300話─全ての想いを、一つに
正真正銘、最後の決戦が始まった。両軍が激突し、そこかしこで乱戦が繰り広げられる。
「神の力を侮るなよ! 殲滅してくれる!」
「さあ、大魔公たちよ! その力を存分に振るい、敵を滅するのです!」
バリアス率いる神の軍勢と、フェルメア率いる大魔公たちが堕天神やヴァスラ教団を駆逐していく。そんな中、大物同士の戦いも繰り広げられる。
「三度よみがえったか、ヴァスラサック。あの日のように、また引導を渡してやる!」
「ギアトルク……思えば、貴様に敗れたのがわらわの転落の始まりだった。七百年前の雪辱、晴らしてくれるわ!」
戦場の一角で、邪神ヴァスラサックとその子、フリードがぶつかり合う。時を超えたリベンジマッチが、幕を開ける。
そんな中、アゼル一行やリオ、グランザームたちも各々の相手を見つけ交戦する。世界と生死を超えた、夢の共闘の始まりだ。
「あはっ、かわいーボーヤはっけーん。おねーさんが抱き締めてあげよっか?」
「あ゛? 貴様、人の旦那を誘惑しようなどといい度胸だな。そこに直れ、私たち全員でシバき倒してやる!」
「やってみなよ、このデオノーラ様を倒せるならね!」
「むー、こいつあたしとキャラ被ってる……むかつく! リリン、手加減しないでボコしちゃお!」
「ちょ、ま、全員はズル……ああぁーーー!!!」
「みんな、せめて遺骨くらいは残してあげてくださいね?」
戦闘中にも関わらず、アゼルに目を付け誘惑するデオノーラ。が、そんな不届きな行為を彼の妻たちが許すわけもない。
一触即発を飛び越えて、リリンたちが総出でデオノーラをリンチする。旦那に手を出そうとする相手に、容赦はないのだ。
一方、リオはグランザームと組んでラディウス、メルーレのコンビと戦っていた。自身の戦法を真似するメルーレに、リオはご立腹のようだ。
「もー、僕の真似なんてして許せない! その戦い方はね、僕の専売特許なんだよ!」
「知らないわ、そんなこと。あなたを倒して、私の技術の方が上だということを証明してあげる!」
「気を抜くな、メルーレ。グランザームもいる、注意を怠るな!」
「ふむ、そちらの青鎧の方は中々に強そうだ。よかろう、余が直々に相手をしてやる。感謝するがいい!」
リオとグランザームは、息の合った抜群のコンビネーションを発揮する。千年ぶりの共闘に、どちらも張り切っているのだ。
そんな中、最後の援軍……大艦隊を引き連れた魔神たちが到着する。上空から攻撃を仕掛けようとしていた堕天神や異神たちを、砲撃の嵐が襲う。
「一斉射をくれてやれ! 地上は撃つなよ、仲間を巻き込むからな!」
「ハッ、お任せを!」
「それじゃあ、私たちも地上に降りようか。リオくんと一緒に大暴れだ!」
「おう!」
飛行戦艦から魔神たちが降り立ち、地上にいる仲間たちに加勢する。が、次の瞬間。地上から紫色のレーザーが発射され、空中戦艦の一隻を大破させた。
アブソリュート・ジェムの力を全開にしたフィニスが、本気の攻勢を仕掛けてきたのだ。対するは、コリンたち星騎士。宿敵を止めるため、力を合わせる。
「目障りな戦艦め、全て破壊して……むっ!」
「させないヨ! 白羊柔拳、帯縛り!」
「食らえ、フィニス! スケイルネイル・タイフーン!」
「アタイも行くぜ! フラムエンドスピア!」
さらなる攻撃を行おうとするフィニスの左手に、フェンルーが放った帯が絡み付く。そこにディルスとアシュリーが突撃し、連続攻撃を見舞う。
「舐めるな……フンッ!」
「わわあぁ~!?」
「フェンルー、今助ける!」
「させぬわ! シールドスローイング!」
「愚かな、私の前で金属を扱おうとはな! 自らの盾を食らうがいい!」
フィニスは右手で帯を掴み、フェンルーごとディルスたちの方に投げる。救出のためマリスが走ると、今度は飛刃の盾を飛ばす。
が、ラインハルトによる磁力操作を受けて妨害は失敗、無事フェンルーは救助された。……と思われたが、フィニスは再び時を巻き戻した。
「なるほど。なら、非金属の素材で盾を呼び出せばいいだけのこと! リバースタイム……からの! シールドスローイング!」
「なっ……ぐあっ!」
「うあっ!」
「いてぇっ!」
選択を変えたことで、ラインハルトの磁力操作から逃れた盾は星騎士たちを打ち倒していく。マリアベルに手当てされながら、コリンはその様子を見ていた。
「やはり、奴は強い。真正面から戦っても、ジェムがある限りは勝てぬか」
「じゃあ、どうやって戦うの?」
「一つだけ、方法はある。奴が身に付けているガントレットを破壊し、ジェムの制御を不能にしてしまえばよい。いくら奴でも、暴走したジェムの力には耐えられぬはず。自滅したところを叩くしかない!」
「しかし、ジェムが暴走すればタダでは……ああ、なるほど。この消滅した世界であれば、何が起きても外の世界に影響は無いということですね?」
「左様じゃ、マリアベル。ここはすでに滅びた世界。ジェムが暴走しようと、他の世界に影響は出ぬ」
コリンとコーディ、マリアベルは最後の作戦を立てる。話し合いを終えた後、コリンは大声で叫びをあげた。
「聞け、星騎士たちよ! フィニスを拘束し、動きを封じるのじゃ! わしとコーディで奴のガントレットを破壊する!」
「ええ、分かったわ~! みんな、やるわよ!」
「おおーーー!!」
