エピローグ
君は知らない。
「……あなた、だあれ?」
血と闇の、赤と黒しかない世界に突然現れた、真っ白な君。
出会った瞬間に心奪われた。
あの時からずっと、君の幸せだけを祈ってきた。
君は私の、生きる理由そのものだった。
「いろいろ頑張っていらっしゃるようでしたが。……正直、ほとんど効果はなかったですね」
「そ、そんなこと、わかってるわよ!今更言われなくたって!」
本音を漏らせば、苛々と涙声で怒鳴られる。
いや、そういう意味ではなかったのだけれど。
ノアを惚れさせようと彼女のとった言動に、ほとんど意味はなかった。
何故なら。
(とっくに、堕ちてますからね)
君と出会った、その瞬間に。
君さえずっと笑っていれば、私の人生は、それだけで、良かったのに。
「ノア!」
君が振り返って、満面の笑みで、私を呼ぶ。
たったそれだけのことが、私にとって、どれほどの救いか。
君の唇が私の名を紡ぐたび感じる、その泣きたくなるほどの幸福を。
君は一生、知ることはない。
***END***
これで本編は終了です。お読みいただきありがとうございました。
次からは彼らのその後を描いた番外編になります。
よろしければお付き合いよろしくお願いいたします。




