73 名探偵ちーちゃん
折り紙
「おにいちゃん、なにかあったの?」
雅人達と別れてから千鶴ちゃんを迎えにいって手を繋ぎながら仲良く歩いていると、そんなことを聞いてくる千鶴ちゃん。
「どうかしたの?」
「なんか、おにいちゃんがいつもよりげんきなきがしたの」
「そうかな?」
「うん、ちーおにいちゃんのことならなんでもわかるよ」
そう言われて嬉しくなるが、昨日までそんなに暗い顔していたのかな?と少しだけ心配になる。それで二人に迷惑かけてないといいけど・・・まあ、それなら先生辺りがストップかけてそうだし多分大丈夫だろう。
「多分、久しぶりに友達ときちんと話したからかな」
「おともだち?おにいちゃんの?」
「うん、そう」
別にそれだけが理由じゃないが・・・ああいう馬鹿なことをしていると先生や千鶴ちゃんのことを恋しくなったからかもしれない。友達と馬鹿やるのも青春だろうが、俺にはこちらが似合っていると心から思う。バイトしてひたすら家事をしていた頃よりも充実感あるし、好きな人のために尽くせるのは幸せなことだからだ。
「千鶴ちゃんは今日は何をして遊んだの?」
「きょうはね、りっちゃんとめーちゃんとおりがみやったの」
「へー、何を作ったの?」
「えっとね、こうもり」
ん?蝙蝠?コウモリ?折り紙そこまで詳しくないけど、コウモリの作り方なんて知らないな。鶴くらいしか作れない。
「そっか、千鶴ちゃんは器用だね。俺は鶴しか作れないから羨ましいよ」
「ちー、つるのつくりかたわからない」
「そうなの?簡単だから今度作ろうか。普通のサイズから爪より小さい鶴までなら作れるよ」
昔、母さんに習ったから得意だ。ベッドの上で寝ていた母さんが教えてくれたのが鶴の作り方だった。ただ不器用な俺は何度やっても出来なくて悔しくて練習して、ついにはミニチュアサイズの鶴を作れるまでに進化したのだ。ま、最後の鶴は母さんには見せられなかったけど・・・
「千鶴ちゃんならすぐに上手くなるだろうね」
「うん!たのしみ!」
ねえ、母さん。母さんには最後の鶴は見せられなかったけど、代わりに千鶴ちゃんに見せればセーフかな?母さんはどんな気持ちで俺に鶴の折り方を教えてくれたんだろうか。それは全くわからないけど、少なくとも俺は千鶴ちゃんに親子の交流として教えてあげたい。きっと、器用なこの子はあっという間に覚えるのだろうがそれでいい。こうして受け継ぐことが大切なんだよね。
だから・・・俺も早く母さんみたいに立派な大人になりたい。立派な親になりたい。最後まで子供の家族のことを思えるような立派な大人に。そんなことを思いながら俺と千鶴ちゃんは仲良く歩くのだった。




