57 飲みニュケーション
大人の付き合い
「へぇー、お義父さんもあそこ行ったんですね」
「ええ、昔妻と二人で、健斗が出来るかなり前にね」
ビールを飲みながら二人で楽しそうに会話をする先生と父さん。
「千鶴ちゃん。美味しい?」
「うん!おにいちゃんのごはんがいちばんおいしい」
「そっか、嬉しいよ」
そしてこちらは千鶴ちゃんと一緒に楽しく食事をする俺。海斗は早々に部屋を出ていってしまったので、後でゆっくり話したいものだが、それより今は千鶴ちゃんをこの場に一人残すのがあまり良くないので側で見守っている。まあ、先生も父さんも流石にセーブして飲んでるだろうが・・・
「あはは、お義父さんそんなに男に告られたんですか」
「ええ、この格好だと凄くてね、店のお客さんは分かってて告白してくるけど、ナンパなんてしつこくて現実を突きつけるまでなかなかひいてくれなくてね」
「そうなんですかー」
「そういう遥香さんもおモテになるんじゃないかしら?」
「私は、そういう気配があればすぐに関係を断ちますからあんまりないですね」
その言葉に少しだけホッとする。しかしこうして敬語の先生は初めてだけどなんだか新鮮でいいな。そんな俺の気配を読んだのか先生は言った。
「健斗のお陰で最近晩酌が前より楽しいんですよ」
「そう、昔は私の晩酌に付き合ってたわね。眠そうにしながら」
「仕方ないでしょ。1日頑張った後で晩酌はかなり子供には辛かったんだから」
「そうね。最近は帰ってからか、お店で飲んで満足するからしない時もあるけど・・・たまにはこっちにも付き合って貰おうかしら」
そう言われて驚くが俺はそれに苦笑しながら答えた。
「父さん、酔うと面倒だからなぁ」
「まあ、酷いわね。遥香さんは良くて私はダメなの?」
「遥香さんは酔ったら可愛くなりますから」
「ん?それじゃあ、今は可愛くないのか?」
「もちろん可愛いと言いたいですが、普段は凛々しいですから。可愛い担当は千鶴ちゃんですね」
そう言うと千鶴ちゃんはきょとんとしてから聞いてきた。
「ちー、かわいいの?」
「うん、凄く可愛いよ」
「えへへ、そうなんだ」
嬉しそうに笑う千鶴ちゃん。うん、やっぱり千鶴ちゃんは可愛い。父親目線でそう思う。将来先生みたいな美人さんになるなら今からもっと色々教えておくべきだろうという俺の思考を読んだように先生は言った。
「本当に妬けるくらいにちーちゃんのことも大切にするよな」
「遥香さんも大切ですよ。ジャンルが若干違いますが」
「なら、私はなんだ?」
「異性としての好きですよ。知ってて聞くのはズルいですよ?」
「大人は皆ズルいのさ」
そんな風にして先生と話す俺を父さんがえらく優しい瞳で見ていたのはなんとなく気づいたが言えなかった。きっと恥ずかしかったのだろう。




