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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
3章 魔人の存在

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「魔導師?」


 意識が戻り、食事中のグレイが不思議そうに言う。


「父を転送するための魔導師か。」


 答えてくれたのは、グレイの異母兄である、ギルバート第一公子である。ちなみにグレイは第二公子だ。


「その魔導師が殺された叔父上なのだ。」


「他の魔導師はますか。」


「この国で魔導師と言えるの叔父上のみだ。」


 最悪のパターンだ。魔導師がいないなんて。


「シェリーの同居人に頼むのはどうなのかな。」


「難しいでしょうね。彼はこの国には来ないと思います。そもそもわたしの結界は7日しか持ちません。イアール山脈を突っ切るなら早いかも知れませんが無理がありますね。」


「ん?さっき転移を使ってなかった?」


「あれは、高純度の魔石に魔導術式を組み込んでもらったものです。先程の転移、魔人を閉じ込める結界で手持ちの5個すべてを使いきりました。」


「シェリーは転移魔術を使えないの?」


 シェリーはムッとした顔になり


「魔導の術式を組むセンスがないと言われました。それとわたしは既存する魔術をスキル化が出来ないので、転移に関しては同居人にお願いしています。」


「ぐっ。」

「シェリーかわいいね。」


 グレイの何かを耐える声とくすんだ黄色い髪を撫でるカイルの声が重なった。


「本当に二人とも番なんだ。そうだ、魔導が使える番はいないのか?」


 思い付いたかの如く、ギルバートが尋ねる。


「あ?」

「何を言っているのです?」


 またしても、声が重なった。周りの温度が下がったのは気のせいだろうか。

 シェリーは質問に答えない。今回の件も白い謎の生命体が、裏でいろいろしてそうな気がするからだ。


「もしかして、魔導師がいるの?」

「うそだろ!」


「へぇ。ちなみに何処にいるかも知っているのかな?」


 シェリーは頭を抱える。この短期間で3人目が揃おうとしている。完璧に誘導された。今回の啓示がマルス帝国だったことに頭から完璧にはずされていたことがある。マルス帝国の隣はあのシャーレン精霊王国だ。


「ふふふ。」


「シェリー?」

「どうした?」


「はめられた。あの生命体。絶対ゆるさない。」


 はぁ。感情をため息と共に押し出す。あれに怒りを向けても暖簾(のれん)に腕押しだろう。


「エルフがいます。今、マルス帝国にいるようです。」


「番だとそんなこともわかるんだ。」


「いいえ。わたしのツガイに対する感知能力は路傍(ろぼう)の石くず並みに感知することはありません。カイルさんにわたしのテリトリーまで侵入されたことがあったので、常に位置情報の把握はするようにしています。」


「あれは仕方がないよね。」


「ただ、気になることがありまして、帝都の一ヶ所からこの3日間全く移動をしていません。4日前に見た光景を思いますと、オークションの商品になっているかと・・・。面倒なんで放置していいですか?」


 ここにいる男三人の動きが止まる。


「「「ダメだろう!」」」


「本当に面倒なんです。若気の至りで奴隷商の組織を壊滅させたので、マルス帝国の軍の上層部には要注意人物にあげられていると思います。」


「若気の至り・・・。」


「あのマルス帝国最大のコートドラン商会の謎の消滅の原因がここに!」


「シェリーはすごいね。」


 誉めるとこだろうか。

 しかし、それ以降軍部の強化が行われ、奴隷商の周りには一定の軍兵がつくようになったのは事実であり、金髪で赤目の子供を拐っていたのも事実。その子供は助けて家族と共に他国へ逃がしたが、子供一人に対して大袈裟ではあるが、大人の傲慢なプライドというものが、そうさせたのであろう。


「そういうことで、奴隷商とは関わりたくありません。」


「ちなみにシェリーはどちらの姿だったのかな?」


「・・・。」


「違う方の姿でいけばいいのじゃないかな?」


「却下します。見た目がいい、エルフの族長の息子の魔導師の男なんて、厳重に管理されているだろうし、正式に参加なんてすれば、バカ高い値段になるだろうし、時間とお金の無駄です。」


 シェリーは関わることを拒否する。


「見た目がいいとは、シェリーはどこであったのかな?」


 カイルから冷たい冷気が漂ってくる。


「族長の息子ってあのいけすかねーあいつか。」


 グレイが苦虫を噛んだような顔をしている。


「金なら、叔父上は叔母上を好き過ぎて独り身だったから、相続人は俺になる。その分と母と俺の個人資産からいくらか出そう。魔導師が金でなんとかなるなら安いものだ。」


 ギルバートは笑顔で資金提供を示唆する。

 行くことは決定なのだろうか。


「カイルさん以外のツガイには一度だけ、接触はしています。術が完璧かどうか確認しなければいけませんでしたし、種族にとっては看破できる術だと意味をなしませんので、前を素通りするぐらいはしていますよ。」


「え?俺にも会いに来てくれていたのか。」


 ブンブンと尻尾を振って喜びを全開で表すグレイ。

 シェリーの言葉に俺だけ会いに来てくれていないのかと落ち込むカイル。


「いいえ。動作確認のためです。グレイさんはその時、泣きながら東の海岸線で勇者に追いかけられていました。」


「ぐふっ。」


 グレイは撃沈した。


「懐かしいね。確か、おばあさまの誕生日に別荘でお祝いをしたとき、叔母上に一目惚れしたグレイが『僕のお嫁さんになって欲しい』って言ったんだよな。なぁグレイ。」


 返事がない。屍のようだ。


 ツガイの二人の落ち込み様は激しく、路傍の石並みに存在感が無くなったのであった。


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