54 ホテルはダブル
まさかの相部屋
「あの・・・遥香さん」
「なんだ?」
「ホテルの代金持ってもらえるのはありがたいんですが、俺の部屋は?」
「ここだよ」
「では遥香さんと千鶴ちゃんの部屋は?」
「ここだよ」
部屋には大きめのダブルベッドが一つだけ。そして先生が取った部屋も一つだけ。つまり・・・
「同室の上に同じベッドってマジですか?」
「なんだ。いつもちーちゃんを寝かしつけてるし、一つ屋根の下で暮らしているから大丈夫だろう?」
「そういう問題ではなく・・・」
「ん?なんだ。もしかしてお前が私を襲う心配をしてるのか?それとも私がお前を襲う心配をしているのか?」
「両方ですが後者なら嬉しいですね・・・」
そう言うと先生は笑いながら言った。
「安心しろ、卒業まではお前は清らかな体だよ」
「若干がっかりですがわかりました。でもさすがに同じ部屋でしかもベッドも同じというのは・・・」
「ま、これも花嫁修行だと思って諦めてくれ」
「いや、花嫁ではないですが・・・はぁ、わかりました」
仕方ないので千鶴ちゃんをベッドに寝かしつけてから一息つく。
「にしても、随分いいホテルですね。高いんじゃないですか?」
「そうでもないさ。それより夕飯だが・・・ちーちゃん寝てるし近くで何か買ってくるが何がいい?」
「俺が行きますよ。遥香さんは休んでてください」
「そうか?なら頼む。あまりおそくなるなよ」
それを聞いてから俺は近くのコンビニをスマホで探すが・・・この辺あんまりないのか結構歩かされることになった。そうしてなんとかたどり着いたコンビニから帰ってくる頃にはすでに8時過ぎており俺はため息をつきながら部屋へと戻った。
「おう、随分遅かったな」
「すみません。コンビニ遠くてパンとか色々買ってきたので食べましょう」
「おう。にしてもこういう雑な食事は久しぶりだ」
「そうですか?」
「ああ。最近はお前がいつもご飯を作って待っててくれるからな」
そう言いながらパンを食べる先生。しかし少しだけ不満そうな顔をしていた。
「俺のと交換しますか?」
「いや・・・なんかお前のご飯より美味くないからついな」
「煽てても何も出ませんよ?」
「事実を言っただけだよ」
「そうですか」
澄ました顔でパンを食べるが少しだけ嬉しかったことは隠せずに先生は見抜いたのかように言った。
「さて、明後日はいよいの決戦だが・・・準備はいいか?」
「決戦って、ただ父さんと弟に会うだけですよ?」
「私は明後日、お前をもらいに行くんだ決戦だろ?」
「そうなんでしょうか・・・?」
なんとなく納得できずにいると先生は笑って言った。
「なに、ちゃんとお前を花嫁としてもらえるよう頼むさ」
「花嫁扱いはマジ勘弁です」
そんな風にして千鶴ちゃんが起きるまで無駄話をするのだった。




