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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
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 「そういえば、姉ちゃんが受けた依頼ってなに?」


 山菜取りの仕事を終えて、依頼主のもとへそれらを届けたあとの帰り道で、俺はふと気になって、仕事を手伝ってくれた姉へ訊ねてみた。

 というのも、自分も小遣い稼ぎをすると言いながら、姉は依頼をアプリで受注した素振りはあったものの、その仕事をした気配がないのだ。


 「ん? んー、これ」


 田んぼ道、つまりは農道のど真ん中で姉は行きと同じようにゴンスケに乗りながら、携帯の画面を操作して、俺に見せてくる。

 そこには、廃墟の探索を姉が受注したことを示す画面が表示されている。

 画面を注視するために、俺は自転車を止める。


 「ぎゅうるるる~」


 いっぱい動いたので、早く帰って餌を食べたいのだろう。

 ゴンスケは俺の体に軽い頭突きをかましてきた。


 「はいはい、ちょっとまってろ」


 俺は、適当にゴンスケの体やら頭やらを撫でながら、その依頼内容を読み進める。


 「要約すると、人探し?」


 どうやら、この廃墟で人が消えた為、その行方不明者を探してほしいという依頼だった。

 見つからなくても、なにかしら情報を手に入れたいということらしい。


 「そう。本来なら警察とか、興信所とか、探偵社とかの仕事なんだろうけど。

 たまにね、そのどれもダメで、もしくはその中のどれかが秘密裏にギルドに依頼を出してくることがあるの」


 「ダメ?」


 「そう、警察も興信所も探偵社もお手上げ状態で力になれなかった場合。

 もしくは、警察も興信所も探偵社でも調べることが困難な場合、とにかく人手が足りないから調べるだけならってことで、ギルドに依頼を出す」


 「ふうん?」


 「で、この依頼なんだけど、ちょっと気になることがあってね」


 「気になること?」


 「そう、この依頼の場所なんだけど。見てみ?」


 俺は、姉に示された場所を読んでみる。

 依頼書には、廃墟の画像も貼付され、さらに住所まで御丁寧に記載されていた。


 「あ、ここって」


 「そう、キマ地区にある白い家」


 それは、この辺では有名な心霊スポットだった。


 こういった怖い話には色んなパターンがある。

 白い家にまつわる話も多種多様だ。

 オチが違っていたり、登場人物の性別が逆だったりするなんて当たり前。


 有名なパターンはこんな感じである。


 昔、と言っても三十年から四十年ほど前のことらしいが。

 キマ地区にあるとある農村で、事件が起こった。

 深夜のこと、その村に住む少女が突如何かに取り憑かれたかのように乱心し、寝ていた村人四十九人を殺害した。

 殺害に使われたのは、少女の家にあった父親のコレクションの銃やら、各家の納屋などに片付けられていた農機具類だった。

 中には、その辺の畑で置きっぱなしになっていたものもあったとか。

 とにかく、少女は村人を次々襲って殺害し、日が昇る頃に山の中に姿を消した。

 これが、俗に言う白い家三部作の最初の話である【殺戮村】の話だ。

 そう、この話、実は続きがある。

 【白い家】の話は二話目にあたる。

 

 これも一番有名というか、よく語られるパターンの話だ。


 殺戮村の惨劇から数年後のことだ。

 その村から少し離れた、と言うよりも街よりの場所に一軒の空き家があった。

 その家に、美女が、病気の療養のため引っ越してきた。

 美女の肌は人形のように白く、容姿も傾国の、と表現されるほど美しかったとか。

 その美女には、家事など雑事をこなす男性が常に侍っていた。

 その男性もまた美しかったらしい。

 さて、この二人が住んでいた空き家が【白い家】なのだが、この家に前から興味を持っていた子供たちが探検と称して、敷地内に入ってしまう。

 家の周りは雑木林で、熊や凶悪な魔物こそ出なかったものの、子供たちの良い遊び場となっていた。

 家主である美女も、その介添である男性も何も注意せず、むしろ遊びにくる子供たちへお菓子やジュースをご馳走していた。


 大人達はともかく、そのため子供たちからの評判は良かった。

 しかし、ある時。

 その家の敷地内で、隠れ鬼なる遊びをしていた子供の一人が行方不明となってしまう。

 元々、大人達は白い家に住むこの二人に対してあまり良い感情はもっておらず、この件でついにその疑心暗鬼が加速し、白い家の敷地を遊び場にしていた保護者達はほかの村人を率いて、白い家に殴り込みをかける。

 家主の美女と、男性が子供たちをよからぬことのために隠したのだと疑わなかった大人達は、まず出てきた男性を持ってきていた棍棒で撲殺。

 それから家に土足で上がると、薬を飲んでいた女性を取り囲みリンチをし、殺害。


 家探しをするも、子供は見つからない。

 大人達は自分達の犯した罪に震え、それを隠すために家に火を放とうとする。

 しかし、どこからともなく消えた子供が現れて、そんな大人達にこう言うのだ。


 ーーあーあ、いけないんだぁーー


 と。

 その直後、その子供は何かに取り憑かれたように笑うと森の中に消えてしまう。

 

 その翌日。

 【白い家】に殴り込みをかけた大人達とその関係者、血縁者が謎の死を遂げるか行方不明になってしまったらしい。

 それから少しして、この【白い家】の周囲で怪奇現象が続発する。

 【白い家】にも家主達が幽霊になってさまよっているとも言われている。

 そのため、人が寄り付かなくなり、キマ地区の【白い家】周辺は殺戮村も含めて過疎化がすすみ、やがて誰もいなくなり廃村となった。

 整備された道路はともかく、キマ地区に存在する土地のほとんどは今や市の所有となり、立ち入り禁止となっている場所が多い。


 キマ地区は、そんないわく付きの土地なのだ。

 というか、この話の他にも神隠しに事欠かない土地だったりする。


 

 「姉ちゃん、ここ行くの?」


 「まぁ、仕事だし」


 「やめといた方が良いよ。ここ、本物だし」


 「なに言ってんの、アンタも行くの」


 「はい?」


 「連絡係として、ね」


 俺は、怖い話は好きだが、それはどんな形であれお話だからである。


 「いい?」


 難色を示す俺に、姉は続ける。


 「アンタが私の命綱になるの」



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