「フッ、下らぬ。そんなことをさせるとでも思って」
「忘れないでよ、僕たちだって戦いながらサポートするからね! シールドブーメラン!」
小バカにしたような笑みを浮かべるフィニスに向かって、リオが盾を投げる。途中で変形した盾は、フィニスの左手を覆い拳を握れないよう固めた。
「これは!?」
「今や! アニエスはん、テレジアはん! つるを伸ばしたれ!」
「うん! 行くよお姉ちゃん!」
『分かった! それっ!』
「わたくしも手伝います!」
フィニスが驚いている隙に、エステルとアニエス、テレジアが動く。イバラを伸ばしてフィニスの首に巻き付け、トゲを首に食い込ませる。
イバラをエステルとマリアベルが掴み、体内で調合した毒を注入する。それを見た他の星騎士たちも、それぞれの役目を考え動き出した。
「拙者とディルス、イザリーとマリスは敵が近付けないようにみなを守る! 今のうちに拘束を完成させるのだ!」
「よし、行くぜカティ! バーニングロープ!」
「やるわよ……フローズン・フィールド!」
「ぐうっ……おのれ、調子に乗るな!」
拘束手段を持たない、あるいは奥義でしか使えないツバキたちはフィニスを救出しようとする者たちの排除に向かう。
アシュリーは炎のロープでフィニスの右腕を、カトリーヌは地面を凍らせ両足を拘束する。フィニスは左手を覆う盾を砕き、ジェムの力を使おうとするが……。
「させないヨ、それっ!」
「水の膜で覆ってやる! これならもう手は握れねぇだろ!」
「ダメ押しだ、磁力の力を見せてやる!」
フェンルーの帯がフィニスの左手首と指に巻き付き、上からドレイクが放った水の膜が覆う。トドメとばかりに、ラインハルトが磁力で完全に動きを封じる。
「今じゃ、コーディ! 二人の力を合わせてガントレットを砕くのじゃ! ディザスター・ランス【貫壊】!」
「ええ! セイクリッド・スラッシャー!」
「おの、れ……! 砕ける、ものか!」
星騎士の力を結集させ、全員が連携しガンレトットの破壊を目指す。闇の槍と光の斬撃が放たれ、ガントレットに負荷を与える。
リオたちが全力で敵を排除し、援護を行う中で十数分が経過する。攻撃に耐え続けてきたガントレットに、ついに亀裂が走った。
「二人とも、急いでや! こいつ、体内でウチらの毒の抗体を作り始めとる!」
「長くは……くっ、留められません!」
「あと少しじゃ! ガントレットにヒビが入った、じきに」
「そうは……させぬわぁぁぁぁぁ!!!」
あと少しというところで、フィニスの意地が勝った。渾身の力を込めて拳を握り、全てのジェムの力を解き放つ。
七色の波動が四方八方に放たれ、敵も味方も関係無く殲滅していく。至近距離にいたコリンたちも、直撃を食らってしまう。
「うわああああああ!!」
「はあ、はあ……。たいしたものだ、ここまで私を追い込むとは。だが……」
「ぐ、うう……」
「最後に勝つのは! この私なのだ!」
波動の放出が終わった後、立っているのはフィニスただ一人。まだ息のあるコリンの首を左手で掴み、高く持ち上げて締め付ける。
「まだ、終わらぬ……これだけはしたくなかったが……おぬしを倒すためなら、何でもやってやる」
「ほう、何をする気だ? やってみるがいい」
「ああ、やるとも。フィニス、おぬしは──ジェムの力で敗れ去るのじゃ!」
「まさか、貴様!?」
最後の力を振り絞り、コリンは左手を伸ばす。そして……鎧に埋め込まれていた、『破壊のアメジスト』を抜き取った。
完全に相手が油断し、かつジェムに手が届く距離にいたからこそ出来た奇策。だが、その代償は大きい。手にしているだけで、コリンの身体は破壊の力に蝕まれていくのだから。
「これが最後じゃ! うりゃあああああああ!!」
「ぐっ……おおおおおおお!!!」
コリンは腕を振りかぶり、フィニスの左腕を殴り付けた。その衝撃で相手の腕もろともガントレットが砕け散り、コリンは吹き飛ぶ。
手から離れた『破壊のアメジスト』はフィニスの元に戻るが……もう、彼はジェムを制御することが出来ない。自壊の時を迎えたのだ。
「ば、かな……バカな! この私が、こんな終わり方をするなど……!」
「う、げほっ……! コリン、やったのね!」
「そうじゃ、コーディ! さあ、立つのじゃ! 今こそ奴にトドメを!」
「ええ! 行くわよ、星魂顕現……」
「カプリコーン!」
目を覚ましたコーディと共に、コリンは星の力を呼び覚ます。黒く焼け焦げた左腕が根元から千切れても、コリンは気にしない。
今は、フィニスにトドメを刺すのが先だからだ。
「食らえ! 魔羯星奥義……ディザスター・フォトン・イレイザー!」
「魔羯星奥義! セイクリッド・アバランチャー!」
「ぐ……ああああああああ!!!!」
二人の攻撃がフィニスの身体を貫き、トドメとなった。暴走するジェムの力に呑まれ、消滅していきながら……フィニスは呟く。
「……私の、負けか。これが……結末なのだな。だが……これで、よかったのかも……しれな、い……」
フィニスが消滅した後、彼が呼び出した軍団も塵となって消えていく。辛うじて生きていた仲間たちが起き上がる中、コリンは笑う。
「勝った……勝ったのじゃ! わしらは……勝ったぞぉぉぉぉぉ!!」
「おおおーーーー!!!」
更地となった大地に、仲間たちの歓声が響き渡る。最後の戦いを制したのは──コリンたちだった。




