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214話─ある二つの出会い

 四日後、コリンたちは新ランザーム王国へと入国を果たしていた。新たに敷設された街道を進み、ラガラモン連峰を目指す。


 その道中、コリンはイザリーと一緒に瞑想を行っていた。内に宿る星の力と対話し、目覚めさせるための方法を伝授したのだ。


「そう、強く息を吸って……少しの間止めて吐く。どうじゃ、少しはコツが掴めてきたかの?」


「うん、この四日で大分掴めた気がする。ちょっとずつ、私の中の力が目覚めてくるような感覚があるわ」


「そうか、それはよかった。ここまで来れば、あともう少しで」


「コーネリアス、少しいいか? 緊急で話がしたい」


 コリンがレクチャーしていると、馬車の扉がノックされる。珍しく、切羽詰まったラインハルトの声が聞こえてきた。


 一旦瞑想を中断し、コリンは止まった馬車から降りる。すると、ラインハルトの後ろから二人の兵士が歩いてきた。


「実はつい先ほど、近くの茂みでとんでもない人物を見つけてね。何故彼がここにいるのか、君に記憶を見て調べてもらおうと思ったんだ」


「む……その青年かえ? 一体、彼は何者なのじゃ?」


「えっと……こんな形で初対面なのは恐縮ですが。僕はソール。ソール・ファンダバルと申します。色々あって……こっちに来ちゃいました」


 現れたのは、兵士二人に拘束されたソールだった。エリザベートに運んでもらった後、捕まる形で合流を果たしたようだ。


「なぬ!? ファンダバル家と言えば、あの薄汚いグリルゴめの……」


「叔父は死にました。いえ、()()()()()の方が正しいですね。僕と兄さんであいつを……って、今はそんなことを言ってる場合ではありません」


「そうだ。覇翼神将ラディウスの部下として軍門に下った君が、何故ここにいるのか。それを知らなければならない。場合によっては……」


 そう口にすると、ラインハルトは力を解放する。隊列の後ろの方にあった、武器を積載した馬車から数本の槍が飛んできた。


 ラインハルトが磁力を用いて、武器を持ってきたのだ。万が一、ソールが敵のスパイだった時に備えて警戒しているのである。


「ソール殿、失礼するぞよ。大人しくしていればすぐに済む故、暴れてはならぬぞ」


「ええ、大人しくしてますよ。母親とはぐれた子羊みたいにね」


 軽口を叩く相手にフンと鼻を鳴らした後、コリンはソールの額に触れる。闇魔法を使って記憶を読み取ることで、狙いを知ろうとするが……?


