75 テスト2日目
寄り道
翌日、初日よりリラックスして受けれたテストは自己採点で過去最高得点だった。これならおそらく目標順位には入れそうだと思いながら机を立ち、帰ろうとした俺の肩を掴んだのは親友の雅人だった。
「いきなり何?」
「頼む、何も言わずに着いてきてくれ」
「そう言われても・・・俺も今日は帰って色々やりたいんだけど」
流石に昨日のように時間を使う気にはなれずにそう言うが雅人は肩を掴んだまま離さずに言った。
「大丈夫、おそらく迎えの時間には間に合う」
「用件はなんなの?」
「妹と母さんからのLINEで今日お前を連れてこいと言われたんだよ。俺もそのうち連れてくってしばらく引っ張ったからそろそろ限界でな」
そんなことをいきなり言われても・・・
「テスト期間にそんなこと言う普通?」
「お前もわかってるだろ?薫とあのババアが頑固なのを」
「ババアって、巡李さん見た目年齢めっちゃ若いじゃん」
パッと見10代だと言われても違和感ないくらいに若作りな人なのでそう言うと雅人はため息まじりに言った。
「まあ、見た目はな。出来れば見た目年齢くらいは普通でいて欲しかったよ。親父は普通なんだがな」
「渋いイケメンさんだよね。元気なの?」
「ああ、仕事頑張ってる。たまにお前の親父の職場にいくらしいぞ?オカマなら浮気の可能性低いからって」
そういう問題なのだろうか?
「まあ、とにかく少しだけ時間くれ。昼は家で食べてくれていいから」
「そうは言うけど、俺弁当作って来ちゃったんだけど」
「それは俺が食うから。頼む」
そう言われてしまうと断れない俺。まあ、久しぶりに薫ちゃんと巡李さんにも会いたいし、仕方ないと割りきって言った。
「わかったよ。ただ流石に迎えの時間には行かないといけないからあんまり長居はできないよ?」
「十分だ。それでしばらくうるさくなくなるからな。俺も早めに切り上げて新しい彼女とのデートしなきゃならんしな」
「毎回思うけど、テスト期間中によくデートする気になるね」
テスト期間という言葉を忘れてる学生らしいこいつにそう言うと雅人は笑って言った。
「テストなんて、ある程度点数取れれば問題ないからな。それよりも学生らしい恋愛ごっこを楽しむ方がいいだろうしな」
「ごっこって・・・恋愛じゃないんだ」
「まあな。俺なんてお遊びの恋しかできんさ。好きでもない相手と付き合ってる時点でそうだろ?」
イケメンなりの葛藤があるのだろうが、俺はその言葉に否定も肯定もせずにため息まじりに言った。
「なら、そのうち本気で恋したら報告してよ。楽しみにしてるから」
「おう、甘い報告してやるさ」
そんな風に親友と話しながら帰路につく。多分こうして友達と話しながら帰ることなんて高校生活であと何回もないのだろうと思いつつ、久しぶりに会う人達に若干緊張するのだった。




