93 妹さんへの電話
密かに動く
次の日、俺は休み時間にとある人物へと電話をかける。昼間なら繋がりやすいかと思って2コール待つと目的の人物の声が聞こえてきた。
『もしもし、健斗くん?』
「こんにちは瑠美さん。今お時間大丈夫ですか?」
電話をかけたのは、先生の妹の瑠美さん。どうしても聞きたいことがあったので電話したのだ。
『そんなにかしこまらなくても大丈夫だよー。どのみち暇してたしね』
「ありがとうございます。あの、早速本題に入りますが、瑠美さんは遥香さんの友達に詳しかったりしますか?」
『友達?まあ、それなりにね。流石に保育園の頃とか大学時代とかはわからないけど、小学校から高校までならカバーできるよー』
えらく広い範囲で理解しているのは流石だと思いつつ俺は聞いた。
「でしたら、オタクの友達に心当たりありますか?」
『ん?ああ、それ多分瑞穂のことだね』
「瑞穂さんですか?」
『そう、水橋瑞穂。所謂幼馴染ってやつだね。オタクってアニメとかの所謂二次元のことだよね?なら、多分瑞穂しかいないね』
幼馴染でオタクとはなんとも濃い仲だが、瑠美さんと面識があるのはありがたい。
「実はその方にお願いがあるんですが・・・瑠美さんから仲介して貰うことってできますか?」
『いいよー。けど何の用事なの?健斗くんからの頼みなら聞いてあげるけど、一応聞かせてよ』
「実は昨日、遥香さんからその方の話を聞きまして。遥香さんのコスプレの話を聞いたんです」
『コスプレ?ああ、そういえば前に写真あったね。なになに、学生時代の写真が欲しくなったの?』
正解なのだが、なんと言えばいいのか迷ってから答えた。
「はい、その写真を譲って欲しいのと、あと遥香さんのことをもっと聞きたいんです。それと・・・出来れば、遥香さんと会って話をして欲しくて」
昨日先生がコスプレのくだりを話している時に見せた、少しだけ寂しそうな表情に思わずこうして電話をしてしまったのだ。交友関係まで口を出すのは違うようか気がするけど、こうしてついででも会って話をして欲しかったのだ。そのことに気付いたのか瑠美は嬉しそうに笑って言った。
『健斗くんは本当に姉さんのこと好きなんだね。私からは話は聞かないの?』
「瑠美さんとは時間が合う時にでもゆっくり話をしたいです」
『なら、楽しみにしてるよ。とりあえずすぐに連絡取れるかわからないから修学旅行前後になるかもしれないけど大丈夫?』
「はい。お願いします」
余計なお世話だと思うので、こうして俺の用事のついでにすれば多少は柔らかくなるだろうか・・・まあ、先生のコスプレ写真が欲しいのも本当だけどね。でも、それ以上になんとなく先生にああいう寂しそうな表情をして欲しくなかったのだ。




