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【漫画単行本4巻発売中】神獣郷オンライン!〜『器用値極振り』で聖獣と共に『不殺』で優しい魅せプレイを『配信』します!〜  作者: 時雨オオカミ
神獣進化!『山頂に暁光が差す日』

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約束、ですよ?

 視線の先には一羽のカラス。

 その後ろを必死について歩きながら目を光らせるのが私達の仕事だ。


 満月の月夜の下、ある程度明るい山の中を歩く。幸いなのは道が舗装されていて、歩きやすいことくらいだろうか。カラス自体が黒いのでたまに見失いそうになるけども、そこは首に巻かれたシズクが場所を示してくれるので大丈夫。


 彼女は温度でどこにいるのかが分かるからね。それに、魔獣が潜んでいたりしても彼女なら真っ先に発見できるし、オボロも匂いで特定してすぐさま対処に走ってくれる。ジンはときおりピシッと音を立てながら電流を魔獣に向けて放っているみたい。


 今のところ、頂上を急いで目指さなければならないから麻痺させたり気絶させて放置するしかないのだけれども、一応その後同じ魔獣に襲撃されることはない。それでいいということだろう。


 護衛クエストではあるが、私達は不殺プレイをしているから更に難易度が高い。こうして余裕そうに麻痺させたり気絶させたりしているものの、緊張はしている。ひやっひやだ。だって容赦なくカラスを殺しに来るんだもの。


 しかしなぜ魔獣がこんなにも凶暴化しているのか……と考えると不思議になる。


 ただのカラスに対して負の感情を向けるものなのだろうか? 近くに私という人間もいるのに。それも、普通のフィールドにいる魔獣よりもよほど苛烈な想いをだ。


 ゲームのクエストだからといえばそれまでだけど、このゲームってその辺の「理由」がしっかりしているイメージがあるからなあ……なにかのフラグ? 


 カラスに憎しみやら悲しみやら、なんらかのマイナスの感情を持つようなことがあった……? うーん、分からない。ヒントもないし、今のところは引っかかりを覚えるだけだ。このことを覚えておいて損はないだろうし、記憶に留めておくことにする。


 それに、なんとなく闇の深い案件な気もするし……。終わったら日の巫女さんにでも理由を尋ねてみよう。


「暁の灯火」


 飛びかかってくる影に向かって扇子を振れば、火の粉が散って悲鳴と共にバランスを崩した魔獣が墜落する。それから、スカウトの効果を込め、頭を撫でるようにして前に進んだ。さっきの魔獣はもう消えているが、手の中にはスカウトが成功した証だけが残る。


 ……と言ってもみんな上限までのステータス振りは終えちゃってるからなあ。のちのちのために残しておくしかない。


「気分は射的系の乗り物ゲームでしょうか」


 あるよね。乗り物に乗って、左右から出てくる的に向かってレーザー銃みたいなので打つアトラクション。あんな感じだ。ただしフルスコアしないと多分最初からやり直し。しかも翌日にならないとチャレンジすらできなさそうだ。シビアだなあ。


「鳥系が厄介ですね……」

「ケェーッ!」


 アカツキが頭上で空からやってくる魔獣を迎撃し、私達は地上の魔獣だけに集中しているわけだけれども、なぜか狙われるのはカラスだけなので助けるのが間に合わなそうになると、本当に冷や汗が出る。これを最初からまたやるのは勘弁して……! 


 とまあ、アイテムも適度に使いつつ二時間かけてようやく頂上に辿り着いた。気を緩めることすらできない、緊張しっぱなしで失敗もできない。あんな時間はもう二度と味わいたくないよ……体感的にもっと時間が経っているように思える。


 集中力だってそう長く続くものじゃないのに……ただでさえ私は我慢とか細かいことはあまり得意じゃないのにさ。しかも、これからまたひとつのことに集中してサポートし続けないといけないんでしょ? 今から既に憂鬱なんだけど。


 ただ――頂上の景色をしっかりと見たそのときだけはそれも忘れられた。


「綺麗……」


 一面の桃の花。この山は桃が多いみたいで、(やぐら)の周りにも大きな桃の木がある。櫓の上に登ればちょうど桃の花と月を見ながら良いお月見ができそうだった。まあ、今からそんなゆったりとした時間を過ごすことはできないわけだが。


「みんな、アイテムは各自使えるように設定しました。危なくなったら惜しげなく使いなさい。いいですね? 絶対に、全員でアカツキを祝福するんですから」


 それぞれの鳴き声で返事がされる。


「……約束、ですよ?」


 微笑んでみんなの体を撫でて、そして気合いを入れるように頬をパシンと叩く。


 アカツキに見守られながら日ノ見櫓の梯子を登れば、頂上から麓の街が一望できた。ああ――綺麗だ、とても。


「アカツキ、私が舞い始めたら明かりをつけて」

「クウ」


 試練の始まり始まり。一応事前に強化の舞や蝴蝶の幻を使用してあるから、しばらくは私自身が襲撃されても一撃で死ぬとかはなく、扇子で魔獣の攻撃を防げるはずだ。たとえ一撃必殺を持っている魔獣がいたとしても、蝴蝶の幻を使っているので一回は必ず防げる。


 櫓の上、四方に明かりをつけるための篝火台がある。


 ――日輪の舞。


 私が最初の動きを始めると同時に、アカツキが翼を広げて火の粉を篝火台に灯す。そうして、私達の長い長い夜が始まった。


>>舞ったり見ている

>>まったり見ている


前回ラストのほうのダブルミーニング。まさか気づくかたがいらっしゃるとは思っていませんでした……!ここでお礼を言わせていただきます!

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱりそうだったんですね( ̄▽ ̄)ニヤリッ
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