78 恋話と相談
ご相談
「あら?じゃあまだキスから先はしてないの?」
お昼が終わり、俺は二人から質問攻めをさせていた。
「ええ、卒業まではしないつもりです」
「凄いわねー、私なら我慢できずに襲うわよ」
「母さんが言うと洒落にならないからやめてよ」
何やら夫婦仲の良さそうな気配に話題が逸れるかと思ったがそんな希望もむなしく会話は進む。
「それで?その黒羽先生の娘さんとは仲良くできてるの?」
「一応は。昔の薫ちゃんみたいにお兄ちゃんて呼んでくれてる」
「ふーん、そう」
なんだか少しだけ拗ねたような様子を見せる薫ちゃんだが、そんな薫ちゃんを放置して巡李さんは言った。
「仲良くできているようで、安心したわ。昔から知ってるから心配だったのよ。家の息子より心配になるのよね、健斗くんは」
「それを息子の前で言うか普通」
後ろで漫画を読みながらそう言う雅人。というか、テスト期間に余裕だね。まあ、スペック高いからやる気なくてもかなりの結果を残せるのだろう。凡人の俺には無理だけども。
「あ、安心してよ。このことは誰にも言わないから。ただたまにでいいからこうして話を聞いてもいいかしら?」
「ええ、時間があれば」
「そう、なら今度黒羽先生の娘さんにも会いたいわ。でも、人見知りなのよね?」
「ええ、少しだけ」
流石に前の父親の話はできないのでそう言葉を濁す。いくら親しくても言えないことは言えないのだ。そんな俺の言葉に頷いてから薫ちゃんは言った。
「まあ、大人って怖い生き物だからね。母さんみたいに無自覚で真っ黒になる可能性もあるしね」
「あら?そんなことないでしょ?」
「父さんの前でドSなのを知らないと思うの?」
思いがけない言葉に思わず目を見開くが巡李さんは微笑んで言った。
「それは、お父さんが可愛いからついね」
「いや、父さんがドMなのも問題なんだろうけど、母さんも大概だからね」
知る必要がない情報を得てしまった。そんな俺を差し置いて薫ちゃんは言った。
「そういえば、健斗くんの学校は来月修学旅行なんだよね?その間は娘さんはどうするの?」
「ああ、それは・・・」
「もし、アテがなければお母さんが預かるよ」
「ナイスよ薫!遠慮しなくていいからね」
何やらノリノリで申し訳ないが俺は事実を言うことにする。
「気持ちは嬉しいですがすみません。実はもう、先生の妹さんが面倒みることが決まってまして」
「あらら残念」
「すみません。でも、そう言ってもらえると嬉しいです」
「当たり前じゃん。健斗くんとは仲良しだしね」
「ええ、もう一人の息子みたいに思ってるわ」
「ありがとうございます」
なんだか嬉しい味方に思わず笑みがでる。きっと、こういうのをわかってて雅人は連れてきたのだろうとひそかに感謝するが、後ろで漫画を読んでくつろぐ姿に気のせいにも思えてくるが、なんとか抑えた。




