時代がごっちゃなヒノモトという街
さて、あれからゲーム内時間を一日過ごし、ストッキンさんに更新してもらった装備を渡してもらって身につけた。見た目は前と変わらない。肩の辺りと羽織りの袖の先が緋色のニワトリカラーである。
これが熱を伴うスキルを使うことによって真っ赤に変色するらしい。そして、常温か、雪属性スキルで温度を下げるとまたこの色に戻る……と。
試運転はまだなんだよねえ、楽しみ楽しみ!
にへらーとだらしない笑みが出るのを扇子で隠しつつ、私は再び『ヒノモト』の街に立っていた。
「わあ、見てくださいよアカツキ! アルカンシエルにもありましたけれど、この街は全部和風のお屋敷ですよ! 素敵……和風最高……」
もちろんヒノモトは日本がモデルなので和風の街である。大きなお屋敷に遠くには天守閣。江戸時代の集合住宅、長屋みたいになっている場所、それにモダンな雰囲気の漂う大正ロマンみたいな和洋折衷のお店。
平安時代、江戸時代、大正時代。この三つの要素がところどころに散見される。完全に別々の時代の代物なんだけど、不思議と全部の要素があっても不快じゃない融合の仕方をしている。
たとえるなら……遊園地にある日本風エリア……みたいな。そういうどこかおかしなチグハグさがある場所だ。海外の想像する日本とか、こういう感じなのかなあ。制作は日本のゲーム会社のはずだが。
ゲームだし、現代とはまったく違う歴史のある世界観なのだし、こうやって発展してきた……という設定なんだと思う。面白いなあ……あ、枝垂れ桜に柳だ! 植物図鑑に登録しておこう!
テンションを上げながら、このゲームでまだ見たことのなかった植物達に近づき、観察。植物図鑑に登録した。戦闘やモフモフを愛でるだけでなく、こうした収集要素も楽しめる神獣郷にはなかなか飽きがこない。
コレクト要素ってハマる人は大ハマりするからね。
あと、戦えない人とかは検証だけでなくて、図鑑を埋めるための情報を売っていたりなんだりもする。
世界観を見て回るだけで一日観光できちゃいそう……なんだけど、我慢我慢。
伝承にあった通りにこの街と、街に一番近い山が進化イベントに重要な拠点のはずだ。まずはなにか町人から依頼がないか、噂話を知らないか……ということを聞き出して挑むべきだろうね。
「あの、すみませーん! ちょっと、よろしいですか?」
「はい、なんでしょう?」
こうして、私は何十人にも話しかけてイベントの手がかりを探すことにしたのだった。いやあ、これ、ソロプレイヤーにはきついねすごく。コミュ障だったら詰んでた。
多分町人に聞く以外でもなにかキーがあったり、調べることはできるんだろうけれども、このほうが手っ取り早い。
現に、皆口を揃えて言うのだ。曰く「日巫女さまのところを訪ねなさい」……と。
目指すのは日の巫女が住まうところ。この街一番のお屋敷『日輪屋敷』である。
めっちゃくちゃ『太陽』を推してくる。やっぱり太陽関係の進化はこの街で正解のようだ。
「それじゃあ、みんな行きましょうか」
一晩中舞を続けるという前知識の時点で少し大変そうなのだけれど、できればそれ以外になにもない簡単な儀式でありますように……。祈りながら歩いて行った。
*人はそれをフラグと言う。
#神獣郷こっそり裏話(Twitterで書いたやつ)
「ケイカや……桃、だ」
「ありがとうございます、レキ!」
「ケイカ……葡萄を、やろう」
「ありがとう!」
「ほれ……今日は、柿、だ……」
「ありがとうレキ!」
「林檎……だ。パイを、作って、おくれ」
「分かりました。いつもありがとう!」
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