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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
特殊依頼『果ての地で忠義を捧ぐ』

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マヨヒガ探索実況!はじめますよ〜!

「はい、撮れてますよね? こんばんは〜。さてさて、ケイカのブリーダーチャンネルの配信を始めますね」


 辺りは相変わらず朝靄に包まれている。

 周囲の木々を順に見渡し、それから正面にあるお札みたいなものがベタベタと貼られた大きな門と、その奥に見える大きなお屋敷を捉えるようにして視線を動かす。


 私の視線とカメラがほとんど連動しているようなものなので、それで配信を見ている人にもこの状況がよく分かるということだね。


 カメラには私の視界をそのまま映し出す一人称タイプと、私の姿をゲームのキャラのように映し出す三人称の二タイプあり、どちらも見ている方向をカメラが追うことになっているのは変わらない。


 ただ私の姿が見えるか見えないかの違いだけだ。まあ、当たり前だけれども配信なので私の姿は見えているはずだ。


「さて、今回のメンバーはアカツキ……は固定ですね。オボロにシズク。それとついこの間仲間になった、種族キッチョウのレキお爺さんです。はい、ご挨拶」

「おはつに……お目にかかる……のう、ケイカ……どこを向けば、よいのだ? それより……これは、なにを……しているのだ」

「あ、視点はどこでもいいですよ。えっとですね、今私達の姿を遠くにいる人々が見て楽しんでいるんですよ? 同じく共存者の皆さんはそうやって情報を得たりできるんです」

「ほう……面妖な」


 アカツキは翼を胸の前にかざしてお辞儀を。オボロはお座りをして「くうん」と鳴き、シズクは頭を下げる。慣れたものだ。

 視界の端に流れる『乙』コメントを拾いつつ、ある程度人数が集まるまで待つことにする。


『キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!?』

『おお、例のやつ』

『アカツキおめでとう!!!』

『おっつおつー』

『アカツキ神獣化おめでとー!!!』

『お爺ちゃんとの会話で和む』

『飛んできました!』

『キッチョウ可愛いなwww』


 レキが喋るのを見てこの反応するのは煽りかな? 私の真似かなにかかな? それとも悪意はなく? 前に無様を晒した私をからかってるわけじゃないよね? 


「キッチョウじゃなくてレキって呼んでくださいね。あ、そうですそうです。少し前に動画をあげましたが、アカツキがいよいよ神獣『八咫烏(やたがらす)』に進化できたんです! 我ながら綺麗な動画ですので、ぜひ見ていただけたらと思います!」


 めちゃくちゃ長い動画なのでちゃんと編集してアップしてあるぞ! 

 ちなみに編集していない無編集バージョンとかいう拷問みたいな動画もいくつかに分けて投稿している。アップするまでのエンコード時間が恐ろしく長いこと……何回途中でやめようかと思ったことか。


 一番恐ろしいのは、そっちの再生もしっかりされてるという事実なんだけどね。視聴者の皆さんは正気か? 何時間あると思ってんだ。


『キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!? (煽り)』


「おいこら待ちなさい。悪意ありか? ありなんですか? 私の無様な姿は今すぐ忘れろください」


『エレヤン』

『久しぶりのエレヤン』

『口調乱れてますぜ姐さん』

『無事なようでなによりです。いきなり連絡が途切れたので心配しました』


「ヤンキーじゃないですー。いい加減にしてくださいねー?」


 って、この最後のやつストッキンさんでは? 


「あれ、もしやストッキンさん?」


『どこの女よ!』

『いや男の名前だろ』

『プレイヤーネームだけで性別判断できなくね???』

『あれでしょ? 確か贔屓にしてる生産職で、ファンクラブ会長の人』

『あーあの変態か』

『変態』

『変態』

『狂人でしょ?』

『ケイカちゃん、いい加減にあの野郎から逃げたほうがいいんじゃないの』

『匂わせやめてください> <』


 ああ、うん。まあ特定のプレイヤーと仲良いとそう言われるよね。利用し合ってるだけなんだけどなあ……あっちは執着とか厄介なもの持ってそうだけど。


「匂わせじゃないです。あの変態はしっかり変態だと思っていますので。でもこの衣装もストッキンさん製作ですからねぇ。衣装センスはいい変態なんです。変態ですけれども」


『変態連呼シスギィ!』

『いやー、光栄ですね。ということで今どこにいるんですか?』


 あ、そうだった。ええと……こっちの時間だと朝方だけれど、既に視聴人数は始めたばかりなのに千をゆうに超えている。人が少ないはずの時間でこれならそれなりだろう。お昼とかなら万行くんだけどなあ。


「ええと、まず経緯を話しますね。私、今ひとつ依頼を受けていまして……皆さんも噂だけなら聞いたことがあるかもしれませんが、ヒノモトの街で『赤ん坊を連れた魔獣』の捜索を頼まれたんです」


 反応は……うん、上々。知っている人もいるみたいで、コメントで説明してくれている人もいる。有能オブ有能。


「有能な人ありがとうございますー。で、その捜索に山の中を探索してたんですけど……その」


 言い淀んでから視線が泳ぎ、コメントで指摘される。あと突入早くしろの言葉も。


「少々……迷いまして。あの、戻ろうと思えば戻れたんですよ? ですが意固地になっちゃいましてですね……迷いに迷っているうちに夜が明けてしまい……気がついたら朝靄に包まれたこのマップにいました。マップの名前は『マヨヒガ』です。つまり、そういうことですよね」


『迷わないと辿り着けない場所的な?』

『まーた変な条件の場所に突入してる〜』

『迷い家かあ……中のものをひとつだけ持ち帰ると幸せになれるらしいよ』

『マヨヒガの中にあるものを食べるのは厳禁のはず!』


 おお、寄せられるわ寄せられるわ情報の数々。助かるなあ。


『赤子を連れた魔獣の話は何回か聞いたことあるけど、依頼にまで発展したのはこれが初めてかも? 配信してくれて助かるわ』

『なるほど、普通の条件では行けない場所に迷い込んだんですね。ロウが帰ってきてしまったので何事かと思いました』


「ストーカーやめてください」


 反射的に言ってしまってからハッとした。

 あ、これ、下手したらストッキンさん。本気で通報されてしまうのでは。


『やってると思った笑』

『会長ェ……』

『自重してください! でもどうせ撮るなら録画したものをスレに投下してくれたっていいじゃないですか!』

『おい本音』


 ストッキンさんはさすがだなあ……ため息しか出ないや。

 同じファンクラブの人からもこの扱いって……。


「と、いうわけで。全然見つからなかった魔獣がここにいるんじゃないかと思い、ついでに初報告のマップだと思ったので配信を始めたしだいです! それでは探索を始めましょう!」


 説明を終えて目の前の門を映し出す。札が貼られているが、解読はできそうもない。字がミミズみたいにぐにゃぐにゃで読めないのだ。一応マジマジと見て配信を見ている人がなにか分からないかと情報を渡してから手をかける。


「はい、ご開帳ー!」


 鬼が出るか蛇が出るか……ワクワクしながら扉を開く。お札はあったものの、案外あっさりと開くことができた。


 えーっと、ホラーじゃありませんように!

話の展開を朝探索→夜探索からの夜明けに変えたせいで少し矛盾が生じておりました。

レキが取得し、使用してもらっているスキルを「新月の幻惑」に変更し、加筆修正を行いました。

ご了承くださいませ! ガバガバでごめんなさい!!!

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