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267話─友を救え、コリン!

 生まれ変わった星遺物を手に、コリンはコーディと共に修行に明け暮れる日々を送る。かつての師や父母に師事し、実力を伸ばしていく。


 星騎士たちが修行を始めてから、十日が経過した。神々や魔戒王に鍛えられ、メキメキと実力を伸ばしていく中……凶報がもたらされる。


「なぬ!? アゼルが襲われておるじゃと!?」


「ああ。どうやら、監視しているのがエイヴィアスにバレたようでな。仲間ごと奴の拠点に引きずり込まれてしまった。今、救出のため手を尽くしているが……」


 父、フリードの言葉にコリンは絶句する。動くとすれば、フィニスだとばかり思っていたのだ。友の危機に、コリンは助けに行こうとする。


 そんな息子の思考を読み取ったフリードは、コリンを手招きして自分の膝に座らせる。その状態で、冷静に話し出した。


「落ち着け、コリン。焦れば敵の思うつぼだ。奴は狙ってるんだ。友の危機を救おうと、お前が飛び込んでくるのを」


「ですが、このまま見殺しになど出来……ん? パパ上、そもそもエイヴィアスはどこに?」


「それについては、プルフリンがすでに突き止めている。プルフリン、水鏡をここへ!」


「I'm clever……Your Majesty. Now, take a look at this water mirror. A strange sight is projected(かしこまりました、陛下。では、この水鏡をご覧ください。奇妙な光景が映し出されています)」


 フリードが呼びかけると、部屋の中央に丸い水鏡が現れ、プルフリンの声が響く。水鏡に映し出された光景を見て、コリンは目を丸くする。


 そこに映っていたのは、白銀の輝きを持つ偽りの太陽に照らされた空。歴史を改変する前の世界に、エイヴィアスがいるのだ。


「フォルネウスから聞いたよ。悲劇を防ぐために、時を巻き戻して歴史を変えたのだとね。エイヴィアスがいるのは……消え去ったはずの、改変前の時間軸だ」


「ば、バカな! 存在しなくなった世界に居を構えるなど……そうか、アブソリュート・ジェム!」


「The terrifying power of gems seems to be able to twist not only causality but also the laws of the world……How terrifyin(恐るべき宝石の力は、因果だけでなく世界の法則をも捻じ曲げることが可能なようです。なんと恐ろしい)」


 フィニスに同調して反乱を起こし、王の地位を剥奪されたエイヴィアス。相方が相方なだけに忘れられがちだが、かの王も恐ろしい力を有している。


 何としてでも、アゼルたちを助けに行かなければならない。そう決心したコリンは、フリードに救出に行くための許しを請う。


「パパ上! わしは、無二の親友が苦しんでいるのを見て見ぬフリなど出来ませぬ! どうか、助けに行く許可を!」


「……そうだな。そろそろ実戦経験を積むべきだ。いいだろう、だが……星騎士たちへの連絡が間に合わない。魔戒王や俺も、万一に備えここを離れられん。行くのはお前とコーディだけだ。それでも行くか?」


「コーディ……あね上はともかく、わしは一人でも助けに行く所存です!」


「分かった。プルフリン、コーディをここへ!」


「I understand, Your Majesty(かしこまりました、陛下)」


 フリードに命じられ、コーディが転送される。手短に事情を話して了承を取り付けた後、コリンの前に水鏡が移動する。


「さあ、念じるんだコリン。今この場には、お前以外抹消された世界の記憶を持つ者がいない。記憶を頼りに、鏡へ飛び込め!」


「フフ、楽しみね。修行の成果、存分に見せ付けてやるんだから。行くわよ、コリン!」


「うむ! 待っているがよい、アゼル。必ずそなたを救ってみせるぞよ!」


 コリンたちは手を繋ぎ、勢いよく水鏡の中に飛び込んでいく。親友をその手で救い、長きに渡って暗躍してきた宿敵に引導を渡すために。



◇─────────────────────◇



「はあ、はあ……! お前、よくも、よくもこんな! ぼくに……兄さんを、手にかけさせたな!」


「クッククク、運命変異体とはいえ、兄を殺すのは心を病むか。だが安心しろ。お前の兄が悪に染まったままの『もしも』の世界は、まだまだ存在しているのだからな」


 抹消された、改変前のイゼア=ネデール。荒廃した街の広場に、アゼルとエイヴィアスがいた。うずくまるアゼルの前に、転がる骸が一つ。


 正体は、アゼルの兄カイルだ。もっとも、とうの昔に亡くなった基底時間軸のオリジナルではなく、平行世界から連れてこられた運命変異体だが。


「お前、趣味が悪いって言われませんか? ドブ川みたいに性根が腐ってるとも。あと、ボンレスハムみたいになるまで全身を縛り付けて」


「前言撤回、貴様本当は余裕だな? だが、貴様の嫁どもは助けに来られぬぞ。何せ、バラバラに分断して合流出来ないようにしているのだからな」


「ええ、驚きましたよ。まさか、大量のゾダンを引き連れてくるなんてね。軽い目眩と深刻な動悸に襲われましたよ、ほんと」


「そのまま心臓発作で死ねれば幸福だったものを。貴様は今から、数百人の兄を殺……む!」


 新たに平行世界の門を開こうとした、その時。エイヴィアスは異質な気配が二つ、入り込んだことに気が付いた。

 

