ちょうどいいから妹達に推理を聴いてもらおう!
翌日。
「も、もしかしてみんな見てたの……?」
妹達の前で細い声を絞り出しながら尋ねると、いっせいに目を逸らされた。いや、逸らされたそのあとにぷふっと吐き出すように笑い出す次女の姿に「お前が元凶か」と内心で頭を抱える。
「飛鳥ちゃん……」
「だって姉さんがそういうことをするのって珍しいですし、気になるじゃないですか。最初は私だけ見ようと思ってたんですよ? でもほら、この子達に見つかっちゃって……」
次女、飛鳥が苦笑する。
話題が下の妹達に移ったのでそちらに視線を向けると、三女清楓がほっぺたに手を当てて微笑んだ。
「ほら、お姉ちゃんってペット飼いたいって言っていたじゃない? 実現したらどんな風に喜ぶのかしらって、気になっていたのよ〜」
間延びした声でちょっと癒されつつ、やっぱり私の反応が気になるということなのねと納得する。
「わたしもお姉の活躍……見たい」
最後に、物静かなほうの四女、弓月が控えめに手を挙げた。その姿を見た瞬間に胸の内いっぱいに「許す」の言葉で満ち溢れてくる。
四姉妹にしては仲がいいはずだ。だからといって長女のゲーム配信を全員見ているというのはちょっと引く。引いていた。でもこう言われてしまうと許してしまう。「お姉ちゃんのこと大好きなんです」と言いたげな顔でこっちを見てくるのはさすがに卑怯だ!
「それで、姉さんはどんな作戦を立てているんですか?」
「え、どんなって?」
次女、飛鳥が首を傾げて尋ねて来たので、私もつられて首を傾げながら目を合わせる。
「クソ野郎の断罪方法ですよ。ユールさんが安心できるように排除するんですよね? 不殺で行くなら拷問とかかしら。それとも精神を徹底的に折る?」
「我が妹ながら発想が過激すぎない? 私は平和主義なの。依頼主が悪事を働くように誘導して、本性現したところで現行犯逮捕できたらいいなって」
にこやかな笑顔でやべーことを言う妹に口が引きつる。
蛮族だ……この子蛮族だよ……さすがデモハンに没頭している戦闘狂。この子のほうが絶対にエレガントヤンキーの称号が似合うね。押しつけてやろうかな?
「現行犯逮捕するのね〜? どうやってかしら? お姉ちゃん、そこの算段はあるの〜?」
「それも考えてある」
まず注目するべきは、私しか頼まれなかったという事実。今までそうなった理由を、神獣に進化させたからだと思っていた。けれども、他にも理由があったとするなら?
ユールセレーゼ達が『カラス』の神獣に進化させたことをきっかけに「信じてみよう」と決断してくれたのは、先の邂逅で確認済み。これと同じ理由を、もし依頼主が持っていたとしたら?
クソ野郎こと依頼主のハインツはカラスの聖獣を連れているらしい。しかも進化させられていない、弱い状態のカラスの聖獣だ。
血縁と子供を理由に家を無理矢理継ごうとした人間が、果たして自分の聖獣が弱いままで納得ができるのか?
――否。
絶対に満足しない。
しかし、優秀だったハインツの弟とその妻は既に故人。自分で殺してしまったのだから当たり前だ。
そして、彼の両親は恐らく実力主義である。彼らは弟に家を継がせようとしていたのだし、なまけて聖獣を強くしてやれないハインツに厳しくするだろう。
それを分かっているから、ハインツも両親を頼ってカラスを強くしようとはできない。
ならば、己のパートナーを強くして、更に両親に認められるために必要なのはなにか……?
それは、神獣を手に入れること。
それも、自分のパートナーが進化したのだと吹聴できるように、『カラスの神獣』を。
つまりだ。
「お姉のアカツキを、あの人がとっちゃおうとしてるの?」
説明途中で四女、弓月が不安そうに言った。
そう、その通り。
あの依頼主は私が『カラスの神獣』を連れているから依頼を持ちかけてきたのだ。その依頼でユールセレーゼと赤ん坊が見つかれば万々歳。見つからなくても――私から『カラスの神獣』を奪って殺してしまえば、より当主に相応しい人間になれると。そういう思惑で。
「姉さん、そんなやつ殺しましょ?」
「不殺縛りしてるんだってば。縛りをやってなくてもそんなことしないけどさ」
「えー」
妹が物騒。
とまあ、こんな感じで推理してみたので、これからログインしたら依頼主に直接会ってみて……「山で遭難してしまったのですけど〜、えーっとぉ、そのぉ……ごっめーん! 見つかりませんでした!」となにかあったことを匂わせつつも依頼の失敗を告げ、放棄を選択する。
そうすれば、我慢の利かない依頼主が本性を現してアカツキを捕まえようとしてくるんじゃないかも思っている。
ようは、自分が囮になって現行犯逮捕してもらおうという魂胆である。
「なるほどねぇ〜、作戦は分かったわぁ? それじゃあ、私達は京華お姉ちゃんの活躍を外から見てるから、頑張って!」
「うん、頑張るよ清楓ちゃん。飛鳥ちゃんも弓月ちゃんも、見守っていてね?」
「分かりました」
「うん!」
妹達に話して少しだけすっきりとする。
実は配信では思惑を語らず、先に囮作戦をやってから現行犯逮捕までこぎつけて、そこでハインツ相手に推理を披露してやろうと思っていたのだ。そのほうが動画映えしそうだし!
「姉さん、おやつにアイスがあるから、あとで取っていってくださいね」
「分かった。んじゃねー」
妹達と別れて自室に入る。
さて、水も用意したし、準備は色々したから大丈夫でしょう。
ベッドに横になってヘッドギアを被る。
いざ、ログイン!
>>ぱちもんってなろう小説が既にある
あるの!?!?!?
ちょっと確認次第ぽちもん辺りに変更いたします。累計ランキングで見れます? どの辺です? 教えていただけるとものすごく助かります!
なろうって……深いですね……。




