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240話─そして、全部が大団円

「おい、神殿が穴の中に落ちてくぞ! コリンは大丈夫なのか!?」


「おっ、アレ見てみぃ! コリンはんや! コリンはんが戻ってきたで!」


「みな、ただいまじゃ! 無事に帰還したぞい!」


 地上にいたヴァスラ教団の兵士たちは一掃され、アシュリーたちが固唾を飲んで見守る中。異次元への穴に落ちていく神殿から、コリンが降りてきた。


 その背には、邪神討伐を果たした証たるヴァスラサックの死体が担がれている。途中で思い直したコリンが回収してきたのだ。


「お坊ちゃま! よかった……本当に、よくご無事で……」


「よくやったな、坊主! ほー、そいつが邪神か。こんなべっぴんが悪い奴だってんだから、世の中分からねぇもんだな」


「アホう、何ぬかしてんのやこのスケベ親父は!」


 主の帰還を、マリアベルは破顔して喜ぶ。目尻にはうっすらと涙が浮かんでいた。一方、バーラムは邪神の方に興味があるらしい。


 そんなバーラムに、エステルがツッコミを入れる。以前の時間軸ではあり得なかった光景に、コリンは微笑みを浮かべるが……?


「みな、ありがとう。さて、勝利を喜ぶ前にじゃ。わしはやることがあるので、一旦失礼するぞよ」


「え? やることって、もう何もないだろ? 邪神も教団もぶっ潰したンだしさ」


「いやいや、まだ残っておるじゃろう? この事態を引き起こした裏切り者の後始末が」


 ヴァスラサックの死体をマリアベルに預け、コリンはその場を離れようとする。そんな彼に、アシュリーが問いを投げかけた。


 すると、ニヤリと笑み浮かべ……コリンはそう答えた。



◇─────────────────────◇



「はあ、はあ……。ここまで来れば問題なかろう。だが、まさか……神殿が落とされるとは。これでは裏切った意味が無いではないか! 使えない教団め!」


 その頃、教団を手引きした裏切り者、グリルゴは一人で惨めに敗走していた。町外れまでどうにか逃げられた……が、彼の命運はそこで尽きた。


「さて、さっさと領地にもどふがっ!?」


「おっと、そうはいかぬのじゃよ。やっとこさ見つけたぞい、裏切り者さん。さて、ふん縛らせてもらおうかのう、え?」


「は、鼻がぁぁぁ……」


「ああ、そうじゃ。おぬし、甥二人を虐待しておるな? 言い逃れなどさせぬぞ、記憶を見ればハッキリするのじゃからな」


 曲がり角を曲がろうとした瞬間、杖が伸びてきてグリルゴの顔面をぶっ叩く。顔を押さえて転げ回るグリルゴの前に、コリンが現れた。


 逃げられないよう脚を踏んづけ、杖の先っぽで相手の脇腹をつんつん突っつきながらそう詰め寄る。対するグリルゴは、この期に及んで言い逃れようとする。


「な、なんのことだ? わしにはさっぱ……ぎゃああああ!!」


「おっと、手が滑ってしもうたわ。脚が無事なら歩けるからのう、腕の骨が折れても問題ないじゃろ? 人払いの結界を張ったゆえ、貴様が素直になるまで」


「わ、分かった! 言う、全部吐くからやめてくれぇぇぇぇ!!」


 コリンは杖を叩き付け、容赦なくグリルゴの腕をへし折る。心もへし折れたグリルゴは、とうとう観念してコリンに従う。


 逃げられないように闇のロープを巻かれた状態で、転移石(テレポストーン)を使い屋敷に戻ることに。コリンの次の目的は一つ。ディルスとソールの救出だ。


「ほう、ここが貴様の屋敷か。フン、悪趣味な屋敷じゃ。いかにも成金という感じだのう」


「ぐうう、腕が……鼻が……」


「ほれ、呻いとらんでさっさと案内せい。ディルスとソールを閉じ込めておる部屋にな」


「は、はいぃ……」


 グリルゴの脛を蹴りながら、コリンは屋敷に入るよう促す。変わり果てた姿になった主人の帰宅に、庭で洗濯をしていたメイドがぎょっとする。


「だ、旦那様!? 一体何が」


「こやつはわしら星騎士を裏切った。じき、この街にも知らせが届く。こやつの夫人を拘束しておけ、共に罪人として裁きにかけるでな」


「は、はぁ……」


 コリンに凄まれ、メイドは冷や汗を流しながら頷く。それを見届けた後、コリンはグリルゴと共に屋敷に入る。


 案内を受け、屋敷の奥にある物置部屋に向かう。扉を開けると……そこには、十六歳ほどの少年──ディルスと、十二歳ほどの少年──ソールがいた。


 二人とも、金色だったろう髪がくすみ、顔も身体も傷だらけだった。突然やって来たコリンとグリルゴを見て、兄弟は驚く。


「え? え!? ど、どうして叔父さんが……それに、あなたは」


「お兄ちゃん、この人……もしかして」


「済まぬのう、ようやく助けに来られたわい。ディルス、ソール。そなたらはもう自由じゃ。誰にも虐げられることはない。これからは、わしが守るでな」


 虐待されていても、コリンのことは知っているようだ。びっくりしているディルスとソールの元に歩み寄り、コリンは笑いかける。


