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118話―幻影の神託者たち

 在りし日のオラクルの幻影たちが、コリンに迫る。その目には、強い殺意の光が宿り仇敵を抹殺せんとする意思が漏れ出ていた。


「死ね、コリン! 神託魔術(オラクルマジック)、D・C:ジャンクション!」


「貴様に殺された恨み、ここで晴らす! 神託魔術(オラクルマジック)、スモーキング・ストーキング!」


 これといった戦闘技能を持たないロルヴァを除いた二人が、各々の神託魔術(オラクルマジック)を発動させつつコリンに襲いかかる。


 対して、コリンが取った行動は……。


「フン、今さら一人ひとりに手間暇かけるつもりなぞない。まとめて瞬殺してくれるわ! ディザスター・バインド!」


「ちょ、なぁっ!?」


「ぐおっ!」


 コリンは闇のロープを飛ばしてロルヴァを引き寄せて、ベイルの方に投げ飛ばす。結果、『分解』の力を発動していた手に触れバラバラになってしまう。


 本物ではないとはいえ、致命的なダメージになることに変わりはない。ロルヴァの幻影は断末魔の叫びをあげることもなく、消滅していった。


「ぐっ、おのれ……」


「そのまま滅べ! ディザスター・ランス!」


「がはっ!」


 間髪入れず、闇の槍を放ってベイルも仕留める。赤子の手を捻るように次々とオラクルの幻影を倒していく様には、一種の爽快感があった。


「よくもロルヴァとベイルを! 許さぬ、死ね!」


「おぬしは魔力で包んで潰してくれるわ! それっ!」


「ぐおおっ……ぐあっ!」


 煙の身体を持つアムラに対しては、逃げられないよう魔力で全身をコーティングした上でロープを巻き付ける。そうした上でロープを引き絞り、そのまま圧殺した。


『ほう、なかなかやるではないか。だが、次の三人はどうかな? さあいでよ、ゼライツ、メイラー、トラッド!』


「ふん、何人来ようと結果は変わらぬわ。一度倒した相手には……」


 神殿内部から放たれた鉄球を避けつつ、コリンは魔力を放出し相手の居場所を探る。直後、隠れていたオラクル・メイラーの幻影を発見した。


「決して負けぬ! ディザスター・ランス【回転(スピン)】!」


「あぐっ! そんな、もう見つかるなんて……」


「さあ、次じゃ! まとめてかかって……む、とうっ!」


 鉄球を展開される前に手早くメイラーを始末するコリン。そんな彼の元に、クリーム色の人魂が迫る。オラクル・トラッドの幻影が攻撃を仕掛けてきたのだ。


「チッ、避けやがったか。調子に乗ってるとこを仕留めてやろうと思ったのによ」


「妹の仇……取らせてもらうぞ、小僧」


 少し遅れて、オラクル・ゼライツの幻影も生み出された。ナノボールを使って大剣を作り出し、コリンに切っ先を向ける。


 トラッドの方も人魂爆弾を十個ほど作り出し、自身の周囲に浮かべる。二人で連携してコリンを倒すつもりでいるようだ。


「ふむ、おぬしら二人とは直接戦ってはおらぬのう。じゃが、どのような能力を持つかは聞いておる。倒すのは容易い!」


「ならやってみろ! いけ、シラヌイ玉!」


「その忌々しい減らず口を利けなくしてやる! ナノブレード!」


 最後に現れた二人とは、コリンは直接刃を交えてはいない。だが、ゼライツに関してはカトリーヌたちから、トラッドに関してはドレイクから情報を得ている。


 故に、ある程度の対策はすでに考えていた。まず、コリンは闇の魔力でマスクを作り出し鼻と口を隙間無く覆う。


 ナノボールを吸い込み、ゼライツに操られてしまうのを防ぐためだ。


「まずは、その人魂を始末する。ディザスター・サイス【守護者(ガーディアン)】!」


「オ守リ致シマス!」


「ハッ、大層分厚い鎧着てるじゃねえか。しゃらくせえ、纏めて爆殺してやるよ!」


「死神よ、とりあえず『30回』分の魔力を込めた。それが尽きるまでに、あっちの大柄なハゲを仕留めるのじゃ」


「命ニ代エテモ遂行シマス!」


 鎧兜と大鎌で武装した死神の背中に、『30』という数字が浮かぶ。この数字は、死神が致死ダメージを受けると一つずつ減っていく。


 つまり、三十回だけ死神は自分が受けた致死ダメージをなかったことに出来るのだ。文字通りの『肉壁』として使役可能な、便利な存在なのである。


