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神前舞踊『二重の暁光・白梅襲』

 見事に黒歴史を作った私は天を仰ぎ、顔を覆う。

 シリアスブレイクしちゃってごめんなさい……。穴に埋まりたい……。


「ええっと、ユール……セレーゼ……」

「ド・リゼロッド・レオナード・ヒュオール……。四匹の名前……を、繋げている、そうだ」


 名前が長いのもシリアスな理由かよ! 

 それを先に言ってください! 

 あと、レキはどうしてその名前だけ流暢に喋ってるの? いつものゆっくりボイスは? 


「ユールセレーゼ……が、狼の名前と、言っていた……」


『えっ、しんど』


 コメントが流れていく。それな! それに賛成だ! 超同意! 

 リリィのときもそうだったけれど、ユールセレーゼ達を抱きしめてもっふもっふ、ふわふわ、ぎゅっぎゅってしたい。


 よく頑張ったね……赤ん坊に生きてもらうために命を削っても頑張ったんだね……もう大丈夫、君の想いはしっかり叶えるよ……って! 言ってあげたい! 


 ちょっとキザな台詞だから恥ずかしい部分はあるけれども、格好つけずに目を見てこれを言ってあげたい! あと本音を言うと、こういうアニメみたいな台詞一度は言いたいと思ってたの! 


 もちろん全部本音だ。でも、これ言って演技っぽく捉えられるのはちょっと嫌。真剣に思ってます。偽善じゃないもの。そもそも本気で思ってなかったら、こんな面倒くさそうなストーリー真面目にやりませんし! 


「ぐるるる……?」


 狼が怪訝そうにこちらを見ている。

 うん、ごめんね。表情がくるくる変わって変でしょう? ちょっと待ってね、落ち着くから。


 ……ごほん。


「わ、分かりました。ふざけたようなことを言ってしまい、ごめんなさい。えっと、ユールセレーゼ・ド・リゼロッド・レオナード・ヒュオール……」


 全部覚えきれなくて、途中途中で詰まってしまった。しかし私が詰まりそうになるたび、コメントで名前を復唱するように流してくれているかたがいたからなんとかなったのである。神かな? おかげさまでカンペのように使い、名前を全て言い切ることができた。


 さて、私がこの子達にできることと言えば、ね? 


「あなたの、その悲しみの心が少しでも安らかになるよう、ひとつ舞を納めさせていただきます。えーっと、アカツキ」

「クァー」


 舞を踊るのに、一匹だけ一緒に参加してもらおうとアカツキを指定する。

 カラスの神獣である彼と共に、この子達の心を癒すことが重要だと思われるからだ。カラスというキーワードが何回も出ているからこその選択である。


 なお、候補としてはオボロもありだった。相手が狼だから、同族のよしみということで。

 ただ、この場合は多分アカツキのほうがいいだろう。


「シズク、ちょっと待っていてくださいね」

「しゃるぅ」


 首に巻いていたシズクをレキの隣におろし、ユールセレーゼの前に歩み寄る。

 前後左右、充分な広さを確認してから、腕に留めたアカツキに作戦を(ささや)いた。


 やるのは神前舞踊シリーズだが、はじめての試みとしてアカツキとの連携で成り立つ舞にしてみようと思ったのだ。なので、まずはアカツキにどんな風にするかをひっそりと告げ、ぶっつけ本番に入る。



 腕を前に出して、アカツキを留まらせたそのままにまずはお辞儀を。


 次に腕を上にぽんっと跳ねさせるようにしてアカツキを飛び立たせ、自身は後ろを向いて、ゆっくりと歩いていく。


 歩きながら帯に差してある二つの扇子を手に取り、再びユールセレーゼのほうへ振り返る動作と共に横に向けて腕を振り、扇子を両方共にバッと開いてくるりと回った。

 開いた途端、緋色の扇子から火の粉が溢れ出し、純白の扇子からは雪の結晶がキラキラと散っていく。


 頭上に旋回するアカツキが羽ばたくたびに、太陽の光を纏った火の粉が私の周りにふわりふわりと散っていき、その場の温度が上昇する。


 ニワトリカラーの紅白の羽織りが、上昇する温度によってじわじわと真っ赤な色に変化し……完全に羽織りの色が変わる頃には、その場にいる全ての獣達から私達に向けて、食い入るように見つめる視線を感じた。


 横回転から頭上に扇子を挙げ、そのまま地面に着くほど振り下ろす。

 さて、ここからだ。


 すうっと息を吐く。


 ――神前舞踊。


二重(ふたえ)暁光(ぎょうこう)――白梅襲(はくばいかさね)


 地面に着くほどまでに降ろした二対の扇子を円を描くように持ち上げていき、腕の回転を用いて素早くその場で縦回転の火の輪っかを作り上げる。同時に頭上では、アカツキが同じく一回り小さな火の輪を作っており、大きな火の輪と、小さな火の輪が二重の太陽となってその場を明るく照らす。


 遅れてはらはらとその場に散るのは白梅に見立てた氷の結晶。

 熱で溶けながらも、二重の太陽の周りを氷の花びらが舞い散っていく。


 最後に手のひらを返して緋色の扇子を目の前に差し出せば、その上に三本足の鴉が静かに舞い降りた。


 アカツキは翼を胸の前にかざしてお辞儀を。

 左手に持った扇子をさっと閉じて、私はそのまま羽織りの裾をつまんで広げ、カーテシーの動作でお辞儀を。


 ピタリと動きを止めてから顔をあげると、狼の瞳はすっかりと綺麗なグリーンの瞳に変化していた。


 浄化、大成功だ! 

 それと共に、コメント欄では拍手を表す「8888」が乱舞する。

 それを見て私は後ろ手に、ちょっと無理な体勢でググっとガッツポーズをするのだった。

ユールセレーゼの名前については、何人かの人が大正解なのでした!

なお、「ド・」の部分はあくまで本体のユールセレーゼとそれ以降の三匹では別という意味でつけられたおまけです。


神前舞踊シリーズも増えて参りましたね。

それと同時に字で見てちゃんと情景浮かぶかな? 大丈夫かな? という疑問もありつつ、精一杯描写していたりします。絵で見たいっ!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 過去の掲示板回で『舞姫とか選ぶ人いたの?』というような言葉が出るようなマイナー職ですが、それ以外の職でも浄化する方法はちゃんと準備されているのですか?
[一言] やるやんエレヤン。 前回のシリアスクラッシャーぶりが嘘みたい ドロッドロの重くて暗くて辛いストーリーを考えて採用する運営は1度ぶん殴られてください。エレヤンに(他力本願)
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