うるうるおめめに勝てるわけないでしょう!
知ってる知ってる。こういう依頼をしてくる男キャラってさあ、悪役ってことが多いんだよねえ。
「ところで、あなたのお名前は?」
「……おお、そうでしたな。俺はハインツと言います。以後お見知り置きを」
にっこりと笑みを浮かべて右手が差し出される。握手しようってことだよね。応じてこちらも笑顔を見せる。
でもねー、いくらイケメン風でも、まったく嬉しくないのが困る。
いや、偏見なのは分かってるんだけどね? 胡散臭いじゃない、こんなの。
「それでは、お写真いただいておきます。探して赤ん坊を取り戻せばいいのですよね?」
「ええ」
「受け取り場所はどこにいたしましょう?」
「連絡先を交換しましょう。連絡していただけたらお教えします」
「魔獣の目撃場所は?」
「貴女が先日儀式を行ったという……あの山です」
「……分かりました」
なぜ魔獣が赤ん坊を連れているのか、なぜその赤ん坊を取り戻そうとしているのか。その辺りの事情はあえて訊かなかった。訊いたらはぐらかされるどころか、この依頼自体がなかったことになりそうな予感がしたから。
もしそうなってしまえば、その魔獣と赤ん坊の依頼は別のところに流れることになる。私が受けるならちゃんと調査してあの男性……ハインツの思惑を探りながら依頼を進めるようにできるけれども、特に『不殺縛り』をしていない人があの依頼を受けたら問答無用で魔獣が殺されてしまいかねない。
それはダメだ。
それにしても、場所があの山か……神聖な山だって話だったはずだけれど。なにかあるのか。また、登ることになるなんてなあ。
連絡先を交換し、笑顔で手を振って別れる。
そもそも受け取り場所をこのギルドにしましょうってならない時点で怪しい。
「アカツキ、どう思う?」
「…………」
さっきの男の後ろ姿を睨みつけながら、アカツキは首を振った。うん、神獣になった彼がこれだと、実は見た目通り爽やかでいい人って路線はなさそうだなあ……ユウマ辺りがいれば『カルマ』が見られるんだけど。
アカツキにもカルマが見られるスキルをつけるべきかな。もしくはレキあたりに。レキは話ができるから、意思疎通が楽だし、他の子の翻訳もしてくれるはず。話が遅いのが……唯一の難点だけども。
「山に行く前にメンバーを入れ替えましょう。なんとなくきな臭い依頼ですし、魔獣にも話が聞きたい。私が分かるのはまだ魔獣の感情までですからね」
そう言った途端、ジンがショックを受けたような顔をした。
いや、言葉が分からなくてもこれの意味はさすがに分かるぞ? 自分を置いていくのかって顔だ。
アカツキは神獣になってるし、私はパーティ固定にしているので選出外になることはない。オボロは相手の魔獣が狼だって言っていたから、相手を安心させるために同族がいたほうがいいかなという判断で残ってもらうし。
シズクは、もし万が一魔獣が怪我をしたりとか、人が怪我をすることになったときに回復してもらう要員として必要。
そして、翻訳としても、長年人間と接してきて裏表を読み取ることが出来そうなレキが必要。
パーティに入れられる聖獣が四匹までなのでジンはお留守番になってしまう。
「みゃ……」
うるうると瞳を濡らしてショックを受けました! と言わんばかりにお座りするジン。
「うっ」
胸を抑えて罪悪感と戦いながら私はその場でしゃがむ。
「にゃ……」
「る、ルナテミスさんに……お留守番する猫が寂しがらない……方法、訊きましょう……」
「みゅんっ……」
「えっと、か、かつおぶしを! かつおぶしを用意しておきます。帰ったら食べましょうね」
「ふみゅ……」
「お、終わったらジンのために一日使います! 他の子にはお留守番してもらって、君と日がな一日お散歩とレベル上げ! ど、どうですか?」
「にゃん!」
うるうるおめめに見事に負けた。
アカツキが「俺も置いてくの?」とこちらを呆れたように見ているが、約束してしまったものは仕方がない。この依頼が終わったらジンのためだけに一日を使いましょう。
なんなら、そういうときのほうが進化したりするかもしれないし……ね。
「よ、よかった……」
オボロはしゅんとしてるし、シズクも呆れた目をしているが、後でみんなに埋め合わせを用意しておかないとね。うむむ、多頭飼いって大変なんだなあ。でも、やりがいはあるよね。慕われてるのは嬉しいし。
「にゃーん!」
そうして、ようやくジンの説得に成功した私達は、パーティの入れ替えのために緋羽屋敷へと戻るのだった。
依頼に対しては、どこか疑心暗鬼になりすぎな気もするが……やって損は、ないものね。
アニメ見てたり名探偵ピカチュウを見ても思いますが、モンスターとかを何匹も育てるのって実際だと絶対大変ですよね。
リアルでも多頭飼いは大変ですし。
個人的にポケモンのVRをやってみたいです。相棒は一番好きなレントラーで。




