〜。わたし達海に生きる者はぁ、この貝殻を好んで装飾品として加工しているんですよぉ。ですからぁ、お魚さんやイルカさん達をスカウトしたとき、成功率が20%ほど上がるんです〜!」
スカウト成功率アップ!
それは嬉しい! 海の子もいっぱい見たいし、このあとちょっと気になることがあるから、レースには関係なくさっきの小島まで行ってみようとしてたからついでにお試ししてみよう!
「あ、それと最後にサンゴさん。質問いいですか?」
「はいはーい、なんでも訊いてくださいな〜」
自然とサンゴさんが私の頭を撫でながら頬に手を当てて応えてくれる。
のほほんとした雰囲気といい、本当にザ保護者って感じの人だよなあ。
「乙姫様ってもしかして青い髪だったりします?」
「あっ、乙姫ちゃんの特徴、なにも言ってなかったわ〜いけないいけない〜!」
さっき小島で見かけた青色を思い出しながら尋ねると、サンゴさんは困ったように言った。え、本気で忘れてたの……? 運営側でしょ。しっかりして。
「うーん、言い忘れちゃったのは仕方ないけれど〜、今会場全体に言っちゃうと〜、せっかく優勝してまで質問してくれたあなたのためにならないわね〜」
おっと、この流れは。
「あなただけに特別に教えちゃうわね〜? 乙姫ちゃんはね〜、長い海色の髪をしていて〜深海を覗き込んだような深い青の瞳で〜、わたしのように透明な羽衣と〜、真珠や珊瑚でできたティアラをしているのよ〜! それと、とーっても小さくて可愛いの〜!」
これって、実は計算された特別報酬だったりする……?
それぞれの大会で優勝したりしたうえで、サンゴさんに直接訊かないと聞けない情報……?
え、やった! よかった話を聞いといて!
「特徴聞かなくていいのかって指摘してくれたコメントの人、ありがとうございます……!」
よし、じゃあ、あとは海の中を堪能しつつ小島に向かってみるかな!
どうせならと本編に反映しちゃいましたっ!
ときどきこうして読者参加型っぽくなるのもいいかな……なんて。