「む……!? なんと、こやつそんな理由で……」


「コーネリアス、何か分かったのかい?」


「うむ、この者……自らの意思で兄から離反し、ここに来たようじゃ。そなたがお竜様と呼ぶ者の仲間の手助けでな」


 ソールの記憶を見たコリンは、ラインハルトにそう告げる。敵意がないことが分かったため、ソールは拘束を解かれた。


 その直後、ソールは地に平伏し土下座する。地面に額をこすり付け、コリンたちに向かって懇願の声をかける。


「お願いです! 今更何を言うかと思うのは分かっています、でも! どうか、僕もあなた方と一緒に戦わせてください! 僕は……兄さんを救いたいんです!」


「何か事情があるようだな。コーネリアス、彼の記憶はどうだった?」


「うむ、実は……」


 コリンはラインハルトに、魔法で覗き見たソールの記憶について話す。虐殺を重ねる兄に心を痛め、離反を決意したことを聞き、ラインハルトは思案する。


「話は分かった。敵軍の内情に詳しい君がいれば、南ランザームの解放も叶うだろう。こちらとしても、是非力を借りたい」


「! ありがとうございます、本当にありがとうございます!」


 熟慮の末、ラインハルトはソールを受け入れることを決めた。南ランザームに駐屯しているダルクレア聖王国軍の内情を得られると考えたのだ。


 さらには、ディルスに対する牽制は交渉のためのカードとしても活用出来る。ソールに対する人情とはまた別に、ラインハルトは冷徹な思考を巡らせる。


 そんな中、コリンはと言うと……。


「ふむ。ラインハルト殿、少し考えが変わった。一足先に、例の連峰へ行かせてもらうぞよ。例の者らと話し合いをせねばならぬのでな。闇魔法、クリエイション・ドア!」


「コーネリアス、待ちたま……行ってしまった。まあ、仕方ない。私たちは私たちで、自力でラガラモン連峰へ向かおう」


 コリンはソールの記憶を媒介にしてラガラモン連峰の位置を割り出し、アルソブラ城の扉からアクセス出来るよう道を整える。


 記憶を見た結果、魔神たちの介入が度々起こっていることを知ったのだ。こうなった以上、悠長に旅をしてはいられない。


 早急に魔神たちに真意を問い質し、場合によっては一戦まじえることになる。アルソブラ城に戻ったコリンが、連峰に向かおうとしていると……。


「お坊ちゃま、ただいま戻りました。やはり、お坊ちゃまが危惧していた通り……お竜様の正体は、ベルドールの魔神の一角エルカリオスでした」


「よく調べてくれた、マリアベル。やはりか……ちと面倒なことになりそうじゃな」


「いえ、エルカリオスに関しては……問題ありません。そちらについてはフェルメア様が関与なされていますから」


 グッドタイミングで戻ってきたマリアベルから、調査の結果を聞くコリン。彼女の言葉に、首を傾げることになる。


「むむ、どういうことじゃ……? なにゆえそこでママ上が出てくるのじゃ?」


「ご心配なく、帰りに暗域へ寄って話を窺って参りました」


「おお、でかした! 流石派マリアベル、わしの優秀な従者じゃ!」


「はい、お褒めに預かり光栄です。お坊ちゃま」


 コリンに褒められ、マリアベルは上機嫌だ。ニコニコ微笑みながら、主君から聞き出した話をコリンに話して聞かせる。


「遙か昔、まだヴァスラサックが邪神に堕ちる前。フェルメア様と相談し、旧剣の魔神エルカリオスを楽園に呼んだそうです」


「なぬ? 何故かようなことを?」


「当時、外部からの侵略に対する防衛手段が不足していたらしく……フェルメア様が提案したそうです。エルカリオスを、楽園の守護者にすることを」


 マリアベルの言葉に、コリンは目を丸くする。そんな話は、今まで一度も聞かされていなかったのだ。その理由を尋ねると、答えが返ってくる。


「ご両親の話では、そのすぐ後にヴァスラサックの裏切りが起こり……魔神は星騎士たちと共に戦ったそうです。戦いが終結した後、魔神は神々と結ばれた約定に配慮し、自分に関する情報を抹消してもらったそうです」


「パパ上に、か。確かに、そうであればわしにも話すわけにいかぬじゃろうな。む? では何故、エルカリオスはイゼア=ネデールを去らなかったのじゃ?」


「老いた身であるが故に、故郷への移動が困難だったそうです。そこで、力を蓄えるためにイゼア=ネデールに残った……というのが、わたくしが聞いた話です」


 話を聞き終えたコリンは、思考を巡らせる。マリアベルから聞いた話を前提に考えるならば、魔神たちに敵対の意思はないように思える。


 リオに約束した通り、エリザベートを無事に帰すことが出来れば何も問題はない。コリンはひとまず、安堵の息を吐く。


「何はともあれ、かの者らに会わねば。リオが心配しておったと伝えてやらねばな」


「かしこまりました。では、わたくしもお供します。まずないとは思いますが、万一戦闘になるようであれば一人では危険ですから」


「うむ、頼む。では行こうか、魔神どもの住処に」


 戦いになるかもしれないと心を決め、コリンたちは玄関へ向かう。座標を合わせ、深呼吸をした後……コリンは扉を開けた。



◇─────────────────────◇



「心配ですわね。あの子、ちゃんと合流出来たのでしょうか」


「出来るさ。そのために、お前も出来る限りのことをしたのだろう? なら、ドンと構えていればいい」


 ラガラモン連峰深奥、巨大洞窟。広い空洞の中に、一体の巨竜と一人の女がいた。旧魔神、エルカリオスと現魔神、エリザベートだ。


 せかせかとあっちこっちウロウロしながら、エリザベートはブツブツ呟く。そんな後継者を見下ろし、エルカリオスは諭す。


「それはわたくしも分かっているのですが……やはり、気になりますわ。少し様子を見へぶっ!」


「! この扉、それに魔力……まさか!」


 ソールが心配なエリザベートは、洞窟の外に出ようとして──どこからともなく現れた扉に、勢いよく顔面をぶつける。


「ごきげんよう、魔神の諸君。ちっとばかり、わしと()()()()しようではないか。のう?」


 扉が開き、コリンとマリアベルが姿を現す。半神(デミゴッド)と魔神の、邂逅の時が来たのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] エルカリオスも色々あって消えかけた命を繋ぎ直して貰って生き長らえたけど流石に歳には勝てんか(ʘᗩʘ’) エリザベートもリオの嫁さんになって随分経つのに肝心の性格面はたいして変わってないんだ…
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