46.5 本気の愛とヤンデレのスタート
閑話
最初はそんなに意識していたわけではなかった。あいつの担任になってから最初はどこか和也に似ていたあいつのことを気にかける程度だったが、あいつはいつもイケメンの友人に付き添うだけの言ってしまえば金魚の糞くらいの存在だった。
そんな認識が変わったのはアイツが2年に上がった時、転校生の大人しい男の子が来たとき、本当にたまたまだった。色々と話してもあまりにも反応の悪いその子に苛立った生徒が何かを言う前にあいつは言った。
「ところで、明日テストだけど皆勉強してる?」
そう言って隣のイケメンにアイコンタクトをしてから見事に話を逸らしてからその子に小声で言った。
「話したくないなら読書とかオススメだよ」
きっと、見抜いていたのだろう。後から知ったがその子は前の学校でいじめにあっていたそうだ。だからあまり関わりを持ちたくなかったのだと。それからあいつに興味がわいた。
いつもは大人しい成績も普通の草食系な男。わりと優等生の態度で教員からの評価は悪くなかった。
・・・ある一点を除いて。
あいつはいつも進路希望調査表に必ず『主夫』と書いてくる。一年から進級して、二年になっても必ずだ。何度注意しても同じ紙を出してくる。その頑固さにも驚いたが本人は本気で言ってるようなので尚驚いてしまう。
そうして、三年生になっても同じ紙を出してきた時に私は一瞬思ってしまった。もしかしたらこいつなら本気で私のことを受け入れてくれるのではないかと。根拠なんてなかったが、直感的にそう思った。
あいつが家に通うようになってちーちゃんがなついて、いつしかあいつはいなくてはならない存在になっていた。和也のことを忘れてこいつを本気で好きになりそうになった。
でも、それは許されないだろう。そう思って私はあいつに全部を話した。私が和也を殺したことを。なのにあいつは違うと否定して言ったのだ。
「遥香さんの気持ちは間違ってません。好きな人のために何かするのは決して間違いなんかじゃない!」
いつもより強気な発言といきなりのキスに驚く私にあいつは言った。
「なら、その気持ちも行動も決断も決して間違ってません。間違っていたことがあるならそれはきっと、神様が書いたシナリオが間違ってるんです!」
神様のシナリオ。笑ってしまうくらいに無責任な言葉だが私はそれに救われた気持ちになった。そして自分の本当の気持ちに気づいた。だからこそ聞いた「私のことは好きか?」と。そしたらあいつは「大好きです」と答えた。そこではっきりとわかった。だから言った。
「そうか・・・私もお前が大好きだ健斗」
きっと、私はこいつに出会った時から恋をしていたのだろうと。そして今、それが確実に愛に変わったとわかった。だからこそ私はこいつを死ぬまで愛そうと誓うのだった。