「ほんと? ほんとに、もういじめられないの? ぶたれたり、腐ったご飯を食べさせられたりしないの?」


「助けて、くれるのか? 俺とソールを」


「もちろんじゃ。年齢の問題で、わしが後見人になるのは無理じゃが……ラインハルト殿にそなたらを引き取ってもらう。もう、怯えながら暮らす必要はないのじゃよ」


 コリンの言葉に、兄弟たちは堰を切ったように泣き始める。以前の時間軸で、コリンはソールから聞かされていた。


 グリルゴ夫婦だけでなく、屋敷で働く使用人たちにも虐められ居場所がなかったと。そんな彼らの境遇に、コリンは涙を流す。


「よしよし、もう大丈夫じゃよ。さ、行こうか。いつまでもこんな場所にいてはならん。これからは、誰にも虐げられることなく自由に暮らせるのじゃから!」


「ありがとう、英雄さん! 俺、あなたから受けた恩を絶対忘れないよ!」


「ぼくも!」


 ディルスとソールはコリンに礼を言い、共に物置部屋から出ようとする。が、その時。部屋の隅に座り込んでいたグリルゴが喚き出す。


「おい、待て! 何でわしをここに縫い止める? 頼む、連れて行ってくれ! 折れた鼻と腕が痛いんだ、医者に」


「黙れ、ゲスめが。貴様に明日はない、怪我の治療など不要じゃ。この部屋の中で、甥たちに与えた苦痛の大きさを思い知るがよい!」


「そ、そんな! 頼む、行くなぁぁぁぁ!!」


 闇魔法で動きを封じられたグリルゴは、情けない声で叫ぶ。だが、そんな彼を無視してコリンは兄弟を連れ部屋を去って行く。


 これで、歴史は変わった。起こるはずだった悲劇は事前に防がれ、邪神とその崇拝者たちは完全に滅び去ったのだ。


「おお、そうじゃ。一つ試してみたいことがあったのう。前の時間軸での記憶と力、アシュリーたちに復元出来るかやってみよう。やはり、全てを知っておいてもらった方がいいからなぁ」


 そう呟きながら、コリンは屋敷を出る。そして──仲間たちの元へと戻っていった。



◇─────────────────────◇



 邪神との戦いから、七日が過ぎた。平和が取り戻されたことを、大地の民全てが祝っていた。眠るのも忘れ、この七日騒ぎっぱなしだ。


 そんな中、コリンはディルスたちも含めた星騎士を全員集める。以前の時間軸の記憶と、培い覚醒させた力の復元を試みていた。


 結論から言えば、その試みは──見事、成功した。コリンというイレギュラーがいたおかげで、本来ならば不可能である『存在しなくなった時間軸』の記憶を取り戻せたのだ。


「よくやったな、コリン。ありがとよ、まさかアタイらの記憶まで元に戻してくれるたぁな。驚いたぜ、ホントに」


「わしも驚きじゃよ、ダメ元でやってみたら成功してしもうたんじゃからな。じゃが……これで、みんな仲良く平和を謳歌出来るのう」


 アルソブラ城の大広間にて、コリンは仲間たちと食卓を囲む。一人ひとりを愛おしげに眺めていると……?


「ほーんと、コリンちゃんには感謝しかないわぁ! アタシの死を回避してくれたどころか、バッチリ一族の呪いまで解いてくれちゃったんだもの!」


『私も感謝しているよ、コリン。おかげで、こうしてまたアニエスやお父様と出会えたわけだからね』


「ふふ、そう言ってもらえると感無量じゃよ。マデリーン殿にテレジア」


 歴史が変わったことで、マデリーンの死も回避された。おまけに、メルーレの死でバーウェイ一族にかけられた呪いも解けたのだ。


 性別が元に戻り、かつての美貌を取り戻したマデリーンは朗らかに笑う。隣に座るイザリーも、とても幸せそうにしている。


 一方、テレジアはコリンの手引きで本来より早く目覚めることが出来た。これからは、家族仲良く暮らしていけるだろう。


「星騎士を代表し、礼を言わせてくれ。ありがとう、コーネリアス。歴史を変え、全てを救ってくれて……本当に、感謝で胸がいっぱいだ」


「ふふ、これでもう憂いることは何もない。さあ、祝杯をあげようぞ! 新たな歴史の始まりを祝って!」


「かんぱーい!」


 コリンの号令に合わせ、星騎士たちは手に持ったグラスを高く掲げる。ここから先の未来は、誰にも分からない。


 だが、一つだけコリンたちにも分かることがある。いつまでも、愛する仲間たちと共に。末永く暮らせるのだと。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最悪の未来を起こす現況を倒して救える者も救って皆の記憶と力まで戻して万々歳の大団円で終わって最終回みたいになってるな(ʘᗩʘ’) でも1つ気になる事が(-_-;)酷い未来そのものが無かった…
[一言] >「はあ、はあ……。ここまで来れば問題なかろう。だが、まさか……神殿が落とされるとは。これでは裏切った意味が無いではないか! 使えない教団め!」 はーい!! 今日でお前の人生も悪行も終わり…
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