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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
神獣進化!『山頂に暁光が差す日』

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神獣進化! 山頂に舞い降りる暁光

 午前5時56分。


 あと少し。もう少し。

 霊力を回復するアイテムが残りひとつになった。

 体力回復アイテムはまだまだ残ってるのにね! それだけ攻撃の相殺にスキルを使っているということだ。純粋な回避力ではなく、相殺力のほうがみんな高いからね。


 細かく、波のように発生する襲撃以外は特にイベントが起きるわけでもなく、無事にこの時間を迎えている。このゲームにおいて、固定で午前6時程度が日の出のはずだ。


 本当は季節によって違うのが普通だが、ゲーム内時間における日の出、日の入りの変動は特にない。そちらにリソースを割くよりもグラフィックに力を入れているんだと思う。


「見えて、来ました!」


 少しだけ東の空が白んできて、だんだんと日の出が近づいていることの実感が湧く。


 ああ、これが終わったら美味しいものを食べよう。

 ゲームだから精神的な疲れ以外はないはずだが、足がパンパンになっている錯覚まで起こしている。温泉とかあったら、ゆっくり入って休みたい。


 この街に温泉あるかな? 湯浴み用の装備を持っていないと入れないらしいが、そういうのは売ってるだろうから手ぶらで向かってもいい。


 ゲーム内のセクハラ問題とかは、温泉自体がボスフィールドとかの仕様と同じく個別に部屋ができる状態になるので問題はない。裸にはどうあってもならないので動画に残すこともできない。際どいのはせいぜい水着くらいだったかな……。


 ヒノモトはモデルが日本なのだろうし、温泉くらいあるだろう。


 マニュアルに切り替えて、もはや慣れきった手順で日輪の舞を捧げ続ける。

 下のオボロ達は終わりが近づいて気が緩み始めているようで、たまに攻撃に被弾しそうになっているが。


 その度にアカツキが火の粉を飛ばして助けたり、怪我をしたら私がアイテムを投擲(とうてき)して助けたりしているのだが……人間でも集中し続けるのが難しいんだ。あの子達は余計辛いだろう。


 日が登っていく。

 山の頂から見える景色が、夜の黒から明るい色彩のある世界へ切り替わっていく。白んだ空の下から顔を出し、目を焼いてしまいそうなほど光の強い太陽。


 日ノ見(やぐら)とはよく言ったものだ。

 この櫓の上は、最高に太陽が美しく見える! 


 周囲に咲いている花が柔らかな光を受けて、花についた朝露がキラキラと輝く様子は、恐らく現実でも山登りをして朝日を迎えないと見られない、素敵な光景だ。


 んー、これは……リアルでも山登り、してみたくなっちゃうなあ。


 さわりと柔らかな風が私の赤毛を揺らし、胸の内側がすっとする。

 舞の最後の手順を踏みながら、きっとこれが最後なのだろうという予感がした。


 止まり木で沈黙するアカツキは胸を張ってその翼を広げる。

 朝日を浴び続け、神様へと捧げる舞を見続け、今こそ彼の進化のときが来た。




 ――――――


 神獣進化への条件達成を確認しました。

 個体名『アカツキ』は聖獣から神獣へ進化しようとしています。

 このまま許可をしますか? 


 ――――――




 当たり前だ! 


「さあ、アカツキ。格好いい姿を見せてください」


 舞の手順が終了して、一礼する。

 朝日は既に、アカツキの真後ろを飾るように登ってきているところだった。


 背後からの太陽光に晒されながら、アカツキはその全身に光を取り込むように翼を広げ、大きく、長く、鳴き声をあげる。


 そうして光に包み込まれ、その光が弾け飛んだとき……アカツキの姿はひとまわり小さくなっていた。


「クァーッ!」


 相変わらずアルビノのように白い身体。

 翼の先だけ緋色で、太陽を模したトサカのようなものが額にあり、尾はカラスを模しているものの、カラスよりもっと長く。


 ――そして、足が三本の(カラス)になっていた。


 種族名は……神獣、八咫烏(やたがらす)。予想通りである。


 それにしても神々しいな……なんだろう、太陽の光だけでなく、アカツキ自身もほのかに光を纏っている気がする。

 ああ、確か……朝日のことを、暁光ぎょうこう……とも、言うんだっけ。(あかつき)の光。ぴったり、だなあ。そんな風に思ったら、なんだか感動で泣きそうになってきた。




――――――


ワールド初の共存者による『神獣進化』が確認されました。

該当者に称号『神獣への初到達者』が与えられます。


――――――




称号まで!

……と、それはともかく。今はこの余韻に浸っていたいから、称号になにか効果が付くかとか確認するのは後回しだ。

「クァ」

「ソル・クローラでおっきくなって、また小さくなりましたね」

「くー」


 アカツキが肩にとまる。

 クチバシの下にちょちょいと指を添えれば、気持ちよさそうに目を細めた。


「おめでとう……アカツキ」


 おめでとう。私の、一番のパートナー。

 覚悟していて。神獣になってキラキラしたアカツキなんて……今日はオボロ達におめでとうコールで揉みくちゃにされて、美味しいものをいっぱい食べればいいんだから! 


 こうして、無事に進化の儀式を終えた私達は、櫓から降りたあとしばらくみんなで、アカツキをぎゅうぎゅうに抱きしめたのだった。

章タイトルと、この話のタイトル名が違うのは仕様。

二つタイトルをつけたかったのです……。タイトル回収も好きなんですけどね。

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― 新着の感想 ―
[一言] アカツキおめでとうございます!
[良い点] アカツキさん、進化おめでとう! これからもキレのあるツッコミを頑張ってね! [気になる点] ネコは濡れるのがキライなので、お風呂嫌いが普通ですけど…オボロちゃんは平気なのですか?氷タイプだ…
[一言] 進化した瞬間をぜひ写真(スクショ)に残したいね
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