表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

85/813

82 お祖父ちゃんと呼びな

女装お祖父ちゃん



「あれ?父さん?」


千鶴ちゃんを迎えにいってから先生の家に戻る途中で俺は見覚えのある、しかしこの時間この場所にはいないはずの人物を見かけて思わず首を傾げる。キョロキョロしていた父さんは俺を見つけるとこちらに駆け寄ってきた。なお、千鶴ちゃんが少しだけ身構えて俺の後ろに隠れたのでそれをなだめてから父さんに視線を向ける。


「丁度良かった。遥香さんから大雑把な住所は聞いてたけど迷ってたのよ」

「遥香さんに何か用事?というか今日仕事休みなの?」

「ええ、折角だから千鶴ちゃんの様子を見たくてね。ついでに遥香さんにも話があったし」


そう言ってから父さんは千鶴ちゃんに視線をあわせて笑いかけた。


「そんなに怖い顔しなくても大丈夫よ。あなたにとって私は他人じゃないからね」

「・・・おじさん、おにいちゃんのおじさんだよね?」

「うーん、そうね。どうせならお祖父ちゃんと呼んでくれるかしら。その方がいいわ」


父さん・・・いきなりそんなこと言っても千鶴ちゃんがわかるわけないでしょ。そんなことを思っていたが、一度面識があるからか、千鶴ちゃんは俺の後ろで震えつつも首を傾げて聞いた。


「ちーのおじいちゃんはほかにいるよ?」

「そうね、でもお祖父ちゃんはね基本的には二人はいるものなのよ」

「おじいちゃんはふたり・・・じゃあ、おじさんはちーのおじいちゃんなの?」

「ええ、だから怖がらなくてもいいわ」

「うん・・・」


なんとか笑顔を浮かべる千鶴ちゃん。なんだか絵面だけみたら誘拐の現場にも見えなくない。幸いこの辺はあまり人気はないから気にする必要はないかもしれないが、早めに撤収するに越したことはないだろう。


「父さん、とりあえずその話は遥香さんの家に着いたらしようね。千鶴ちゃんも怖いかもしれないけど、この人は優しいから大丈夫だよ」

「うん、おにいちゃんのいうことならちーはしんじる」

「ありがとう千鶴ちゃん」


そう言って頭を撫でると嬉しそうに笑う千鶴ちゃんだったがふと、疑問を口にした。


「でも、なんでおじさんはおとこのひとなのにおんなのひとのかっこうしてるの?」

「えっと・・・これがおじさんのお仕事だからだよ」

「おしごと?」

「そう、こういう格好でお酒を飲む場所があるの。千鶴ちゃんも大きくなれば自然と知ることだから今は気にしなくてもいいよ」

「うん。わかった」


なんだか無垢な子供に変なことを吹き込んだようで罪悪感が・・・後で先生に一応謝っておこう。しかし無垢な子供にこういう人間のある種のダークサイドを語るのはなかなか胸にくるものがある。『子供はどうやって作るの?』と『お父さんなんでいつもお仕事いくの?』と同じくらいに難しい質問だったような気がする。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