 勿論、気配の正体にも。エイヴィアスが獰猛な笑みを浮かべた、次の瞬間。広場にある噴水から、闇の槍が射出された。


「ディザスター・ランス!」


「フン、そんなもの食らわぬわ!」


 不意打ち気味に放たれた槍を、エイヴィアスは難なく避ける。そんな彼の影の中から、少しずつ白刃が現れた。


「なら、これはどうかしら! セイクリッド・スラスト!」


「な……!? ぐうっ!?」


 コーディの攻撃までは避けきれず、脇腹を切り裂かれたエイヴィアスは地面を転がる。噴水と宿敵の影から、それぞれコリンたちが姿を見せる。


「コリンくん! と……そっちの女の子は?」


「はじめまして、あなたがアゼルね。私はコーデリアって言うの。コリンの運命変異体よ、よろしく」


「そうでしたか。ぼくはアゼルと……危ない! サモン・スカルウォール!」


 和やかなムードになりかけたその時、紫色の巨大な玉が二つ襲いかかってくる。アゼルが骨の壁を呼び出し、攻撃を防ぐ。


 玉は元来た方へと戻っていき、虚空に消える。脇腹を押さえながら、ゆっくりとエイヴィアスが歩いてきた。


「よくもやってくれたな……小娘。その魔力、貴様はコーネリアスの運命変異体か」


「ええ、そうよ。平行世界のあなたに育てられた、聖なる力を持つ戦士。それが私よ、エイヴィアス!」


「ふ、ハハハハ!! 何という奇妙な巡り合わせだ。平行世界のワレも、とんだ物好きよなぁ」


 コーディの言葉に、エイヴィアスは大笑いする。直後、どこかから女性の悲鳴が届く。


「この声は……アンジェリカさん! 早く助けなきゃ!」


「行け、アゼル。嫁たちを救うのじゃ。ここはわしらに任せい。いくら蘇生出来るとはいえ、嫁の無残な姿は見たくなかろ?」


「ありがとう、コリンくん。あいつは強い……例のアブソリュート・ジェムの力の断片を宿してます。気を付けてください!」


「うむ、案ずるな! 奴程度に遅れは取らぬ! むしろ、取るようではフィニスへのリベンジなど夢のまた夢じゃからな!」


 かけがえのない妻たちを救うため、アゼルは崩壊した通りの方へ走っていく。エイヴィアスは、アゼルを追わない。


 それ以上の優先順位がある、抹殺対象が現れたのだから。エイヴィアスが指を鳴らすと、服装が変化していく。


 黒い鎧は、黒と紫の縦縞模様の道化の服になり、頭にはとんがり帽子が現れる。服の胸元には、フィニスに与えられたジェムのレプリカが浮かんでいた。


「コーネリアス……思えば、貴様にはワレの野望を邪魔されてばかりだった。ヴァスラ教団を用いた侵略はことごとく阻まれ、邪神の一族が世界を支配すれば解放し……そして、歴史を根本から変えた」


「なんじゃ、この世界での記憶がよみがえったのか。ま、こんな場所におるのじゃから当然かの」


「これ以上、邪魔はさせぬ! ワレはフィニスと共に全てを破壊する。そして、新たに創造された世界の覇者となるのだ!」


 因縁の相手たるコリンに、エイヴィアスは新たに抱いた野望をぶち上げる。それを聞いたコーディは、嘲りの笑みを浮かべた。


「ぷっ、なぁにそれ、ダッサ! フィニスみたいな狂人が、そんな三下悪役みたいな野望を叶えさせてくれるとでも思うわけ?」


「勿論だとも。ワレとあやつは親友だ。破壊の後には創造がある。あやつが破壊を成し! そののちにワレが創造を果たすのだ!」


「くだらぬな、あくびが出るわ! そんな野望、貴様の命ともども消し去ってやる! ここが貴様の墓場じゃ、往生せよエイヴィアス!」


 歴史の闇へ葬られた世界で、因縁の宿敵との決戦が──ついに、幕を開ける。

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― 新着の感想 ―
[一言] おい待て(ʘᗩʘ’)アゼルの兄貴(悪)を差し向けるだけでも悪趣味なのに大量のゾダン?!(⑉⊙ȏ⊙) あのバカがぞろぞろワラワラ来たのかщ(゜ロ゜щ)再生怪人でも彼奴は達悪すぎだろ(⊙_◎)…
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