「フン、オレ様の相手はてめぇか。まあいい、そっちは任せたぞゼライツ!」


「言われるまでもない。死ぬがいい、小僧!」


「そうはいかぬのう、ここで死んではみなに申し訳が立たぬでな! ディザスター・ランス【(レイン)】!」


「ムダなことを。ナノドーム!」


 あっさりと倒された前半三人やメイラーと違い、ゼライツはかなり粘り強い。ナノボールを集めて固め、降り注ぐ槍を防ぐ。


 一方、トラッドの方も死神を相手に有利に戦いを進めていた。――もっとも、最初のうちは、だが。


「クソッ、こいつどうなってやがる? もう十回は爆殺してやったのに、何で消滅しねぇ!?」


「私ハ、不滅。オ前ヲ殺スマデ、延々ト鎌ヲ振ルウノミ。ソノ命、頂戴ツカマツル!」


 多少ストックを消費してはいるが、死神は健在だった。圧倒的なタフネスの前に追い詰められたトラッドの首に、死の大鎌が迫る。


「コレニテ……任務完了!」


「しま……ぐああっ!」


「トラッド! くっ、やられたか……」


 幻影故に持久力が無く、魔力が底を突いたところで首をはねられトラッドは敗れた。これで、オラクルの幻影はゼライツのみ。


 コリンは役目を終えた死神を消し、ナノブレードの斬撃を避けつつ距離を取る。大技を放ち、トドメを刺すための準備に取りかかった。


「わしも暇ではないのでな、そろそろ終わりにさせてもらおう。食らうがよい、パラライズドサークル!」


「ぐうっ! 身体が、痺れて……! だが、ナノボールの操作は出来る! 死ぬがいい、小僧! ナノスピアー!」


「効かぬ! ディザスター・シールド!」


 動きを封じられながらも、ゼライツはナノボールで構築した槍を放ち最後まで抵抗を続ける。が、それも虚しくコリンに防がれた。


「最後の決戦が控えておるでな、さっさと終わらせてもらうぞよ。食らうがよい! ディザスター・スタンプ!」


 コリンが新たな闇魔法を唱えると、ゼライツの頭上に魔力で形作られた巨大なハンマーが現れる。ゆっくりと振り上げられ、頂点に達した瞬間。


 勢いよくハンマーが振り下ろされ、ゼライツを叩き潰した。


「ぐおあああああ!! ……がはっ!」


「これで終わりじゃな。ディザスター・スタンプは決まるまでがすっトロいからのー、これまでは危なくて使える場面がほとんどなかったが……一発カマしてスッキリしたわい」


 オラクルの幻影を全滅させ、コリンは満足げに手をパンパン叩く。すると、そこにオラクル・カディルの声が響いてきた。


『流石だ、我らの宿敵よ。我が同胞の幻くらいでは、消耗させることも叶わぬようだな。よかろう、来るがいい。神殿の奥深く、女神の礼拝堂へ。私はそこでお前を待つとしよう』


「首を洗って待っておれ、オラクル・カディル。貴様も地獄にいる仲間の元へ送ってくれるわ!」


『ククク、無事そうなればいいな。扉は開いた。松明の導きに従い進め。手厚くもてなそう、最高の賓客をな』


 挑発の言葉を最後に、オラクル・カディルの声は聞こえなくなった。コリンは懐にしまっていたヒミコのお守りにそっと触れ、小さな声で呟く。


「……みな、わしに力を授けておくれ。この戦いに打ち勝ち、全てを終わらせるための祈りを。……さて、行こうかの!」


 祈りを終え、コリンは庭園を抜け神殿内部に歩を進める。内部は薄暗く、そこかしこで松明の火が揺らめいていた。


 よく見ると、時おり松明の火が矢印のような形になりコリンに道を示す。オラクル・カディルの言葉に従い、コリンは廊下を進む。


「……ここじゃな。扉の向こうから、とてつもなく禍々しい力を感じる……いよいよ、ヴァスラサックとの対面になるかのう」


 神殿の奥にある大きな扉の前にたどり着いたコリンは、手をかけつつそう呟く。力を込めて両開きの扉を押し、部屋の中に進んでいく。


「さあ、最終決戦の始まりじゃ!」


 薄暗い礼拝堂の中に、コリンの声がこだました。今、オラクル・カディルとの戦いが始まる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 再生怪人のあっけない幕切れは昭和の時代から変わらんな(ʘᗩʘ’) 次で全ての決着になるかそれとも(-_-;)何やら嫌な予感が(>0<;)
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